カテゴリ:アジアリーグ( 17 )

王子製紙新監督インタビュー

先日のプレシーズンゲーム@東伏見(9/3)にて、王子製紙の新監督・ロナルド・アイバニー氏とショートインタビューを行いました。

以下は、その抜粋です。

HWJ:ここまでのところ、シーズン開幕に向けて王子の準備段階はいかがですか?

アイバニー監督:まだまだやることは多い。ここ2週間キャンプを張って練習をつんできたが、選手にとっては新しいシステムを試しているので、少々時間が必要。私のやりたいホッケーに順応してもらうまで、時間がかかりそうだ。
8月14日に氷上練習を開始するというのは、王子にしては珍しく遅いことなのかも知れないが、北米の基準では全然遅くない。8月14日にスタートして、9月23日開幕だから、約7週間も間にある。その間にプレシーズンゲームもたくさんあるし、かなり長いキャンプ期間だと言える。
しかし今週の3試合は私にとっていい評価材料になった。誰がどういう仕事を担当できるか、この3試合でかなり見極めることができたと思う。

HWJ:王子にはどういった経緯でかかわることになったのですか? 契約を交わしてから、ここまではどんな流れでしたか?

アイバニー監督:過去27年間はヨーロッパでコーチを務めて来たので、日本に来ることは全く頭にはなかったが、マーク・マホン氏と話をするようになって、王子の監督職が空いていることを知らされた。興味を持った私は王子の関係者と接触し、その後この仕事のオファーを受けたんだ。7月には日本に来ることを決めていた。
王子と契約を交わした後はすぐ、苫小牧に1週間やってきて選手たちが陸トレをやっているのを見た。その際に、陸トレの指導担当者や、王子のフロントやアシスタントコーチたちとも、今季王子をどういう方向に持って行くのか、じっくり話ができたつもりだ。

HWJ:アジアリーグでは今季から新基準が導入されていますが、現在の導入状況についてどう思いますか? この新基準下で日本のホッケーはどう変わるのでしょうか?

アイバニー監督:新基準については、心配事にもなりつつある。そもそも新基準というのは、試合をスピードアップしようという概念に基づいているもの。新基準のうちのいくつかは妥当ではあるが、時として取り締まりが行き過ぎるきらいがある。なのでリーグ開幕後1ヶ月くらいは、5オン4、5オン3、4オン3のようなシチュエーションが増えるんではないか。
ウチとしてそれが困るというのは、できるだけ若い選手を積極起用したいという気持ちがあるから。しかしPK、PPの状況が多くなると、経験のない若い選手に出番を与えることは難しくなり、彼らがベンチを温める時間が増えてしまう。
なので、私としてはできるだけ日本では、他の諸国よりもレフェリーが早くこの新基準に慣れてくれれば、と望んでいる。さもないと、PP、PKの状況が増えすぎて、若手の育成に費やす時間が減ってしまう。
私の戦略は、チームの主力数名だけに頼るものではない。ベンチにいる全員の選手をうまく起用し、チーム全員で試合をつくっていきたい。選手たちには自分たちの力を見せるようにプレー機会を与え、自信を付けさせたいんだ。ハードにプレーする選手であれば、プレー時間はちゃんと与えるつもりだ。

HWJ:日本のホッケーチームを実際に指導してみて、改めて感じる日本選手たちのレベルとは?

アイバニー監督:私は過去にイタリア代表のアシスタントコーチを務めてきたし、日本代表のプレーは長年の経験でよく知っている。日本の選手のスピードやスキルレベルについては熟知しているつもりだ。日本の選手はスケーティングに優れているし、スピードがあって、パックハンドリングもうまい。日本のホッケーが次なるレベルに到達するには、まずは決定力と、それにフィニッシュに至るまでのホッケーセンスも必要だ。ただ実際に、王子を含め、クレインズ、西武など、日本には多くのスキルの高い選手がいる。改めて観てみて、そのレベルに目を見張っている。

HWJ:これまでのご自身のホッケーキャリアについて、教えていただけますか?

アイバニー監督:私はトロント育ちでジュニアまでトロントでプレー。その後アメリカの大学で奨学金を得たんだが(オハイオ州立ケント大学)、長い話を短くすると、その後自動車事故に遭い、現役選手としてのキャリアを絶たれてしまったんだ。今は人工股関節なんだ。ずいぶん昔の話だけどね。そういうことがあって、24歳で母校のケント州立大学でコーチへの道を歩き始めた。
つまり1974年からずっとコーチをしていることになるね。1978年にヨーロッパに渡り、イタリア、オーストリア、スイス、ドイツのチーム、それからイタリア代表チームにも関わるなど、長くヨーロッパでコーチができたのはラッキーだった。おかげでイタリア語にドイツ語が話せる。日本にいるうちに、日本語も話せるようになりたいね。
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by hockeyworldjapan | 2006-09-10 18:08 | アジアリーグ

新基準説明会とプレシーズンゲーム初日

昨日は、東伏見でのプレシーズンゲーム初日取材に出かけてきました。

その試合前に、メディア向けに日ア連レフェリー委員長福田弥夫氏から、今季からIIHFで導入されるルール改正と新基準についての説明会がありました。

福田氏によると、IIHFのルール改正は4年に1回。五輪が終了した直後の年次総会で新ルールが承認されるというサイクルだそう。そちらで承認されたルール改正の主な内容は以下の通りでした。

アイシング:ゴールクリーズをパックが通過してもアイシング。GKがクリーズを出てパックを追ったらノーアイシング。クリーズ外にいる場合、ただちにクリーズ内に戻ればアイシングの対象に。

フェイスオフの場所:エンドゾーン内で試合が途切れた場合は、すべてエンドゾーン内のフェイスオフサークルから再開。仮想線上でのフェイスオフという概念はなくなる。しかしニュートラルゾーンに関しては、フェイスオフスポット以外での仮想線上でのフェイスオフ再開は今後も適用される。

オウンゴール:ディレイドペナルティ中に、パックキャリアがパックをミスハンドリングし、味方のゴールにパックが収まった場合、過去にはノーゴールとされていたが、今後はゴールが宣告される。ただし、ペナルティを犯した側の選手が影響を及ぼした場合は例外とする。

危険なペナルティ:ハイチェック、ローチェック、後ろからのチェック、ニーイング、スピアリングなどの危険行為に関しては、レフェリーが即座にマッチペナルティを宣告できる裁量を与える。

それに加えて、NHLで昨季から既に導入されていた妨害行為に対する新基準について、DVDを用いた説明が実施されました。

昨季のNHLでの経緯を追ってらっしゃる方はすでにご存知だと思いますが、その新基準とは? と一口で説明すると「過去にルール上に記載されていた妨害行為に対し、新基準をもって厳しく取り締まる」ということ。すなわち既にルールブックで禁止されていたのにもかかわらず、グレーゾーンの許容範囲が多過ぎて、試合が「クラッチ&グラブ(いわゆる掴み合いですね)」になってしまった。これにトラップなどの戦略も相まって、1試合あたりのスコアリングが地を這ってしまったNHL。これでは試合が面白くない、という観点から「妨害行為を徹底取り締まりする」という決断を昨季下したわけです。これによって、昨季のNHLでは1試合あたりの得点が6.17までアップ(導入前の2003−04年は5.14)したという実績があります。

さて、この新基準の日本導入に備え、日ア連はまずNHL審判部長スティーヴン・ウォルコムとコンタクトをとり、日本語吹替の映像をウェブ上で無料配信できるよう了解をとりつけました。実際にはIIHF製作のDVDもあったそうですが、今年7月の会議で配布されたばかりだったため、日本語吹替版作成などの準備に間に合わなかったそう。よってこの説明会では、NHL製作のDVDの日本語吹替版が使用されました。

そこで、今季から厳しくなる基準の代表数例が紹介されました。例えば・・・

*パックキャリアに対して、例えばスティックを使って相手の身体を目がけてチェックしていくプレーは即ペナルティになる。

*またパックキャリアがパックをダンプインし、パックを手放したにも関わらず、その後しばらくしてからクリーンなチェックを放った場合、これはタイミングが遅いチェックとみなされペナルティとされる。

