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交渉はOTに突入。妥結の可能性浮上?

先週末が交渉期限とされたNHL労使交渉。しかし、ここに来てまた新たな展開が出て来たようなので、状況を解説したいと思います。

NHLPAはついにサラリーキャップを容認。NHLもそれまでこだわりを見せていた「リーグ収入と選手年俸の割合(53〜55%)」を提案から取り下げたのです。まあ、その内容を精査すると、それほど両者が軟化したというわけでもないのですが、「サラリーキャップ」という大きな概念的な壁をやっとクリアし、やっと金額的な部分の交渉に移行することができるのでは・・・という見方が強まっています。(ま、そこからが大変ではありますが)

現地2月14日、NHLとNHLPAは、ニューヨーク州ナイアガラフォールズにてデイリー&サスキンのナンバー2同士での秘密会合を実施。この会合は実に翌日15日未明までもつれこんだようです。

その長丁場もあってか、NHLはいったん14日深夜に「16日にベットマンコミッショナーの記者会見実施」を発表。メディアはまずこのニュースに食いつき「これで今季全面中止が確実に」と報道しました。(特に現地2月15日付の新聞報道は締め切りの都合上、ニュースの内容がここまでになっています)

しかし、会合終了後の15日未明、今度はNHLPAが「NHL側がリーグ収入と選手年俸の割合を盛り込むことを提案から取り下げた。そしてPA側からは、贅沢税、サラリーキャップ5200万ドル双方を盛り込んだ提案を提示した」との声明を発表。一転、妥結への期待が浮上してきたわけです。(NHLPAの声明文を読む)

TSNによると、PA側の提案内容は以下の通りです。(TSNの記事を読む)

*チーム年俸上限(ハードキャップ)を5200万ドルとする。ただし6年の新協定期間のうち3回まで、この10%増の額(つまり5720万ドル)まで費やすことができる。

*贅沢税を以下のチーム年俸に対して課す。
4000万ドル〜4400万ドル:25%
4400万ドル〜4800万ドル:50%
4800万ドル〜5200万ドル:75%
5200万ドル〜5720万ドル:150%

・・・というわけで、この案をNHLが受け入れるわけもなく、即拒否されたようです。24%一律ペイカットの後のキャップ額(10%超過の場合5720万ドル)って、現在7526万ドル使ってるチームまで当てはまる(爆)。ちなみに昨季年俸でいくと(2003年11月THN情報で申し訳ないのですが)、7526万ドル以上使ってるチームって、デトロイト(7783万ドル)、NYレンジャーズ(7701万ドル)の2チームのみ。この2チームだって、ちょっと買い控えしたら、このレベルはすぐクリアできるでしょう・・・ってことで、もう笑うしかない内容です。ま、この数字をPAが提示してきた背景には当然裏がありますので、それは後ほど説明することとしましょう。

ちなみに5720万ドル使ったチームが払う贅沢税を計算してみたところ、1380万ドルとなる。そのチームは、年俸分と合わせて計7100万ドル費やせばいいわけだから、下手すりゃ昨季年俸より安上がりってことで、そりゃその贅沢税だって払ってでも使うでしょう。収入分配策としても、そんなチームが3つ出現しても、計4140万ドルだから、低年俸チーム(たとえば10チーム)で割ったとしてもせいぜい400万ドルにしかなりません。

またこの日の会合では、NHL側から贅沢税を盛り込んだ提示がなされた模様です。
その内容は以下の通りです。

*チーム年俸上限(ハードキャップ)を4000万ドルに設置。

*3400〜4000万ドルに50%の贅沢税を設置。


・・・と両陣営まだ大きな開きはありますが、PAが形なりにもサラリーキャップという概念を公式に受け入れ、またNHL側も収入と選手年俸の割合導入を提案から落としたことで、歩み寄りの姿勢はある。一応進展があったことは認めます。な〜んで昨年夏の時点でこういう方向に話に持って行けなかったのかな〜とは思いますが、何にも起こらないよりはマシと考えるべきでしょう。

ただね、NHLはあんなに「Linkage」「Linkage」(リーグ収入と選手年俸割合リンクのことです。53〜55%という例の数字)と口が酸っぱくなるくらい叫んでたのに、あっさり引き下がった。一方、PAはなんでこの期に及んで一転、サラリーキャップを認める立場に切り替えたのか。そのあたりの裏事情をここで説明したいと思います。

それは以前にもちょっと説明したのですが、もしこのまま今季全面中止ということになれば、今後法廷で争われるの可能性もある背景にあるのです。で、その司法介入に至った場合、「両陣営のうち、交渉に応じる姿勢を見せていないのはどちらか?」というのが、裁定材料になると言われています。

そういう意味では、この時期にいずれかの陣営が持論にこだわりを見せれば見せるほど、いざ法廷での争いとなった場合にマイナス材料となる。よってこだわる意志はありませんとアピールする必要がここではあったらしいのです。同様な動きとして、NHLが連邦調停人を加えて交渉を実施したという報道もありましたが、これもひとつのアピールとしての動きだったのでは、とも指摘されています。

さらにPA提示の5200万ドルという額については、PAとしてもまさかこの数字で妥結できるなんて思ってもいないでしょう。おそらく4600万ドルあたりを妥結ラインとして考え、交渉術として5200万ドルという高めの数字をまずはオファーしたのだと思われます。

で、管理人個人の勝手な今後の予測ですが(あくまで成り行き予想です。希望は入ってません)、この両提案の中庸をとって妥結するんではないかと。つまりハードキャップ4600万ドルあたり。じゃあいつ妥結するの? という部分については、今後を見守るしかありませんというしかない。また妥結内容の善し悪しについては、実際妥結後にまた新たに議論したいと思っております。

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by hockeyworldjapan | 2005-02-16 10:02 | CBA


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