2005年 02月 09日 ( 3 )

NHL労使交渉。で、今の争点は何?

・・・と言われそうなので、一応書いておきます。

もちろん「サラリーキャップ」の導入の有無もひとつの焦点であることは変わりないのですが、選手の中には「NHL提案の通りとはいかないが、キャップという概念は受け入れてもいいのでは?」「キャップ&贅沢税の双方をシステムとして取り入れたらどうか?」という人たちも出て来てはいるのです。ただしそういう選手たちが、全体の何%に相当するのか、またその選手たちであっても「キャップ容認派」と一括にしてしまうのは、実際に難しいというのが現状ではあります。

で、PA側として、NHL提案の中で一番の問題になっているのが、「リーグ総収入の53〜55%を、選手年俸総支出とする」という部分。理論だけをとってみれば、このNHLの主張は至極正当のように思われますし、各チームのキャップ額を算出するためにこうした技法を取るのは、基本中の基本ではあります。

ただし、これをNHLの現状と照らし合わせてみると、PAにとってはこのシステムの即座導入は非常に痛いタイミングなのです。というのも、NHLでは(1)アメリカでのTV放映権収入の大幅ダウン、(2)ロックアウトの余波によるその他の収入の激減、などの背景により、近々リーグ総収入が大幅ダウンする可能性が大であるからです。

ひとつの例をここで挙げておきます。

現在のNHL提案で妥結したとして、来季2005−06年はフルシーズンが戦われたとします。しかし、先に挙げた(1)、(2)の理由で、リーグ総収入は30%ダウンしたとしましょう。

2005−06年でのチーム別サラリーキャップ額は、3200万ドル〜4200万ドル(福利厚生費を除いた純粋な年俸額では、約3000万ドル〜4000万ドル)。しかしその翌シーズンのキャップ額は、リーグ総収入の30%ダウンを加味した額、つまり30%ダウンの2100万ドル〜2800万ドルとなるのです

もちろんリーグ総収入が実際に30%もダウンするのかどうか・・・という議論も必要だとは思われるのですが、キャップ上限2800万ドルというのはPAにとってはかなり低い数字であることは間違いありません。というわけで、PA側がこの「リーグ総収入の53〜55%を、選手年俸総支出とする」というコンセプトに猛反駁しているのは、そういう背景があるからなのです。

さらにPA側としては「選手たちはロックアウトされた方。ロックアウトによる収入減の責任はオーナー側にある」という議論もあるでしょうが、それは正直お互い様だと思う。逆にPA側としては、待てば待つほどリーグ総収入減の可能性が増えて行くわけだし、NHL側としてはPA側にプレッシャーをかける上でいい材料になっているような気がします。

いずれにしても、(1)このまま交渉しない日々が続き、タイムリミットを迎える →(2)今季全面中止宣言がなされる →(3)どうせ来季は9月までキャンプもないし・・・ってんで緊迫感が薄れる → (4)交渉がさらに膠着状態になる →(5)ファン置いてきぼり化がさらに進行する・・・といったシナリオを、私は一番恐れています。(「ホッケー食べて、飲んでる」カナダでもファン離れが進行してます)

この際はっきり言いましょう。
別に今季開幕しなくたっていいんです。
でも、これだけは言いたい。交渉だけは続けろと。

PA側がロックアウトの余波を気にするなら、NHL側は最初の2年は暫定的にキャップ額を据え置くとかの措置も提示してやれば? とも思う。それと引き換えにNHL側は他の条件で強く出られることでしょうから。そういうのが「交渉」ってもんじゃないかと思うのですが。

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by hockeyworldjapan | 2005-02-09 14:27 | CBA

続・五輪&NHL

2010年のバンクーバー冬季五輪のカナダの放映権は、CTV、TSN、ロジャーズスポーツネットの民放混成チームが、国営放送のCBCを破って獲得したそうです。(これでCBCでは、さらなるレイオフが進むと予想)。

NHL労使交渉がここ数日全く新しい動きがないので、さすがのTSNもネタ切れしたのか、いきなり「2010年のチームカナダはどんな選手たち?」と気の早い話をしてました。ま、放映権獲得内輪盛り上げ企画で無理矢理突っ走ったという感じでしょうか?

そのあたりの内輪盛り上げの話はこれくらいにして、先日こんな話題がありました。

2月1日、IOC会長ジャック・ロゲ氏が、2010年五輪開催地のバンクーバーを訪問しました。その際に「五輪アスリートは、最低年俸600万ドルを求めてストライキなんかしない」と発言。場内500名以上の聴衆から大きな喝采を浴びたそうです。

ただし、後になって自分の発言に関するカナダ国内での反響の多さに驚愕したらしく、そこではかなりの弁解モードでした。自らもヨットで3回五輪出場で、ラガーマンというロゲ氏。ソルトレーク五輪では自ら選手村で寝起きするという「庶民派」を打ち出した彼らしい発言ではあったわけですが、例によってNHLロックアウトによりニュースに飢えてるカナダのメディアにとっては、実にツッコミ甲斐がある取材対象だったわけです。ベルギー出身の方なので、さすがにカナダでのNHL関連報道の凄まじさは予想できなかったか・・・という好例でした。