*自陣でサイズのあるDFがよく使っていた手段だが、コーナーで相手選手に覆いかぶさるようにボード際に押さえつけるプレー(ピンと呼ばれてます)もペナルティの対象。またゴール前では、相手選手を掴んだり、倒すような行為は即ペナルティ。

*攻撃側にもペナルティが課せられる可能性あり。パックキャリアが前方にいる相手DFに対し、例えば片手でパックハンドリングしながら、空いてるもう一方の手で相手DFをつかんで引きつけ、テコの原理で自分が勢いをつけて前に出るという行為は、今後ペナルティとして宣告される。

・・・などなど、昨季までは上記のそうした「技」でいい味を出していた選手もいたとは思いますが、そうした「技」は今後全て反則行為とみなされる。選手によっては、かなり重大なアイデンティティクライシスを迎えているかも知れません。

この新基準の導入の経緯ですが、まずは昨年11月、IIHFルネ・ファーゼル会長から各国連盟にその旨の通達がまずあったそうです。そして12月のU20大会に、早くもその新基準を採用。バンクーバーで開催されたこのU20大会を、日ア連から福田氏と、現役レフェリーの高橋氏が視察。新基準の概要メモを作成し、日本の主要レフェリーに配布したそうです。そこで、2006−07年シーズンからのアジアリーグでの導入を通達しました。

また2006年の世界選手権でもこの新基準が採用されることに備え、2月の長野カップを新基準下で開催。すでに日本代表組は、この長野カップ、世界選手権といずれも新基準下でプレー経験があるわけです。またちょうどこの頃、日ア連のHPにはすでにNHLによる新基準DVDがアップされていました。

さらに春の関東大学選手権でも新基準を採用し、観客への説明用として2枚紙の説明文書を作成、配布していました。

そして7月に、レフェリーに対し、地域別新基準の説明会を実施。また実業団各チームへの説明なども個々にレフェリーが赴いて行われているようです。

日本国外のアジアリーグに目を向けてみると、中国ではカナダのレフェリー委員長を招いて、長春で新基準下でのプレシーズンゲームを実施。来週には韓国でスイスからレフェリーのスーパーバイザーを招き、同様にプレシーズンゲームを開催するそうです。レフェリーの評価キャンプも実施予定で、ここで「ランク1」を獲得しないと、アジアリーグではレフェリーを務めることはできないのだとか。ここでは日本人レフェリーはもちろん、韓国、中国のレフェリーも評価されるのだそうです。

で、昨日のプレシーズンゲーム。新基準の下、実際の試合はどうだったのか?

結論から言いますと、選手は試合の最初から最後まで戸惑いっぱなしでした。
試合の最後にはお約束と言う感じで、やや基準が甘くなったきらいはありましたが、選手たちがしきりに首を捻るようなシーンが目につきました。

両チームのマイナーペナルティの数は西武17、バックス19と、かなり多め。
ペナルティを宣告されるたびに、その内容を選手がレフェリーと確認する姿が目立ちました。しかも試合開始直後からペナルティのオンパレードで、どちらのチームもリズムが掴めない。選手は十分気をつけている様子ではありましたが、それでもペナルティをコールされて当惑。さらに2ピリあたりから昔のクセが顔を出し始める。頭では理解していても、条件反射でついスティックが出てしまうペナルティが頻出する・・・という感じの流れでした。

そんな中「新基準、こんな選手がイケそう、こんな選手がやばい」という予想が、少しずつですが見えてきました。(昨季のNHLを観ていれば大体予想は付くのですが、ここはアジアリーグ限定ということで)

その1:スピードがあっても、スキルがない選手は厳しい。
守備側の選手は、ペナルティをコールされやすい身体に向けてのプレーをよりもむしろ、パックに集中してくる。それだけにパックキャリアがパックハンドリングのスキルが低い選手だと、以前よりもパックを途中で奪われる可能性が増える。

その2:パス、シュートの技術がない選手は厳しい。
ゴール前のPKの守りなど。低い位置に守備側の選手が固まり、相手の身体を抑える代わりに、パスライン、シュートラインを読んだ動きをしてくる。攻撃側はパスやシュートの技術がよくないと、パックが通らない。なので、PP/PKの状況が激増しても、高得点の展開になるとは限らない。

その3:巧みなシュート、パスのできるポイントマンが有利に。
DゾーンでのFWがあまりアグレッシブに守りに来ないので、ポイントの位置での選手の動きが以前より余裕がでる。
昨日のバックス3点目のPPゴール(村井→有沢、有沢のワンタイマーが西武G片山のショートサイド、ブロッカー上を抜く)はまさにそんな感じでした。

またこれ以外では、DF選手が後ろからスピードを付けてドライブし、パックを運んでいくプレーも、相手にとっては止めるのが厄介で、有効なプレーに見えました。

もちろん上記の3点ですが、新基準になって試合がこなれていくうちに、状況は変わっていくかも知れませんので、悪しからずです。

それにしても、ヨーロッパのトップリーグではすでに昨季から導入済というこの新基準。スイスでは会場のビデオスクリーンに、新基準についてのビデオを流し、ファンへの説明としていたそうです。しかし「日本では、そうした施設があるのは、ビッグハットくらいなのが残念」と、福田氏は語ります。

そうしたインフラ上の制約はあるにせよ、今回のメディア向けのような新基準説明を、アリーナでファンの皆さんにも行えないものでしょうか? ビデオスクリーンを使えないのなら、例えばピリオド間に学生プレーヤーにお手伝いしてもらって、DVDで説明される状況をリンク上で再現するというくらいの努力は払ってもいいんではないかと思っております。

あと、NHLよろしく、レフェリーが試合中ワイヤレスマイクを身につけるのはどうでしょう? もちろん試合再開後に場内アナウンスは行われるのですが、リアルタイムでジャッジの内容が分かるというのは明解かつ便利です。例えばレフェリーのジャッジのジェスチャーと、ペナルティの種類がこれで観ている側としても一致するし、新しいファンの方はこれでレフェリーのジャッジを少しずつ覚えて行くことができるというメリットもあるんではと。

いずれにしても、慣れるまでは選手も観る側も混乱しそうですね・・・
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by hockeyworldjapan | 2006-09-01 12:45 | アジアリーグ

西武(仮称)、シーズン開幕に向けて着々

久々のNHLノートブック、更新です。

とはいえ、その内容はアジアリーグ関連のニュースなのであしからず・・・という感じなのですが。NHL関連ニュースは、気が向いた時にNHL備忘録でアップしていますので、そちらを覗いていただきたく・・・よろしくお願いいたします。

さて、ホッケーシーズンも徐々に近づき、ということで、昨日は東大和での西武(あくまでも仮称です。昨季までのコクドであります)の練習取材に出かけてまいりました。西武といえば、本拠地は東伏見なのですが、その東伏見が8月下旬はアイスショーのため塞がってしまってるのだとか。27日までアイスショーが開催され、その後3日間は氷の設営をチェンジ(フィギュアとアイスホッケーでは氷の厚さが違うため。フィギュアが7cmに対してホッケーは3.5cm)せねばならず、30日までその作業が実施されるそうです。そして、ぶっつけ本番で31日からプレシーズンゲームが開催されるという状況であります。

よって、8月12日に1ヶ月間の軽井沢キャンプを打ち上げた後、西武の氷上練習はずーっと東大和で行われてきました。その状況に岩崎監督は「いちおう東伏見がホームリンクなんですけどね」と苦笑いを見せます。

さて、ここ数年西武の選手たちは、「ホッケー選手も社内の仕事にもっと関わるべき」との社内方針から、オフには各事務所に割り振られ、実際に営業などの仕事をかなりこなした時期もあり、オフのトレーニングは選手の自主性に任されていたようです。

しかし今季は会社統合などの裏事情もあり、選手に対する社内研修は実施されたものの、早い時期からチーム単位での、トレーナーの指示の下でのトレーニングをスタートできたそうです。

