2006年 09月 01日 ( 1 )

新基準説明会とプレシーズンゲーム初日

昨日は、東伏見でのプレシーズンゲーム初日取材に出かけてきました。

その試合前に、メディア向けに日ア連レフェリー委員長福田弥夫氏から、今季からIIHFで導入されるルール改正と新基準についての説明会がありました。

福田氏によると、IIHFのルール改正は4年に1回。五輪が終了した直後の年次総会で新ルールが承認されるというサイクルだそう。そちらで承認されたルール改正の主な内容は以下の通りでした。

アイシング:ゴールクリーズをパックが通過してもアイシング。GKがクリーズを出てパックを追ったらノーアイシング。クリーズ外にいる場合、ただちにクリーズ内に戻ればアイシングの対象に。

フェイスオフの場所:エンドゾーン内で試合が途切れた場合は、すべてエンドゾーン内のフェイスオフサークルから再開。仮想線上でのフェイスオフという概念はなくなる。しかしニュートラルゾーンに関しては、フェイスオフスポット以外での仮想線上でのフェイスオフ再開は今後も適用される。

オウンゴール:ディレイドペナルティ中に、パックキャリアがパックをミスハンドリングし、味方のゴールにパックが収まった場合、過去にはノーゴールとされていたが、今後はゴールが宣告される。ただし、ペナルティを犯した側の選手が影響を及ぼした場合は例外とする。

危険なペナルティ:ハイチェック、ローチェック、後ろからのチェック、ニーイング、スピアリングなどの危険行為に関しては、レフェリーが即座にマッチペナルティを宣告できる裁量を与える。

それに加えて、NHLで昨季から既に導入されていた妨害行為に対する新基準について、DVDを用いた説明が実施されました。

昨季のNHLでの経緯を追ってらっしゃる方はすでにご存知だと思いますが、その新基準とは? と一口で説明すると「過去にルール上に記載されていた妨害行為に対し、新基準をもって厳しく取り締まる」ということ。すなわち既にルールブックで禁止されていたのにもかかわらず、グレーゾーンの許容範囲が多過ぎて、試合が「クラッチ&グラブ(いわゆる掴み合いですね)」になってしまった。これにトラップなどの戦略も相まって、1試合あたりのスコアリングが地を這ってしまったNHL。これでは試合が面白くない、という観点から「妨害行為を徹底取り締まりする」という決断を昨季下したわけです。これによって、昨季のNHLでは1試合あたりの得点が6.17までアップ(導入前の2003−04年は5.14)したという実績があります。

さて、この新基準の日本導入に備え、日ア連はまずNHL審判部長スティーヴン・ウォルコムとコンタクトをとり、日本語吹替の映像をウェブ上で無料配信できるよう了解をとりつけました。実際にはIIHF製作のDVDもあったそうですが、今年7月の会議で配布されたばかりだったため、日本語吹替版作成などの準備に間に合わなかったそう。よってこの説明会では、NHL製作のDVDの日本語吹替版が使用されました。

そこで、今季から厳しくなる基準の代表数例が紹介されました。例えば・・・

*パックキャリアに対して、例えばスティックを使って相手の身体を目がけてチェックしていくプレーは即ペナルティになる。

*またパックキャリアがパックをダンプインし、パックを手放したにも関わらず、その後しばらくしてからクリーンなチェックを放った場合、これはタイミングが遅いチェックとみなされペナルティとされる。

*自陣でサイズのあるDFがよく使っていた手段だが、コーナーで相手選手に覆いかぶさるようにボード際に押さえつけるプレー(ピンと呼ばれてます)もペナルティの対象。またゴール前では、相手選手を掴んだり、倒すような行為は即ペナルティ。

*攻撃側にもペナルティが課せられる可能性あり。パックキャリアが前方にいる相手DFに対し、例えば片手でパックハンドリングしながら、空いてるもう一方の手で相手DFをつかんで引きつけ、テコの原理で自分が勢いをつけて前に出るという行為は、今後ペナルティとして宣告される。

・・・などなど、昨季までは上記のそうした「技」でいい味を出していた選手もいたとは思いますが、そうした「技」は今後全て反則行為とみなされる。選手によっては、かなり重大なアイデンティティクライシスを迎えているかも知れません。

この新基準の導入の経緯ですが、まずは昨年11月、IIHFルネ・ファーゼル会長から各国連盟にその旨の通達がまずあったそうです。そして12月のU20大会に、早くもその新基準を採用。バンクーバーで開催されたこのU20大会を、日ア連から福田氏と、現役レフェリーの高橋氏が視察。新基準の概要メモを作成し、日本の主要レフェリーに配布したそうです。そこで、2006−07年シーズンからのアジアリーグでの導入を通達しました。

