1月12日、NYアイランダーズのオーナー、チャールズ・ウォング氏は、自ら会見を開いて重大人事を発表しました。
まずは以前から噂されていた通り、スティーヴ・スターリングコーチが解任に。後任は今季からアシスタントコーチを務めるブラッド・ショーが暫定コーチとして昇格。そして、周囲を驚かせたのが、10年間アイランダーズのGMを務めた「マッドマイク」こと、マイク・ミルベリーが、自ら退陣を決めたという内容でした。ミルベリーに代わる後任GMを今後アイランダーズは探すとのことで、後任が見つかり次第ミルベリーはGM職から退くのだそうです。 ウォングオーナーによれば、以前からミルベリーと今後の彼の処遇について何度も話し合っていたのだとか。そして1月10日、ついにミルベリーの方からウォングオーナーについて「GM職から退きたい」との申し出があったという。 このニュースを受けて、地元紙「ニューズデイ」にはこんな見出しが躍ってました。 「Isles fans finally get their wish(アイランダーズファンの願い、ついに叶う)」 これ見て思わず笑ってしまいました。よほど地元では嫌われてたのね〜ミルベリーは。今季地元ナッソーコロシアムでは「FIRE STIRLING」コールが優勢だったというものの、「MIKE MUST GO」コールはここ数年の定番となっていたというから、その嫌われ方は尋常ではなかったはずです。80年代前半に黄金時代を送ったアイランダーズだけに、その頃を知るファンとしては現在のチームの惨状ぶりは目に余るものがあるのでしょう。その惨状をもたらした張本人が、このミルベリーといっても過言ではないわけですし。 そして「マッドマイク」とのニックネームでも知られたミルベリーの、過去における「マッド」ぶりをあげつらう地元紙記事。これに私個人の意見やリサーチを加えてちょっとまとめてみました。 その1:有望選手をさっさとトレード: トッド・バーツージ、ロベルト・ルオンゴ、ズデノ・チャラ、ブライアン・マッケイブ、ウエイド・レッデン、オリ・ヨキネン・・・こいつらがいたら、今頃アイランダーズはどうなっていたか? その2:10年GM在任期間にクビにしたコーチ:リック・ボウネス、マイク・ミルベリー(そう、ミルベリーは自分もクビにしているのです)、ビル・スチュワート、ブッチ・ゴーリング、ローン・ヘニング、ピーター・ラヴィオレット、スティーヴ・スターリング その3:ボストンでの現役時代には、観客席にまで乗り込んで観客と乱闘経験あり。 その4:年俸調停では、かつてアイランダーズに在籍したGトミ・サロのプレーをボロカスにけなし、サロは調停会場で涙した。(調停ではGMと選手の泥仕合はよくあることだが、選手がGMの口撃のあまり泣いてしまったというのは、この一件くらい) その5:2001年9月5日、アレクセイ・ヤシンと10年8890万ドル契約を交わす。 こんな契約を承認するオーナーもどうかとは思いますが・・・当時のヤシンの市場価格からして年俸ベースであの額は仕方ないにしても、10年はあり得ません。今季から新CBA下で24%ペイカットとなったけど、今季ヤシンの年俸は760万ドルとアイランダーズのペイロールに重くのしかかっている。ヤシンは今季ここまで43試合で39ポイント。いちおうチームのスコアリングリーダーですが、今季は突如働かなくなったりで4つめラインに落とされたりなんてこともちょくちょくあった。その一方、隣町ではヤーガーが67ポイント挙げてるのを見ると、やっぱり・・・ねえ。 ・・・てなわけです。 ただこの後のミルベリーですが、アイランダーズにはシニアヴァイスプレジデントとして留まり、ウォングオーナーのアドバイザー的立場は変わらず。そもそもウォング氏のアイルズ買収(2000年)以前にチームGMとして存在していたミルベリーは、1990年代後半にチームオーナーが猫の目のごとく変わったどさくさに紛れ、チーム内権力をじわじわ膨らませていた。そして既得権からかウォング氏に対しても強い立場にあったようで、今回はクビになる前に自分から幕引きしたことで生き延びる姑息策に出たという感じです。 しかし、オーナーのアドバイザーであり続けるのなら、今後GMになった人間をまた解雇しまくるのかな? と考えると、アイルズファンが浮かばれない。ただし今後は、アイランダーズだけでなく、ウォング氏が所有するアリーナフットボールのチーム(ドラゴンズというチーム名です。中国から移民のウォング氏らしい)や、ウォング氏が燃えてる新アリーナ建設計画(奇天烈な60階建てタワー案で周囲を騒然とさせましたが、地元政府から不認可となった模様です。