岩崎監督は、この夏の成果をこう語ります。

「おかげで、軽井沢キャンプが始まる頃には、身体がすでに出来上がっている選手が多かったです。軽井沢に行く前はウエイトとランニング中心で、軽井沢に行ってからは軽井沢の地形を利用した陸トレに移行したりと・・・バランスよくできたんじゃないでしょうか。

軽井沢のリンクの裏手のスノーボード用のスロープをダッシュしたり、芝生の上で膝などのケガを気にせずにトレーニングできたり。ロングランをやるにしても、東京だと熱過ぎて熱中症になってしまうし、空気もあまりよくないですからね。昨年は5日間しか軽井沢でやれませんでしたが、今年は1ヶ月みっちりできたし、シーズンに向けていい準備ができました。

スケジュールは三勤一休だったんです。こっちの方が、5日やって2日休むより集中できる。週末休みとかだと、週の半ばでちょっとペースが落ちたりする可能性があるんですよ。そんなスケジュールだったので、選手にとってはオフの時期が短かったという印象があったかも。でも軽井沢キャンプは1ヶ月だけなので、そこは家族に理解してもらうしかないですね(笑)」

最近は北米並みに、氷上練習に移行する時期が遅くなってきていた日本のホッケー界であるが、今夏の西武は氷上練習を6月末からスタート。その大きな理由が、今季からアジアリーグでも正規導入されるルール変更であります。妨害行為を以前よりかなり厳しく取り締まるこのルール変更導入後は、試合がスピードアップすることが予想されている。そのあたりを見越して、陸トレでは足腰の強化に重きを置き、戦略面などの徹底も含めて氷上練習を早めに始動したのだそうです。

そうなると、いったい西武はルール変更対策として、どういう練習をやってきたのか? そのあたりが当然気になるところですよね?

若林クリスコーチは、こんな風に説明してくれました。

「まずは、テンポの早い練習が主体です。トランジションを意識したスピードアップした試合展開に対応することと、それから1対1の守り方を集中的にやっています。

1対1の練習では、その感覚を掴むため、リンゲット(1963年カナダ・オンタリオ州ノースベイ生まれのスポーツ。アイスホッケーに似ているが、パックの代わりにゴム製の輪を使い、スティックはブレード部分がなくシャフトのみで、輪を引っ掛けてドリブル、パスを行う。カナダでは女子を中心に競技人口約5万人。カナダ以外にも、フィンランド、スウェーデン、ドイツなどで楽しまれている)を3回くらい実施しました。これによって、攻めの選手は自由にハンドリングできるんですが、守りの選手はスティックで怠惰には守れないので、身体を動かしてボディコンタクトをする必要が出て来るんです。そういう形で、コーナーの1対1の練習をやってみたんです。

ルール変更導入後の昨季のNHLを観た感想ですが、以前よりフィジカルなプレーが目立っていたと思うんです。でもアジアリーグでは、ああはならないんじゃないか? という気がしてるんですよ。NHLの場合、選手の身体が大きくて、リンクが狭いからそうなったんじゃないか? と思って。実際、(国際規格のリンクを使用する)トリノ五輪では、それほどフィジカルな試合展開ではなかったですしね。

ルール変更を選手に理解してもらうのには、まずはNHL製作のDVDを、軽井沢キャンプの時に日本語に訳しながら確認するセッションを行いました。それからトリノ五輪の試合で作ったビデオクリップも少し紹介したり・・・。軽井沢キャンプの最終日にはレフェリーに来てもらい、紅白戦で笛を吹いてもらったんです」

しかし、その紅白戦では、かなり選手たちの戸惑いが目立ったそうです。特に自陣の守りや、ブレイクアウトでのシチュエーションでは、昨季までであれば相手がペナルティをコールされるべき行為で、逆に味方がペナルティを課されるシーンもあったとか。そうした判定の理解の難しさも含め、ルール変更についての不安を、岩崎監督はこう漏らしていました。

「厳しくなるのはいいんですけど、レフェリーによって基準にばらつきがあったりすると困るでしょうね。それに反則が多くなって、今年春の大学選手権のように試合がつまらなくなってしまう可能性もある。1対1のシチュエーションで、相手を抜いていくプレーが増えれば、面白いとは思うんですけどね」

チームスタッフの不安は尽きないところではありますが、昨季のNHLでのルール変更導入では、試合がスピードアップし面白くなったという意見が多勢を占めておりました。それでは、アジアリーグでのルール変更導入は、どういった効果をもたらしてくれるのでしょうか? 若林コーチは、こう続けます。

「やはりスピードのある選手は有利でしょうね。しかしこれまでの癖で、1対1でチャレンジできるのに仕掛けていかない選手は、その癖を直さないといけませんね。

守りに関してはスピードのない選手は苦戦するでしょうが、それがどこまで厳しいかはまだ未知数です。ニュートラルゾーンで抜かれるのはかなりきついとは思いますが、Dゾーンである程度守れれば問題ないですから。変更後のルールであれば、1対1の状況なら守備側は誰でも負けてしまうような内容。なので、重要なのは、1対1の状況で負けた後にどうするか、なんです。

NHLを観てると、自陣ではFW2人も上の方の守りは捨てて、かなり低い位置で守っているんです。アジアリーグでも、おそらくそういう守りが主流になるのでは?  という気がしますね」

そういう意味でも、8月31日から4日間のプレシーズンゲームは、各チームにとっても、レフェリーたちにとっても、いい意味での試金石となりそうです。

さて、昨日の西武の氷上練習には、日本代表GKコーチに今季から就任したアンドリュー・アレン氏が、飛び入り参加していました。

アレン氏は、昨季までAHL、ECHLで現役ゴーリーとして活躍しており、現在はオタワ大学でもコーチとして教えているというお方。マーク・マホン日本代表コーチのコネクションで、今後は主に女子代表を指導していくそうです。

この夏は、日本のホッケー処を訪ねて全国を訪問中で、西武の練習参加はこれが2日目で最終日。打ち上げの意味もあって、この日の練習の最後は、アレン氏のGK向けドリルを実施したのですが、これが大盛り上がり。2オン0のシチュエーションでのゴール合戦(GKは菊地&片山組に、福藤&松本組と分かれてました)となり、リンクには選手たちの元気な声が響きまくっておりました。

あ、余談ですが、駒大苫小牧高校のOBが多いのも、日本のアイスホッケー界の特徴。
この前々日のオフ日だった日曜日には、OBのひとり神野選手が甲子園に応援に駆けつけ、死闘15回の様子を見届けて来たそうです。

そんなこんなで、今季もアジアリーグホッケーをよろしくお願いいたします。
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by hockeyworldjapan | 2006-08-22 14:13 | アジアリーグ

ファイナル終わって一夜明けて

まだあのファイナルの興奮冷めやらぬ本日、アジアリーグ・アウォードが開催されました。

アウォード受賞者の詳細については、アジアリーグの公式HPを見て頂くこととして、こちらに足を運べなかった方たちのために、ちょっと小ネタをご紹介。

*場内から笑いを誘ったのが、2年連続MVPの菊地選手のスピーチ。まずはマイクを向けられて「あ・・・う・・・」と絶句。そして「正直僕よりもふさわしい選手がたくさんいるのに、こんな賞を貰ってしまって・・・恥ずかしい気持ちです」と、絞り出すような声でのコメントに、場内からは笑いが漏れていました。その後のファンへのメッセージで噛み噛み状態、さらにトロフィーを持っての記念撮影では、あまりの表情の固さに「もっと笑って下さい」とのリクエストが。それでさらに表情がこわばり、チームメートからさんざん冷やかされた菊地選手でありました。

*ベストレフェリー賞に2年連続で輝いた川村一彦レフェリー。受賞後のスピーチでは「試合中、応援してくださるのはうれしいのですが、名指しでヤジるのは勘弁してください」と語り、これまた場内爆笑。アウォード終了後には「経費節減のため、東京のレフェリーが選ばれてるだけですよ」と謙遜しながらも「来年また狙います!」と高らかに宣言していました。

