NHLリーグ全体を買いたい会社

NHL、お前もかっ?! 

・・・などとつい、つぶやきたくなってしまったこのニュース。

日本では、ライブドアvsフジテレビ対決の構図が毎日賑々しく報道されているわけですが、NHLでも先日こんな話がスクープされてました。

NHLリーグ全体を、35億ドル(約3675億円です)で買収を申し出た投資会社が出現したのです。1チームだけではありませんのよ、NHL30チーム全部。

さてそのあらましをこちらで説明しましょう。

NHL、NHLPAが交渉決裂後、初めて各陣営会議が実施された3月1日。NHL代表者会議(つまりオーナー会議ですな)において、ウォールストリートで名を馳せる投資会社ベインキャピタル社が、ボストン地区スポーツコンサルティング会社であるゲームプラン社とともに、NHL全30チームを35億ドルで買収する案を提示していた、とトロントスター紙トロントサン紙の両紙が伝えました。

ただその会議の場では、この両社のプレゼンに対してのオーナーたちの反応は薄く、プレゼンはわずか30分で終了。当初は「まともに取り合うオーナーはいない」との報道でした。しかし一夜明けて、またトロントスター紙が「この2社の買収案、提示額を35億ドルからアップする用意あり」との続報が出て、「可能性ゼロ」という雰囲気から「決してあり得ないとは言い切れない」レベルに真実味を帯びて来た様子です。

そもそもこの2社のうち、最初にこのアイデアを思いついたのは、スポーツコンサルティング会社のゲームプラン社。昨年NHLが発表した「レヴィット報告(注:NHLの要請で、リーグ全体の赤字額、収入に対する支出割合74%・・などという数字を、かつて政府要職にあったレヴィット氏がまとめた報告書です)」に基づき、ゲームプラン社がビジネスモデルを作成し、これをベインキャピタル社に持ち込んだのだとか。そして5ヶ月前には、ベイン側からNHLに対してこの草案が説明されていたらしい。そしてNHLがシーズン全面中止を発表した今、好機とばかりに今回のプレゼンに至ったというのが、裏事情のようです。

ただし、この提案の承認には、NHL全30チームからの賛成票が必要となるため、その実現可能性は限りなくゼロに近いと推測されています。両社はボストンを基盤とする会社だそうですが、この件についてボストン・ブルーインズのジェイミー・ジェイコブズオーナーは「現実的とは思えない。ブルーインズを売る気はない」と早々に断言しています。また、儲かってるチームのオーナーであれば、絶対売る気はないでしょう。フィラデルフィア(エド・スナイダー氏)、デトロイト(マイク・イリッチ氏)といった大市場チームのオーナーも、「あり得ない話」と共に一蹴しています。

デトロイトの場合はちょっと異なるのですが、こうした大市場チームは多くの場合、チームの親会社がケーブルTV局を抱えている、もしくはメディア会社そのものであるというケースです。例えばNYレンジャーズ(ケーブルビジョン)、フィラデルフィア(コムキャスト)、さらに今季からオーナーがチーム専門スポーツチャンネルを開始したコロラド、傘下に「リーフスTV」を抱えるトロントも同類です。よってそのTV局のコンテンツとしてチームは絶対に必要であり、そうした利益構造を手放すはずはないわけです。

ただ、トロントの場合、ちょっと特異な状況になり得るようなので、ここで注釈を加えておきます。まずはトロント・メイプルリーフスのオーナーは誰か? ということに言及すると、それは「オンタリオ州教師年金組合(リーフス親会社株58%を所有)」。そう、あまり知られてないようですが、リーフスの現オーナーは先生たちの組合なのです。で、このベインキャピタル社は、以前にこの教師組合の資産運用として、99年カナダ最大のドラッグストアチェーンを買収した際にも、一役買っていたんだそう。ベインキャピタル社は、投資元を募る際に「カナダ資本ももちろん流入するアテがある」と言明しており、それがこのリーフスのオーナー会社、つまり教師組合なのではないかとの推測もなされているそうです(ただし組合当局者はノーコメント)。ただ、さらに複雑なことに、リーフスというチームは単体で売却できるチームではない。というのは、その親会社は、本拠地エアカナダセンターに加え、NBAラプターズも所有しているから(てゆうか、リーフスという母体に、エアカナダセンター&ラプターズが加わったという形態)。そんな面倒な構造もあり、また、30チーム全部の合意を得られることは不可能だという背景もあって、実現の可能性が薄い今、ここでアレコレ考えるのも時間の無駄という気もします。