そしてかねてから「ベットマン嫌い」とお伝えしてきたIIHFルネ・ファーゼル会長も、このIOCロゲ会長とともにバンクーバー入り。到着当初は「NHL選手の2006年トリノ五輪参戦? ギリギリまで門戸を開くよ」と穏当な発言を残してたのです。しかしその翌日、NHL選手にチクリと刺したロゲ会長と同期化したのか、ファーゼル会長は猛然と掌返しに出ました。

「来季NHLシーズンが成立し、NHL選手参戦のために五輪ブレイクが設定されなくても、NHL選手がトリノ五輪に出場する手段はある」

この発言の状況説明をしたいと思います。
現在労使交渉が難航している状況を睨み、NHLベットマンコミッショナーは「たとえ労使交渉が妥結しても、来季レギュラーシーズン中に五輪ブレイクを設ける可能性は薄い」とコメント。ここには「NHLはトリノ五輪について配慮する用意はない」という意図が汲み取れます。

それまで「NHLにスリスリ」する姿勢を打ち出していたファーゼル会長なのですが、「さすがにそこまで舐められちゃあかなわん!」と、ロゲ会長(整形外科医@ベルギーです。歯科医@スイスのファーゼルさんにとっては、ベットマンコミッショナーより付き合いやすい相手に違いない)の後ろ盾に背中を押されたこともあってか、上記の掌返し発言に出たようです。まさに売り言葉に買い言葉とはこのこと。まあ、気持ちは分かります。

さらにファーゼル会長は「各国連盟は、選手たちにNHL契約を思いとどまらせ、五輪に出場させる案を持っている」とベットマンコミッショナーに対して宣戦布告とも受け止められる発言も。そして「NHL選手が参加しなくたって五輪は大丈夫」的な発言も残しています。そして2004−05年シーズンが全面中止になれば「(2005年)ウイーンでの世界選手権はとっても面白くなるだろうよ」と挑戦的。高額契約選手たちの保険が問題となりかねないが? と聞かれると「トップクラスの高額年俸選手を除き、現在ヨーロッパでプレーしている選手たちはみんな保険でカバーされているから、世界選手権でも同様に問題ない」と余裕をぶちかましていたそうです。

ただ、こうしたファーゼル会長の発言を尻目に、おそらくベットマンコミッショナーの腹の内は「トリノはどうでもいい。バンクーバーさえ参戦できれば」というとこではないかと察するのです。実際、1998年長野五輪の際もNHLとしては、「(2002年)ソルトレークの予行演習のつもりで」というノリでしたしね・・・仮にトリノに参戦するとなったとしても、また長野の時と同様に選手たちからは「時差ぼけうんぬん」でスケジューリングに苦情が出るのは目に見えてもいます。

そのトリノ五輪、各国は2005年10月までに選手リスト提出が求められ、2005年1月にさらにその詳細リスト提出が必要となります。ただし直前でのメンバー変更はアリらしい。ということで、かなり直前までバタバタすることが予想されます。

そして本日(2月10日)から、スイス・クロテンで日本代表がそのトリノの出場権を賭けて戦います。いい結果を期待したいものです。
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by hockeyworldjapan | 2005-02-09 13:36 | NHL overall

NHL選手たち@ヨーロッパ

労使交渉妥結の見込みのないまま、NHL選手は現在半数以上がヨーロッパに流出中です。その中で気になる人の流れがあったので、ご報告します。

マリアン・ホッサ&マリアン・ガボリク:
スロバキアの誇る強烈FW2人ですが、スウェーデンリーグのチームから、故郷スロバキアのトレンチンに移籍しています。ガボリクはスウェーデンでの試合で、トーマス・スティーンの息子、アレクサンダーからスラッシングを受けて左手小指を負傷したらしいけど、その後は大丈夫だったのかしらん? ガボリクのスウェーデンリーグ・ファージェスタッズとの契約はどうも1ヶ月のみという条件だったそうです。
一方、ホッサもガボリク同様、シーズン開幕時はトレンチンでプレー、その後弟マルセルと一緒にプレーするためにスウェーデンリーグ・モラに所属していましたが、モラ移籍前に「プレーオフ前にはトレンチンに戻ってくる」と宣言していたそうです。で、そのトレンチンには、パボル・デミトラ(今はスロバキアリーグ断トツのスコアリングリーダーだそう)も在籍しており、今季序盤はデミトラとマリアン2人が一緒のラインがプレーしていた模様。う〜ん、豪華です。ぜひ観てみたいものです。

*ヴェサ・トスカラ:スウェーデンHV71から故郷フィンランド・タンペレに移籍。

*オリ・ヨキネン:スウェーデンリーグから故郷フィンランド・IFKヘルシンキに移籍。

*フランティセク・カベルレ:故郷のチェコリーグ・クラドノから、スウェーデンリーグ・モドに移籍。

*ロスティスラフ・クレスラ:故郷チェコリーグから、フィンランドリーグHPKに移籍。
(なんかチェコ人だけが、故郷→他国と動きが逆行してるのですが、なんででしょうか?)

*ジョージ・ララック:
日本でも王子製紙の若手留学先、もしくは二瓶兄弟がジュニア時代に過ごしたことでしられる知られるスウェーデン・ストックホルムの名門AIKに移籍。ただ名門といっても最近のAIKはかなりの不振を極め、現在はなんと3部リーグ(現地ではディビジョン1Bと呼ぶそう)まで降格しているそうです。
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by hockeyworldjapan | 2005-02-09 13:06 | NHL overall