*ベストプレーメイクFW、最多アシスト、最多ポイントと、表彰ずくめのデレク・プラント選手。トロフィーの授与は壇上で行われるので、受賞者は壇上中央でスタンバイしていればよいのですが、たまたま最多アシスト賞のプレゼンターがやや出遅れ気味で手間取っているのを見るやいなや、プラント選手は自ら壇上の端まで歩み出て、トロフィーを貰いに行ったのです。プラントにとって初めての日本でのアウォード出席で、勝手が分からずについ出てしまった珍プレー。これまた場内から笑いが漏れました。

*昨夜は悔しい酒をさんざんあおったであろうクレインズ陣営。伊藤賢吾キャプテンは、「今日、朝起きてもまだ負けたなんて信じられなくって・・・セミファイナルを3連勝して、釧路でも勝てていたから絶対に優勝できると思っていたんです」と、いまだに悔しそう。昨年は明らかに実力でコクドに負けたと思えたし、割とサバサバした感じで負けを受け入れられたそうだが、今年の負けはいまだに受け入れがたいものがあるのだとか。一夜明けて、日本製紙本社へ「敗戦報告」をチームスタッフとともに出向いた賢吾キャプテンだったが、本社ではGM含め多くの人たちが「よく頑張った」と逆に励ましてくれたのだそう。来季に向けて、会社側のバックアップもすでに取り付けているというクレインズは、いまやチーム財政面において日本では一番の安定性を誇っているといっても過言ではありません。「釧路ではできたことが、東伏見に来てできなかった。それはリンクコンディションのせいだけでないと思います。自分たちのプレーができなかった分、来季はしっかり底上げをしていきたい(田中監督)」というクレインズに期待しましょう!

*ファイナル第5戦、最後の最後で底力を見せたコクド。ケガ人も出て、ベテランが多くスタミナ的にも心配されましたが、試合終盤は選手たちがあたかも「ホッケーハイ」にでもなっているかのような怒濤のプレーを披露してくれました。鈴木貴人キャプテンに言わせると、実際に選手たちはそういう「ハイ」な状況に入っていたようで、試合終了後ロッカールームでは、まだ勝利の美酒が入っていないのに皆「まるで酔っぱらってるみたいにハイでした(鈴木選手)」のだったとか。「試合が終わってもその酔いが醒めないんです。僕は記者会見に呼ばれていたので、このままではいけないと思い、いったん外に出て頭を冷やしていたほどです(鈴木選手)」。いわば、脳内快楽物質ドーパミンが出っぱなしだったということでしょうか? 普段クールな印象のある鈴木キャプテンですが、今までの優勝経験の中でも、これほどの感覚に襲われたのは今回が初めてだったそうです。

*残念だったのは、ハルラがアウォードに参加しなかったこと。セミファイナル第4戦での例の一件でしこりを残したのがその要因ではありました。ソンドンファン、ヤロスラフ・ネドベドがベスト6に選ばれ、チームも3位と、アジアリーグの中でも今や欠かせない存在だっただけに、やはりこのアウォードには参加して欲しかった・・・来季に期待します。
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by hockeyworldjapan | 2006-03-28 00:04 | アジアリーグ

コクドが優勝、クレインズは涙

アジアリーグ・プレーオフファイナル第5戦は、コクドが4−3と日本製紙クレインズを振り切り、2年連続優勝となりました。

試合をざっと振り返ると、クレインズがまず2−0と第1ピリオドに先制。PPのチャンスにプラントが元NHL選手の片鱗を見せる巧みなシュートで、コクドGK菊地は美味しいリバウンドを出し、そこをすかさず伊藤雅俊がグラブサイド上へ見事に決めて1−0。(余談ですが、この日の伊藤雅俊はいつにも増してデンジャラスでありました)さらにまたまたPPで、クレインズはゴール右から佐藤匡司がディフレクションで決め、2−0で第1ピリオドを終了しました。

しかし、コクドは第2ピリオド序盤、PPのチャンスを活かして攻め続け、クレインズのPKユニットは1分30秒間全くチェンジできず。足が止まったところで、ゴール裏鈴木貴人からゴール前のパーピックに渡って、1−2と反撃を開始しました。

クレインズとしては、この1点は仕方ないにしても、次の5オン5での失点は痛かったのではないでしょうか? Dゾーンでパックを奪ったパーピックからロングパスで相手ブルーライン手前のユールに繋ぎ、ブルーラインを越えたところでユールが鈴木貴人にドロップパス。そこから鈴木が放ったミドルシュートが決まり、第2ピリオド4分すぎにして2−2の同点に。

こうなると、コクドのイケイケ展開になるかと思われたのですが、コクドは再び自らのペナルティで自滅モードに。しかしその後のPPのチャンスで、コクドG菊地の要所要所の好セーブと、コクドの選手がリバウンドをがっちり拾う得意のプレーオフモード戦闘態勢に阻まれ、クレインズは勝ち越し点を挙げられませんでした。

そして第3ピリオドでは両チームともに1点を追加し、3−3の同点。コクドは15分すぎに得たPPで、河村のパスからキャプテン鈴木貴人が左サークル付近から叩いたシュートがゴールに収まり、これが決勝ゴールに。クレインズは終盤6人攻撃をかけるも、コクドゴールを破ることはできず。試合終了と同時に、ベンチにいたコクドの選手たちが雄叫びを挙げ、リンクになだれ込むセレブレーションを、うつろな瞳で見つめるクレインズの選手たち。

例年のプレーオフでは、困った時のベテラン主力頼みという傾向があるコクドでしたが、今季プレーオフ、殊にファイナルに関しては成長してきた若手や、渋め仕事人たちにある程度任せることができていました。例えば、プレーオフでは毎年かなりのアイスタイムを背負うことになる藤田がケガを抱えてのプレーとなっても、彼を4つめに配することで負担を軽減することができると同時に、クレインズにとっては4つめといえども全く気が抜けない布陣(好調の外崎、今に藤田。並のチームならトップラインも務められそう・・・)を相手にすることになっていたわけです。

もちろんクレインズの4つめも、ベテラン竹内を配していたわけで、それなりの豪華さはあったのです。しかし、今季クレインズのプレーオフでの数字を見てみると、サードライン以下の選手は守りに徹しているせいか、ほとんどスコアリングに絡んでいない(6試合で山野1ゴール、佐藤博史1ゴール、酒井1アシストのみ)。また、2つのラインから叩きだすゴールも、強力なPPで挙げるというケースが多かった。ちなみにファイナル5試合での計17点のうち、半数以上の9ゴールがPPでの得点によるものでした。

4つのFWラインを、はっきりオフェンシウ゛ラインとディフェンシウ゛ラインに分けるか否か? これも昨日書いた「ラインをシーズン通じて固定するか否か」と同様なお題目であって、それぞれにメリットとデメリットが混在します。よってどちらが優れているかなんて議論は所詮水掛け論であり、全てはケースバイケースである。ただし、ディフェンシウ゛なラインからゴールが生まれれば、そのチームにとっては大きなボーナスであることは間違いありません。

シリーズ敗退決定後、記者会見でクレインズの田中監督はこう語っていました。

「こういう結果になって、何をいっても言い訳にしかならないので、しっかり受け止めてチームを再建するしかないです。プレーオフで王手をかけても勝てなかったけれど、その差は小さな違いだったはず。ただ小さな違いといっても、それが一番の違いだったと思うのですが」

「釧路で3つ勝てていれば・・と気持ちがどこかでありました。で、本来の力が出せなくなって・・・それを乗り越えるだけの力が無かったということです」

その一方でコクドの選手が、ベテランから若手まで、最後の最後まできっちり動けていたのには、正直予想外でした(コクドの選手の皆さん、ごめんなさい)。コクドとしては、チームスタッフ、選手にトレーナーが一丸となって、「シーズン中にピークをどこに持ってくるか」ということに、ひとつの焦点を置いていたとのこと。1回めのピークは試合スケジュールがキツかった11月、2回めのピークは全日本選手権。しかし、全日本選手権では無駄なペナルティを連発し、クレインズの強力PPにしてやられるはめになった。

ただこの全日本選手権での苦い経験をもとに、コクドの選手は「とにかく無駄なペナルティをしてはならない」と、コーチ陣も選手も心に言い聞かせていたわけです。本当にシンプルで当たり前のことだったと思うのですが、それを実践する方は大変だったと思います。ともすれば、氷上での沸点低すぎに思われるパーピックでさえも「とにかく冷静にプレーして、ペナルティを少なくすることがウチにとっては勝利のカギなんだ。相手にPPのチャンスをやらなければ、ウチは勝てるんだ」と、繰り返していたことからも、それは明らかでした。