また2006年の世界選手権でもこの新基準が採用されることに備え、2月の長野カップを新基準下で開催。すでに日本代表組は、この長野カップ、世界選手権といずれも新基準下でプレー経験があるわけです。またちょうどこの頃、日ア連のHPにはすでにNHLによる新基準DVDがアップされていました。

さらに春の関東大学選手権でも新基準を採用し、観客への説明用として2枚紙の説明文書を作成、配布していました。

そして7月に、レフェリーに対し、地域別新基準の説明会を実施。また実業団各チームへの説明なども個々にレフェリーが赴いて行われているようです。

日本国外のアジアリーグに目を向けてみると、中国ではカナダのレフェリー委員長を招いて、長春で新基準下でのプレシーズンゲームを実施。来週には韓国でスイスからレフェリーのスーパーバイザーを招き、同様にプレシーズンゲームを開催するそうです。レフェリーの評価キャンプも実施予定で、ここで「ランク1」を獲得しないと、アジアリーグではレフェリーを務めることはできないのだとか。ここでは日本人レフェリーはもちろん、韓国、中国のレフェリーも評価されるのだそうです。

で、昨日のプレシーズンゲーム。新基準の下、実際の試合はどうだったのか?

結論から言いますと、選手は試合の最初から最後まで戸惑いっぱなしでした。
試合の最後にはお約束と言う感じで、やや基準が甘くなったきらいはありましたが、選手たちがしきりに首を捻るようなシーンが目につきました。

両チームのマイナーペナルティの数は西武17、バックス19と、かなり多め。
ペナルティを宣告されるたびに、その内容を選手がレフェリーと確認する姿が目立ちました。しかも試合開始直後からペナルティのオンパレードで、どちらのチームもリズムが掴めない。選手は十分気をつけている様子ではありましたが、それでもペナルティをコールされて当惑。さらに2ピリあたりから昔のクセが顔を出し始める。頭では理解していても、条件反射でついスティックが出てしまうペナルティが頻出する・・・という感じの流れでした。

そんな中「新基準、こんな選手がイケそう、こんな選手がやばい」という予想が、少しずつですが見えてきました。(昨季のNHLを観ていれば大体予想は付くのですが、ここはアジアリーグ限定ということで)

その1:スピードがあっても、スキルがない選手は厳しい。
守備側の選手は、ペナルティをコールされやすい身体に向けてのプレーをよりもむしろ、パックに集中してくる。それだけにパックキャリアがパックハンドリングのスキルが低い選手だと、以前よりもパックを途中で奪われる可能性が増える。

その2:パス、シュートの技術がない選手は厳しい。
ゴール前のPKの守りなど。低い位置に守備側の選手が固まり、相手の身体を抑える代わりに、パスライン、シュートラインを読んだ動きをしてくる。攻撃側はパスやシュートの技術がよくないと、パックが通らない。なので、PP/PKの状況が激増しても、高得点の展開になるとは限らない。

その3:巧みなシュート、パスのできるポイントマンが有利に。
DゾーンでのFWがあまりアグレッシブに守りに来ないので、ポイントの位置での選手の動きが以前より余裕がでる。
昨日のバックス3点目のPPゴール(村井→有沢、有沢のワンタイマーが西武G片山のショートサイド、ブロッカー上を抜く)はまさにそんな感じでした。

またこれ以外では、DF選手が後ろからスピードを付けてドライブし、パックを運んでいくプレーも、相手にとっては止めるのが厄介で、有効なプレーに見えました。

もちろん上記の3点ですが、新基準になって試合がこなれていくうちに、状況は変わっていくかも知れませんので、悪しからずです。

それにしても、ヨーロッパのトップリーグではすでに昨季から導入済というこの新基準。スイスでは会場のビデオスクリーンに、新基準についてのビデオを流し、ファンへの説明としていたそうです。しかし「日本では、そうした施設があるのは、ビッグハットくらいなのが残念」と、福田氏は語ります。

そうしたインフラ上の制約はあるにせよ、今回のメディア向けのような新基準説明を、アリーナでファンの皆さんにも行えないものでしょうか? ビデオスクリーンを使えないのなら、例えばピリオド間に学生プレーヤーにお手伝いしてもらって、DVDで説明される状況をリンク上で再現するというくらいの努力は払ってもいいんではないかと思っております。

あと、NHLよろしく、レフェリーが試合中ワイヤレスマイクを身につけるのはどうでしょう? もちろん試合再開後に場内アナウンスは行われるのですが、リアルタイムでジャッジの内容が分かるというのは明解かつ便利です。例えばレフェリーのジャッジのジェスチャーと、ペナルティの種類がこれで観ている側としても一致するし、新しいファンの方はこれでレフェリーのジャッジを少しずつ覚えて行くことができるというメリットもあるんではと。

いずれにしても、慣れるまでは選手も観る側も混乱しそうですね・・・
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by hockeyworldjapan | 2006-09-01 12:45 | アジアリーグ