正直な話、小市場で経営がうまくいってないチームのオーナーの中には、チームを手放したくて仕方ないという状況もあることでしょう。しかし今のところ小市場チームのコメントとしては、フロリダのオーナーが「売る気なし」、ピッツバーグの経営陣は「ノーコメント」という感じ。さらに売りに出ていたアナハイムでは、新オーナーが一足先にチーム買収を宣言したばかり。再三危ないと言われているフェニックス、ナッシュビルあたりがどう反応するかに興味はあるのですが、新CBAがオーナー有利にまとまれば、今後のチーム財政は健全化する可能性はあるわけですし・・・そう考えるとこの2社による買収の可能性は、やはりゼロに近いでしょうか。

ところで、提示額の35億ドル(当初は30億ドル、33億ドルという報道も)は、ロックアウト前のフォーブス誌推定NHL30チーム市場価値合計額(49億ドル)を大きく下回ります(ただしフォーブス誌の数字には、アリーナの資産価値も含まれる場合があるとか)。これは、ロックアウトの影響でNHLのブランドイメージが低下し、投資会社としては「今が買い頃?」と食指を動かしてもおかしくないという時代の現れと考えられる。むろん「今が底値」という意味なら、今後は上昇しかないわけなので、声をかけてもらったことは、ありがたい話でもあるのだけど・・・

ところでこのベインキャピタル社ですが、前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニー氏によって84年創業、現在は仏銀行ソシエテジェネラルの一部門となっています。過去にバーガーキングなどの会社を買収し、経営体質を改善して利益を上げた後に会社を転売、もしくは株式公開することで実績を挙げて来たそうです。で、今回もそれまでの事業同様、ベインキャピタル社単独の資本だけでなく、他の同様な投資会社、もしくは投資銀行からの資本流入が予測されています。ちなみにベインの幹部にNBAボストン・セルティックスの共同オーナーがいるそうです。

ちなみに、プロスポーツリーグが、ひとつの資産に集約されているケースは、WNBA、メジャーリーグサッカー(MLS)などの先例ありで、各選手たちは個々のチームではなくリーグとの契約を交わしています。また大義では、NASCARも、一元化されたオーナーシップによって経営されているスポーツのひとつになるとか。もちろん北米メジャーリーグでこうした形態を有するリーグは存在していません。

こうしたリーグ形態になれば、各チーム間経済格差は一気に解消されるし、CBAによる各チーム年俸管理の必要性もなくなります。ただし提案内容によると、ドラフト、ボーナスシステムなどは依然残るとのこと。また地方TV放送などの放映権料もテリトリーとは関係なしに、全収入を等分分配するんだそうです。

現在年間収入(21億ドル)のうち75%(他のメジャースポーツは50〜68%)を選手年俸支出にとられているNHLではありますが、この支出カットにリーグが勤しめば、リーグ全体としては大きな利益が得られる。そこがこの2社の目のつけどころであることはいうまでもありません。

まあ、支出はこれで管理できることは間違いないですが、それで収入アップに繋がるのか? というのが、NHLの場合いささか疑問でもあります。

それに何で今時この話をオーナー会議ですんの? という問題もある。当然、NHLベットマンコミッショナー承認のもと、この2社はプレゼンを実施しているわけで・・・「お前らオーナーたちの経営はなってない。ここは思い切ってチームを売り払い、あとはプロの手に任せてみませんか?」なんてプレゼンを目の前に突きつけられてるようで、どのオーナーもいい気はしないと思うんだけど。ま、そもそも投資&転売が目的だったオーナー(元カナックスの某オーナーとかね)であれば、「いい値をつけてもらえるなら、とりあえず話は聞く」という態度を見せたのかも知れませんが。

いずれにしても繰り返しになりますが、可能性の薄い話なので、あーだこーだここで議論するのは、時間の無駄だとは分かってます。が、放置しておくわけにもいかずってことで、長文書いちゃいました。ま、日本のマスコミを賑わす例の問題と共通点がなきにしもあらずですしね・・・

どーでもいいけど、ここは本来ホッケーを語る場所。いい加減、経営&経済系の話題以外を取り上げたいなっと。

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by hockeyworldjapan | 2005-03-05 13:19 | NHL overall


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