コクドでは、シーズン中に主力が長期欠場していた間に、普段重要な局面でプレーする機会がない選手が成長しているという話を、こちらでも以前にお伝えしました。そういった逆境を肥やしにする精神も、今季のコクドには生きていたと思います。またケガで休んでいた選手にとっても、大きな意味のある優勝だったようです。

「ここ4年間で一番報われた優勝だった。クレインズは素晴らしいチームで、そのプレーには本当に脱帽する思いだけど、自分としてはケガで3ヶ月プレーしなかったシーズン。最後はゴールも挙げられて最高の気分だよ」

そう記者会見で語るパーピックの右手は、しっかりとテーピングされたままでした。

で、会見終了後は、恒例の祝勝ビール掛け。「ペペ」こと河村が褌一丁で登場、外崎は水着にスイミングキャップといういでたちで、異彩を放っていました。

(写真は#40藤田キヨシ選手(右)と、ずぶぬれになった岩崎監督(左)。我々メディアも何度か危ない目に遭いましたが、ガラス戸でシャットアウトして事なきを得ました)


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by hockeyworldjapan | 2006-03-27 11:26 | アジアリーグ

ホームアドバンテージとは?

ホームアドバンテージには、いろんな要素があります。

まずは地元ファンの前でプレーできるという心理的要素。次に本拠地のリンクでプレーできるということで、勝手知ったる我が家でプレーするホームチームがやりやすいことは言うまでもない。ルールでリンクの寸法はおおよそ決められているものの、リンクによってはコーナーのRの具合であるとか、ゴール裏のボードの跳ね返りであるとか、はたまたサイドのボードの高さなど、かなり違いがあります。

また、氷の質も、リンクによって大きく異なります。例えば今日の東京地方の最高温度は15度。NHLクラスのアリーナとは異なり、外気が遮断しきれない日本のリンクの多くでは、外の気温や湿度がアップすると氷の質低下にすぐ繋がってしまう。特に北海道の速いリンクから本州の遅いリンクにやってきた時、選手たちは一様に「脚に来た」と口にするわけです。

NHLのプレーオフなどでは、逆にホームがアドバンテージでなくなるケースも往々にして見受けられます。家族や友人から試合のチケットを頼まれたりと、選手たちがホームならではの喧噪に巻き込まれるのは、よくある話です。NHLチームによってはホームシリーズであってもホテルに選手たちを全員宿泊させ、そうした喧噪から隔離させようと策を練ったり。あるいは、ホームでの期待があまりにも高すぎるため、それが選手たちにとって心理的プレッシャーとなってしまうこともあります。

さらに、試合の細部へと言及すると、ホームアドバンテージ=最終マッチアップ権を意味します。つまり、相手チームが出して来たラインに応じて、氷上に送り込む選手をチェンジすることが可能であり、それがコーチの腕の見せ所になるというわけです。

前置きが長くなってしまいましたが、今日のアジアリーグ・プレーオフ決勝第4戦は、まさにそうしたホームアドバンテージを、コクドがよく掴んでの勝利だったと思います。

試合開始直後、5オン3のPKと自らピンチを招いて早々に失点したコクド。その後もクレインズは、コクドのニュートラルゾーンのギャップが開き気味になったところをえぐるようにパスを通したり、スピーディにパックを持ち込んだりと、押し気味に試合を進めていました。

しかし、そこからがコクドの見せ場でありました。プラントのラインにはパーピックのライン、ミタニのラインには佐々木のラインと、まずはきっちりマッチアップ。そしてセンターを基軸に、出場させるラインを小刻みに変えて来たのです。状況に応じて選手を厳選し、緻密に組み替えられるライン。大事なフェイスオフの場面では、ウイングに代わってセンターの藤田を送り込み、フェイスオフでチェンジを命じられた時にもセンター2人で備えるような「スコッティ・ボウマン方式」の戦術も冴え渡っていました。

レギュラーシーズンを通して、ファーストライン、セカンドラインをある程度固定してきたクレインズに対し、ケガ人が出たこともあって絶えずライン構成の変更を迫られてきたコクドはある意味好対照です。どちらがいいとは一概には言えないと思います。ラインを固定すればコンピネーションに深みが出るでしょうし、ライン構成が日替わり状態だと選手はやりにくさを感じることもあるでしょう。しかし今日のコクドは、そうした経験が柔軟性という形で生きたようです。あれだけ、複雑にライン構成が入れ替わると選手が混乱し、メンバーオーバーのペナルティを起こすケースなど、NHLでもちょくちょく観受けられるのですが、この日のコクドに限ってそういうことはなし。コクドのチームスタッフ、選手たちの試合巧者ぶりが存分に発揮された場面でした。

そして、コクドは第1ピリオド4連続ゴールであっさり逆転します。

1点目はブルーラインを越えたところで、今がゆっくり状況を見極めて川口に横パス。二瓶次郎が守るゴールの空いたスペースを、川口がハーフスピードで流し込んだシュートが決まって、1−1の同点。

コクド2点目は、クレインズが攻撃していたところからのカウンター。コクド側ブルーラインからパックがこぼれるやいなや、増子、佐々木が素晴らしい飛び出しで、あっという間に2オン1。増子から佐々木へとパックが渡ってゴールが決まり、2−1と逆転。

その後もコクドの勢いは止まらず。ゴール前で外崎が倒れながらシュート、そのリバウンドを藤田が決めて3−1。さらに外崎がセミブレイクアウェイから、ゴール前左に切りんでのゴールで4−1。第1ピリオドにして、ほぼ試合を決めてしまったのです。

ただし、今季のクレインズはこれでしょげ返るようなチームでは決してない。第2ピリオド立ち上がり5オン3を含むPKを守りきると、佐藤博史のゴールで2−4に。

その後もクレインズは、DF選手が果敢にピンチインするプレーの連続で、コクド陣内を脅かしていました。しかしコクドもこのピリオド後半にパーピックがゴールを決め、再びリードは3点差。このパーピックのゴールはいろんな意味で凄かった。ユールがひとり持ち込んで放ったシュートのリバウンドがこぼれ、リムをつたって転がったところを、パーピックが押さえるやいなや振り向きざまに放ったシュートは、二瓶次郎が守るゴールのトップコーナーに突き刺さっていた。東伏見に詰めかけたファンから大きなどよめきが起こったのは、言うまでもありません。

しかし、3点のビハインドを背負ったクレインズは、第3ピリオドに意地を見せました。西脇がドライブして放ったシュートを、コクドGK菊地がブロッカーでセーブ。そのリバウンドを拾った伊藤雅俊が角度の悪いところから放ったシュートを菊地が止めきれずに、ゴールイン。さらにその後もゴール裏の桑原から、ゴール前に詰めたプラントへと繋ぎ、クレインズがあっという間に1点差に詰め寄りました。

試合終盤はコクドのペナルティあり、6人攻撃ありで、大攻勢をかけたクレインズでしたが、最後はパーピックのエンプティネットゴールで万事休す。コクドが6−4で第4戦を勝利し、これでシリーズは2勝2敗のタイに。明日(3月26日)東伏見17時開始の第5戦での決着と持ち越されたわけです。

第5戦もコクドにホームアドバンテージがあるわけで、コクドとしては自分たちの底力を見せる舞台が整ったという感じ。一方のクレインズは、チャレンジャーであるはずの立場が、やや横綱相撲に走ったきらいもありました。しかし試合後半では激しい追い上げを見せてくれましたし、第5戦ではまた違ったクレインズを出してくるはずだと期待しております。

最初にホームアドバンテージの話をしてしまいましたが、東伏見のリンクの遅さを考慮した上でも、脚の動きはクレインズの方がまだ余裕があるように窺えました。しかしコクドも主力はフル回転、ケガを押してプレーする選手もいたりと苦しい中で、外崎や佐々木、小原、神野といったメンバーがいい働きをしていたし、ベテラン主力FWたちもDFをカバーするために素晴らしい守りを見せていた。