ウォング氏の他、NYメッツその他もアリーナ含むナッソー地区再開発案を提出中)など、どちらかと言うと、ウォング氏のスポーツ事業全般の仕事を任されることになる模様。もしそうなれば、やっとアイルズファンも溜飲が下がるというものです。 で、NHLのGM浪人、コーチ浪人にはこれは大きな朗報! アイランダーズに行けば今やGM、コーチ、あるいはGM兼コーチの仕事が待っているわけです。 そこで白羽の矢が立ったのは、デビルズも狙っているとされるブレント・サター。サターにとっては、アイランダーズは元選手として2回スタンレーカップ獲得。88−91年はキャプテンも務めている。ただし、前日も説明した通り、サターは現WHLレッドディアのオーナー、GM、ヘッドコーチであり、息子のブランドン、甥のブレット(兄ダリルの息子)もレッドディアに所属。少なくとも今季中はレッドディアを去るつもりはないことを明言しているんだとか。 兄ダリル曰く「彼の興味はゼロだと思う。アイランダーズとの繋がり? それはビル・トーリーと、アル・アーバーの時代で終わってる」。ビル・トーリー&アル・アーバーといえば、アイランダーズ黄金時代を支えたGMとヘッドコーチです。ナッソーコロシアムには、数枚のバナーがかかっていますが、トーリーについては背番号の代わりに彼のトレードマーク、蝶ネクタイ柄のバナーが掲揚されていることでも有名であります。ダリル氏の言葉はごもっともで。それならそれで、地元紙は「ならばブレント獲りのために、ビル・トーリーをチームアドバイザーとして復活させろ! 」との声もあるほど。 その他、地元紙ニューズデイは、元アイランダーズ選手としてGM候補:スティーブ・タンベリニ(現バンクーバーのフロント)、デニ・ポトヴァン(まじかい?、現フロリダ解説者)、ピーター・シアレリ(オタワのアシスタントGM。ミルベリーとの繋がりあり)、ジム・ニル(デトロイトのアシスタントGM)、ジョン・ウェスブロド(ダラススカウト、ロングアイランド出身、元NBAオーランドGM)の名前を挙げています。ウェスブロドの名前は、確かアナハイムの後任GMとしてもまことしやかに噂に出ていましたっけね。 それにしても、後任GMってすんなり見つかるんでしょうか? ブレント・サターでなくても「ヤシンがいるうちは嫌」とみんな尻込みしそうな・・・やっぱり2005年夏にヤシンをバイアウトしとくべきだったのかも。そのお金をケチったことで、来季以降5年もヤシンの年俸はサラリーキャップ内にカウントされてしまうわけです。一番いいのはトレードすることでしょうが、引き取り先がない。おそらくアイランダーズがヤシンの年俸の70%くらい負担しないと、欲しがるチームはいないでしょう。それだったら、残り年俸の3分の2支払ってバイアウトした方がお得だったと思うのですが・・・もう遅いですね。 ヤシンはウエーバーにかけられても、おそらく引き取り手はない。なのに、地元紙に「ヤシンなんてウエーバーにかけちゃえ!」と書かれる有り様。まあ、これも当時ホッケー初心者で、ミルベリーの助言を鵜呑みにし、見栄もあって大枚はたいてしまったウォング氏の自業自得ってことでしょうか。それにしても、ウォング氏、NBAネッツを買おうとしたり、故郷中国でのホッケー振興に力を入れたり(アジアリーグの会議@北京にも、なぜか参画していたという話ですこのお方)。いろいろ活動しています。 最後に、暫定コーチとなったブラッド・ショー。隣町レンジャーズでは、トム・レニーが暫定コーチから正式にヘッドコーチに就任しているし、ショーが同じ道を辿る可能性は皆無ではない。ただ、チームカナダでコーチ道一筋で来たレニーとは、経験が違い過ぎるかな? ショーは、今季アイランダーズのアシスタントコーチとして就任。かつて現役時代はDFとして活躍、地味に守る選手という印象でした。過去3年間はAHLシンシナティでヘッドコーチを務めた後、アイランダーズへ。1999−2000年はタンパのアシスタントコーチを務めていました。そこで気づいたのですが、アイランダーズのアシスタントコーチが、ダン・バイルズマだったとは知らなかった(爆)。昔から「引退したらコーチ目指す」って言ってたのは知ってたけどね! こうして見ると、NHLのコーチも世代交代が進んでいるのですね。あぶれてる人がいるようで、実は人材不足なのがこのコーチなのかも知れません。
by hockeyworldjapan
| 2006-01-14 13:54
| NHL overall
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