「ウチは今季層が薄くなったとか言われていましたが、FW12人、DF8人を見てみても、一番選手が揃っているのはウチだと自負しているんです。今日も4つめまでちゃんと回せれば勝てると思っていました。外崎のゴールは大きいです。彼は今季クレインズ戦ではいい働きをしてるんです。ゴールに向かう気持ちがあるし、あとはチャンスを決めるだけだったところが、今ちゃんと決めてくれている。なのでチームにとってはいいプラスになっています(若林クリスコーチ)」

クレインズの方は、1−4となった場面で点を取りにいかねばならなくなって終始前掛かりな感じでプレーしていたため、この日の守りについては評価するのは妥当ではないかも。なので両チームの守りを比較対照するつもりは金輪際ないけれど、そうしたファクターを差し引いてもコクドのFWはよく守りに入っていたと思います。クレインズは、第2ピリオドにDF中島谷が故障退場。心配されましたが「大事をとっただけ。大丈夫です(中島谷)」とのことで、第5戦の出場は問題なさそうでした。

それにしても、両チームともトランジションの速いこと、速いこと。ファイナルなのですから当たり前といえば当たり前なのですが、試合としては本当に見応えのある内容でした。首都圏在住の皆様、明日(あ、もう今日ですが)は是非是非、東伏見にお運びください!
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by hockeyworldjapan | 2006-03-26 00:59 | アジアリーグ

ビデオジャッジが欲しい・・・

先日はWBC日本vsアメリカで微妙な判定というのがありましたが、まさにアジアリーグ・プレーオフセミファイナル第4戦ハルラvsコクドも、残念ながらそうした微妙な判定に左右される内容となってしまいました。

私としては、本当に口惜しくて仕方ない。というのもこの試合、途中まで内容にぐぐっと引き込まれて身体が思わず前のめりになるような、スリリングで素晴らしい展開だったのです。

ここまで、コクドの2勝1敗。もう負けられないハルラは、出足からアグレッシブに展開します。コクドも負けじと応戦し、序盤からエンドトゥエンドの非常に速い試合の動きが楽しめました。

実は今季、あまりハルラのホッケーをじっくり観る機会に恵まれなかった私ですが、この日の彼らは本当に素晴らしいプレーを見せておりました。ハルラのPPは、オタカー・ウ゛ェイウ゛ォダコーチのクラドノ方式とでもいうのでしょうか、チェコ人選手を中心に日本チームにないタイプのプレーを見せてくれるので、私は序盤からもう興奮しっぱなしでありました。自陣で味方DFがパックを持ってリグループしてる時に、すでにファーサイドにおいてひとりストレッチしている選手が、相手陣内ブルーライン上で必ずロングパスを待ち受けてたり。はたまた、アンブレラ陣形で、巨漢DFネドウ゛ェドが強烈スラップショットをズドーン、ズドーンと放ったり・・・。チェコ人選手だけではありません。いつの間にか、韓国人選手たちもチェコ人選手のスキルとパワーに引っ張られるような形で、個々の力をぐんぐん伸ばして来てるのが明らかでした。

その後のPKもすごかったです。コクドは5オン3の絶好のチャンスを1分以上貰っていたのですが、その間に一度もハルラGKキム・ソンベまで届くシュートを放つことができませんでした。というのも、ハルラの選手がみな身を挺して、どんどんシュートブロックに飛び交っていたからなのです。あれだけ必死の守りは、日本リーグ、アジアリーグを通してウン十年観ている私でも、そうお目にかかれる代物ではありません。

逆にコクドがSHとなった際に、カウンターで2オン0の絶好のチャンスを迎えた時も、パーピックから鈴木貴人とゴール前でパスが渡ったのにもかかわらず、GKキム・ソンベが体勢を崩しながらスティックで、鈴木が浮かせたパックをクリアしたのには、思わず息を飲みました。また、コクド#33パーピック、ハルラ#55ネドウ゛ェドの巨漢同士のマッチアップには、東伏見のファンから大きなどよめきが聞かれてもいました。

第1ピリオドは0−1とリードされて終わったハルラですが、第2ピリオド序盤は流れをつかんで、いい攻撃を展開していました。コクドはプレーオフでは例年通り、スロットエリアの守りをぎっちり固めてきているのですが、それでもハルラは何度も分厚い攻めでコクドGK菊地を責め立てました。しかし、この日の菊地はスーパーと言っていい出来でした。何度もハルラの決定的なチャンスを止めまくったのです。

そして、コクドは神野のゴールで追加点。コーナーの宮内からフィードされたパックを、神野はハルラGKキム・ソンベのグラブサイド上を狙いすまして決めていました。コクドのシューターたちは、かなりこのキム・ソンベのグラブサイド上をウイークポイントとして狙っていたようでした。

2−0として、いったんはコクドが試合の流れを掌握したかにみえた第2ピリオド後半。コクドはペナルティ続きでSHという場面で、ハルラはまたまた分厚い攻めを展開。ここでいったんゴールを決めたかに思われた。ハルラの選手たちはゴールが決まったと認識し、両手を掲げて喜ぶ仕草を見せたが、ゴールランプはつかないし、レフェリーもゴールのシグナルを見せず。試合はそのまま続行され、ルースパックを拾ったコクドは一気に2オン0の形でカウンターアタック。最後は今洋祐が決めて、試合は一気に3−0と開いてしまいました。

ここで、猛然と抗議に出たハルラベンチ。ハルラ側の主張としては、ゴールネットに穴が空いており、そこからパックがゴールの外に抜けてしまったとのこと。しかしゴールジャッジもレフェリーも、ノーゴールを宣告しているという理由で、この判定は覆されることはなかった。その後は試合再開となったが、ハルラ側は選手たちを氷上に送り込まずに、「まずはゴールネットの穴を確認して欲しい」と訴えた。しかし外国人レフェリーとの意志疎通の問題もあってか、このハルラ側の行為は試合遅延と見なされ、ハルラは2回のマイナーペナルティを課されてしまいました。

その後、この試合の清野勝スーパーバイザーが氷上に降り立ち、まずはハルラベンチに状況を説明。そして「このままでは、放棄試合になってしまう」との旨を通告したそうです。その後、コクド側のゴールネットの穴を確認。そしてオフィシャル席に戻り、清野氏は「いったん製氷して、試合が止まった第2ピリオド19分4秒から再開する」との決定を下したのです。

製氷機がリンクを走る間に、オフィシャル陣は憤然としているハルラ陣営に説明を続けていました。これには日本アイスホッケー連盟会長富田正一氏までが説明に乗り出す姿も目撃されていました。最悪、この判定を不服として、自ら試合を放棄するという選択肢もハルラには残されてはいましたが、製氷が終わった後にハルラ選手たちがリンクに現れた時には、東伏見のファンからは大きな声援が飛んでいました。

しかし、ハルラにとっては、抗議の際に課されてしまった試合遅延のペナルティ2つは重かった。結局このマイナーペナルティ2つで1回ずつ失点を許してしまい、スコアは5−0に。これで試合の行方は決まってしまいました。

にもかかわらず、最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けるハルラの動きには、これまた心を揺さぶられるものがありました。しかし再三のハルラのチャンスに対しても、コクドGK菊地は、読みも動きも冴えまくっていました。この菊地の守りがなければ、こうした試合展開であっても、この日のスコアはかなり競り合いだったかも・・・と思うほど、菊地は冴えていたのです。

ですが、最後の最後でその菊地が守る砦を、ソン・ドンファンがこじ開けました。コクドDFにびっちりマークされながらも、そのDFを道連れにするかのように力を振り絞ってのゴール。今季以降は、兵役で向こう2年間チームを離れることが決まっているソン・ドンファンだけに、その思いのたけを預けるようなゴールでした。ハルラには、他にキム・キョンテとチャン・ジョンムンの2人が兵役でチームを離れることになるそうですが、ソン・ドンファンの場合は実戦演習ではなく、ほぼ公務員のような形でのオフィスワークとなるため、たまのホッケー練習は可能でもアスリートとしてトレーニングを継続していくことは不可能に近い、と言われているそうです。

結局試合は5−1でコクドが勝利。コクドはプレーオフファイナルへと駒を進めました。

それにしても、なんと後味の悪い試合でしょうか。試合後、清野氏は中断時の一連の動きを報道陣に説明した後、こう語りました。

「こういう時のために、ビデオジャッジがあれば・・・と思いますよ。しかし経費の都合上、なかなかそういうわけにもいきませんでした。ただ来季からはこうした事態も考慮して、プレーオフだけでもビデオジャッジの導入を検討したい」

また清野氏自身が確認したゴールネットの穴(2カ所空いていたという説もあり)については、「実際に穴は空いていました。各ピリオドの頭には、必ずラインズマンがゴールネットに穴はないかチェックをしていますが、ゴールネットは選手のスケートやスティックで破けることがあります。ネットが切れていたことは事実ですが、ゴールジャッジにレフェリーがちゃんと確認をしてゴールを宣告したからには、ゴールは認められることになります」と説明していました。

もちろん、ビデオリプレイが利用できれば、それに越したことはありません。ただ一見万能に思えるビデオリプレイも、プレー内容と撮影角度によっては判断できない状況もあることも事実です。NHLの場合でも、ビデオジャッジに持ち込まれたけれど、結局ゴールなのかノーゴールなのか判定不可能とされて、その結果ノーゴールとされているゴールもあるということだけ、付け加えておきましょう。

ゴールラインを割ったか否かは、基本的にはゴール真上のカメラの映像による判定になるのですが、ゴールラインを割る瞬間に選手の身体がパックに覆いかぶさってきた場合は、その判定は難しくなります。またNHLでは、シュートがハイスティックによって決まったのか、あるいは選手のキックモーションによって決まったのか、というところまでビデオ判定に持ち込まれるのですが、それだけの設備を整えるとなると、かなりの経費が必要になります。NHLの場合、場内数十カ所のカメラポジションがあるからこそ、そうしたジャッジが可能になるのですが、これをアジアリーグで再現しようとすると、かなりの妥協案による実施となることは否めません。そこだけは、留意しておくべきだと思います。

で、結局何が言いたかったかと言うと、ハルラのホッケーがここまで進化を遂げたのには敬服したいということ。今回のジャッジの一件については、ハルラにとっては不運としか言いようがない(コクドにも「あれはゴールだった」と発言している選手たちがいました)のですし、ゴールネットの穴の確認や、会場のファンへの説明も含め、今後の対応策が不可欠ということ。さらに、この一件が注目を浴びすぎてしまうことで、ハルラの素晴らしいホッケーがその影に隠れてしまわないように、の3点でした。

長い試合で疲れ気味のため、乱文お許しください。(バタッ)
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by hockeyworldjapan | 2006-03-15 01:53 | アジアリーグ

ポディーン@築地&浅草

昨日、健闘むなしくプレーオフ敗退となった日光アイスバックス。vsコクドとのシリーズは3連敗ではありましたが、いずれも熱のこもった好試合となりました。特に第3戦は、1−4とされてから1点差にまで詰め寄る挽回ぶり。最後は6人攻撃にてコクドゴール前を襲来続ける素晴らしい戦いでありました。全日本選手権にはクリス・パラダイス選手も復帰することでしょうし、かなりのいい成績が望めるのではないでしょうか?

で、本日から数日間はオフとなったバックス。ショーン・ポディーン一家(本人、妻シェリーさん、娘アナちゃん)は、この短いお休みを利用して東京観光を楽しんでいます。

すでにもう何度も東京は来ているポディーンの常宿は、新宿のとあるホテル。外国人(もしくはアメリカ人)となると、東京だと好きなエリアは六本木というのが定石なのですが、ポディーンの好きな場所は実は新宿だったりするわけです。それも高島屋でショッピングして、歌舞伎町の昭和レトロバー、もしくは思い出横丁で一杯・・・というスタイルは、日本のサラリーマンとなんら変わりはありません。

すでに、両国国技館や浅草、東京タワーなどの観光地の基本は抑え済のポディーン一行、今日はこれまた東京観光の定番、築地市場に足を運びました。朝5時すぎにホテルを出発し、朝のマグロの競売には間に合わなかったものの、そこらじゅうにゴロゴロ置かれてる巨体マグロにさすがのポディーンも口をあんぐり。無類のトロ好きでもあるポディーンは、仲買商たちのマグロ解体ショーをするどい眼光で見つめてるかと思いきや「あ〜、あの大きな切り身にかぶりつきたい」などと呟いておりました(笑)。c0012636_18112825.jpg(写真はそのマグロ解体現場のポディーン)

そして場外市場エリアのお寿司屋さんで朝ご飯。寿司ネタにバックスの選手&スタッフを喩えるとどうなるか? という話になり、たいそう盛り上がりました。(ちなみに土田選手「中トロ」、春名選手「大トロ」、井原選手「あなご」、若林コーチ「ガリ」、上野監督は「わさび」byポディーン)

朝食後、ポディーンは友人夫婦のために浅草を案内しました。

c0012636_18105571.jpg雷門ではまず得意の自由の女神ポーズで記念撮影。ポディーン曰く「オレ、またオレンジ着てるなあ(バックスへの忠誠心、大したものです)」。

そして過去2回のお参りで2回「凶」を引いてしまったおみくじは、なんとこの日は大吉(!)と見事にリベンジ。これでバックスの全日本選手権は期待できるというものですね。そして仲見世では、まだこの時間にホテルで爆睡中の愛娘アナちゃんにおみやげ購入(キティちゃんの提灯でした)と、マメマメしさを発揮します。

浅草寺の後は、吾妻橋のアサヒビール本社ビルへ。ユニークな形のこのビルは、ポディーンが好きな東京名所のひとつでもあります。ビル階上のカフェにて朝10時から黒ビールで乾杯。宿泊先のホテルには12時にもう戻ってきましたが、充実の半日観光だったようです。
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by hockeyworldjapan | 2006-02-20 18:13 | アジアリーグ

北米時代のヒエラルキー

東伏見でのプレーオフ第2戦。思わぬ展開の試合となりました。

先制したのはアイスバックスでした。立ち上がりはペナルティを連発してPKの場面が続く苦しい展開だったのですが、まずは15分45秒。試合序盤からキナ臭い感じだったポディーンとパーピックが取っ組み合いになり、パーピックの怪力にポディーンが転倒。ポディーンはダブルマイナーペナルティを課せられ、バックスにPPのチャンスが訪れました。

そして、バックスはこのチャンスに、スロット上の木村ケビンからゴール左の井原にうまく繋いで1−0とリード。さらにそのわずか23秒後に、ゴール前に切り込んだ高橋が叩いて、あっという間に2点のリードを奪ったのです。

しかし、王者コクドもすかさず反撃。そのまた23秒後の18分11秒に鈴木、さらに18分54秒に佐々木圭司が決めて、試合を振り出しに戻しました。

第2ピリオド6分44秒、コクドは左サークル手前付近からの藤田のパスを、逆サイドにピンチインした宮内が叩いて、3−2とついに逆転。しかしバックスもその後踏みとどまり、第3ピリオド半ばまでこの1点差の膠着状態が続いていました。

試合が決定的になったのが、11分21秒。両チーム1人ずつペナルティボックスに入っての4オン4という局面で、オンアイスとなったジョエル・パーピック。この日は、元スタンレーカップ獲得のNHLコロラド・アバランチの先輩、ショーン・ポディーンに手を出したことも追い打ちとなり、バックスファンから激しいブーイングが彼には浴びせられていました。ここでニュートラルゾーンにてパーピックがパックを持ち、徐々に加速していくと、バックスファンのブーイングはより激しさを増していったのです。しかしそのブーイングを突き破るような見事なドライブを見せたパーピックは、スロットエリア好位置に入り込んだ鈴木に絶妙なフィード。そして、鈴木がこの日2ゴールめを春名のスティックサイドに放り込みました。粘るバックスを引き離す大きなコクド4点目。バックスの選手もファンにとっても、この失点はかなり堪えたに違いありません。その後緊張の糸がぷっつりと切れてしまったバックスは、第3戦に繋がらないまずいプレーを連発。最後は2−6というスコアで敗れたのです。

ジョエル・パーピックという選手、初めて日本で見たときにはスケーティングはゴツゴツだし、ゴールセンスがあるとは思えなかったし、外国人らしからぬ謙虚さと真面目さがあるとは聞いていたのですが、コクドで活躍するには正直「どーでしょうねえ・・・」と思っていました。北米時代の数字を見ても、明らかに「エンフォーサー」の部類。乱闘したらミスコンが待ってる日本のホッケー界において、果たして彼の獲得は有益なのだろうか? と首をかしげたものでした。

しかし、日本のプレーに慣れるにつれ、そのフェイスオフでの強さとか、そのハードワークとか、なによりそのサイズを利した各ゾーンでの圧倒的存在感とか(コクドFWの小粒化も起因していますが)、彼のよい部分がどんどん発揮されるではありませんか。そして、このパーピックの存在の大きさも相まって、日本に帰化していたクリス・ブライトをコクドは放出するまでに至ったわけです。

ここまで行くと、パーピック礼賛記事を書いてるようなのですが、この記事の趣旨はそうではありません。コクドファンならずとも、他チームファンの方もお気づきでしょうが、パーピックがキレると目に余る。それは、リンクで相手選手に吐きまくる言葉であるとか、小さい相手に対して唆す態度をとったり。まあこの手のアジテーションは、北米では日常茶飯事なのかも知れませんが、日本では大きなクエスチョンマークが付きがちなプレーであると言えるでしょう。

その行為を目のあたりにし、我慢ならないとばかりに「いい気になるなよ」と水を差しに行ったのが、なにを隠そうショーン・ポディーンだったのです。不思議なことに、試合中では対等にやり合って見えるポディーンとパーピックですが、試合後の2人とはかなりの好対照。試合中の自らの振る舞いを恥じ入り、反省心さえ表情に浮かばせたパーピックがそこにいるのです。つまり2人には、日本でいう先輩後輩のような階層の違いが歴然と存在しており、それはもうまざまざと北米ホッケー界のヒエラルキーが感じられるほどでした。

で、なにが言いたいかというと、パーピックのああいうプレーは勿体ないね、ということ。せっかくチームに貢献しているのに、日本のファンの前ではああいうラフプレーや振る舞いばかりがクローズアップされてしまう。彼がいつか日本を去って「ジョエル・パーピックとは?」と語り継がれるときには「ああ、あのグーンね」で終わってしまう。それじゃあ、ちと勿体ないんではないの? と思ったまで。

最後にバックスサイド情報なのですが、第1戦に続き、後悔先に立たずのシーンがあったかと・・・どこかでタイムアウト取ってほしかったのよね〜。2−1にされたシーンでも、2−4になった後でもいい。どーせ使わないよりも、使えるときに使ってほしかった。試合後、若林コーチは「プレーオフに出し惜しみは禁物ですね」とひとこと。まったくその通りかと思います。

さて余談ですが、レギュラーシーズンを堂々の2位でフィニッシュしたアニャンハルラは、東伏見に偵察要員を派遣しておりました。それもGMヤン・スンジュン氏自ら東伏見の階上に昇り、デジカメを回すという気合の入り様。しかもヤン氏、持参した三脚は使用せず、試合が白熱してくると立ち上がってビデオ撮影に没頭しておりました。

私も経験があるのですが、三脚を使用せずに1試合通しでデジカメを手回しなどすると、デジカメを支える手がしまいには疲労からぷるぷると震えてしまうもの。実際撮影した映像は、果たしてハルラのスカウティングにうまく運用できるのだろうか? と余計な心配をしてしまいました。今日もまた偵察でしょうかね?
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by hockeyworldjapan | 2006-02-19 13:16 | アジアリーグ

後悔先に立たずという言葉はありますが・・・

昨日は、東伏見でプレーオフ・ファーストラウンド第1戦、コクドvs日光アイスバックス戦を取材してまいりました。

試合は緊迫した内容からOTにもつれましたが、ゲームを決したのはユール・クリスのブレイクアウェイからのゴール。時間にしてOT突入後わずか53秒でした。

4オン4でのOTを前に、バックスのアシスタントコーチである若林弘紀氏は、「OTでは最初の1分で勝負が決まることが多いから、気をつけるように」と、チームに注意を促したんだそうです。しかも、その後4オン4の立ち上がりとして、気をつけるべき項目を数点列挙したんだとか。ただし、あの展開からのユールのゴールは想定外だったらしく、列挙した点から漏れていたんだそうです。

実際、OT開始となって最初にSOGを記録したのはバックスの方でした。0−1、1−2の展開から追いついたチームとして流れも持っていました。そこでDF松田がひらりとコクドの守りをかわして相手ゴール前に内側から切り込んでいってのシュート・・・ここまではよかった。

ただ、4オン4やSHという状況の場合、シュートは必ず枠内に入れなければならない。枠を外して跳ね返ったパックを相手に取られ、カウンターを食うというケースを警戒するためです。ここで松田はうまくシュートを枠内に入れたのですが、そのリバウンドが大きく出たところをうまく河村が拾い、ブルーライン近くまで浮いていたユールにフィード。結果、ブレイクアウェイからのゴールとなったわけです。

「4オン4だったので、シュートは緩めに相手GKに当てるように、と言おうかと思ったんですが・・・(若林氏)」

後悔先に立たずというところでしょうか。いや、もちろん負けは負けですが、そこまで緻密なホッケーが可能になってきたバックスを、まずは讃えたいとは思います。課題とされていたスペシャルチームについては、シリーズ前の集中練習が実り、この日は井原から飯村への見事なパスからのPPゴールもありました。プレーオフでは新米のバックスにとっては、1試合1試合が経験。こういう苦い経験を次にどう生かせるか? ということで、次の試合に期待したいです。

コクドについては、ユールのゴールなどは、さすが試合巧者という印象が相変わらずですが、どうも試合を通してイライラが募っている感じでした。ケガ人が戻ってきたのはいいことなのですが、その戻ってきたパーピック、佐藤翔らのアドレナリンがどうも違う方向に行ってしまい、コクドのペナルティボックスは大賑わいに。2ピリ途中では、2−1という緊迫した展開にもかかわらず、このコクドにとって大切な戦力の2人がしばらく出場機会を与えられず、お灸を据えられるというシーンも見受けられました。というわけで、試合には勝利したものの、決していい内容ではなかったコクドだけに、土日の第2、3戦はかなり気合を入れ直してくるものと思われます。

それにしても、目についたのはバックスGK春名の好調ぶり。この日は28セーブ3失点と数字では平凡に見えますが、その内容はかなり神がかってました。唯一首をかしげたくなる失点は、コクド2点目の小原のゴールくらいでしたが(右フェイスオフサークルからのタイミングの早いシュート、春名はファイブホールを抜かれる)、それも逆サイドにいたコクド選手を警戒してのポジション取りの過ちがあったとのこと。つまり、好調なだけに周りがよく見えていて、それが災いとなってシューターに集中が足りなかったんだそうです。(不調のときは、パックキャリアに集中するだけで精一杯なのだとか)。

一連の国際試合でもその春名の好調さから、コクドGK菊地の出番は名古屋での試合のみに限られてしまったほどでした。この試合でも、バックスゴール前ではかなりの混戦となったのですが、実に状況がよく見えている感じ。新横浜でのチャレンジカップから、長野カップと、5日で3試合を難なくこなした春名は、このプレーオフファーストラウンドのハードスケジュール(今度は4日で3試合)も、「全然問題ないです」ときっぱり。コクドとしては、春名をいかに攻略するかがひとつの焦点となるでしょうね。

それにしても、東伏見の入りが少なくって寂しかった〜。(887人です。苫小牧は1241人動員でした)リンク外には屋台も出てましたし、膝掛けや座布団の貸し出しもやってます。首都圏在住のみなさま、土日はお誘いあわせの上、ぜひぜひ東伏見までお出かけくださいませ。
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by hockeyworldjapan | 2006-02-17 09:59 | アジアリーグ