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ダックス買収に思う

断片的ではあるけど、バブルから清浄化の兆しではあります。

93年にエクスパンションチームとして、NHLに加盟したアナハイム・マイティダックスが、ウォルト・ディズニー社から地元億万長者の手に売却されました。買収金額は、ダックスとそのファームチーム、練習リンク、チーム名「マイティダックス」によるグッズ販売権を加え、計7500万ドルと報じられています。

新オーナーとなるのは、オレンジ郡在住の億万長者、ヘンリー&スーザン・サムエリ夫妻。サムエリ氏は半導体関連会社で同地区アーバインを基盤とする「ブロードコム(昨年年商24億ドル)」の創業者のひとりであると同時に、2003年12月よりダックスの本拠地であるアローヘッドポンドの運営会社も所有しており、今後はNBAチームの招聘も目論んでいるとか。さらに地元オレンジ郡では、過去5年間で1億6000万ドルもの寄付実績があるという大物だそうです。買収価格7500万ドルの大部分はキャッシュでの支払い、さらにチーム負債の一部も負担するとのことですが、一時はディズニー社がダックス売却価格を1億5000万ドルに付けていたことから考えれば、お値打ち価格(なんて、ほざいてみたいですわ、全く)だった模様。2003年スタンレーカップ決勝のホームゲームは、全試合を観戦した経験で「感動した!」という夫妻は、同じくダックス買収に名乗りを挙げていたハワード・ボールドウイン氏(元NHLハートフォード、ピッツバーグのオーナー)の提示額を上回り、新オーナーの座についたのです。

一方、これまでダックスを所有していたディズニーですが、93年にダックスを創設し、96年には同アナハイム地区にMLBチームのアナハイム・エンジェルズを買収。しかしエンジェルズは2年前に既に手放しており、ダックスについても、ディズニー本体の株価低落を防ぐ手段として、過去6年間チーム売却の方針を打ち出していました。

そう考えると、ディズニーとしては、両チームを抱えるメリットを十分享受できずに手放したように思われるのですが、実は全くそうではない。アナハイムにおけるテーマパークの拡大(ディズニーランドの隣に新たにディズニーリゾートを建設)を控えたディズニーとしては、両チームのオーナーたることで、アナハイム市との関係を強めたかったという背景があったのです。

さらに忘れてならないのは(ホリエモンが先日TVでも言ってましたが)、ディズニーがABC、ESPNを傘下に保有するという背景。その恩恵により、かつてNHLは市場最高の米ネットワーク放映権料(5年6億ドル)を結ぶことにも成功していたのですが、ディズニー側としては新チャンネル「ESPNウエスト」立ち上げ後のコンテンツとして、エンジェルズ&ダックスに大きな期待を寄せていたという裏事情もあったのです。
しかし1998年、この新チャンネル立ち上げ計画は頓挫し、ディズニーがこの双子の赤字(=エンジェルズ&ダックス。ダックスはちなみに昨季は3100万ドルの赤字)を抱える正当性が消滅したのだとか。

そして翌99年、ディズニーは、エンジェルス、ダックスの両チームをついに売りに出したのです。当時、実際にサムエリ氏率いるブロードコムにも買収話を持ちかけていたそうです。当初ブロードコムは、ディズニーに双方向放送(TV放送中にチケットやグッズを買える)放映権の話を持ちかけたそうですが、ディズニー側から「チーム買収はどうか」と逆提示されたのだとか。また2002年、売却話がうまくいかないディズニーは、いま日本でも世間を賑わせているリーマンブラザーズに協力を仰ぎ、いずれかのチーム単体でも売却を進める態度を表明しました。そして2003年エンジェルズ売却(買収価格1億8350万ドル)に至っていたのでした。

ディズニーがNHLにもたらしたもの。それは「飛べないアヒル」シリーズの映画だけではなかったはず。ダックス1年目などは、スコアボードにピーターパンやティンカーベルが飛び回り、そりゃ「魔法の国」的アプローチを全面に押し出していたのです。そしてスタンド通路には、パレード時のダンサーよろしく笑顔を絶やさないチアリーダーたちが待機していた。私個人としては「ま、こういうのもアリかな?」という割り切ることによって、好感も嫌悪感も抱かず至ってニュートラルに受け止めていたのです。当時はリーグ拡大によって新しいものが「雨後のタケノコ」状態だったので、特に大きな衝撃も感じませんでした。ただカナダ純粋培養で年季の入ったホッケーファンにとっては、この雰囲気は違和感大ありだったに違いないと察します。(もちろん「アリーナ内へのサイン持ち込み禁止」だけには、猛反発した私ではありました。それではもはや「魔法の国」ではなく「独裁者の国」ですわ)

ただ、その目新しさという魔法によって、ディズニーランド帰りのカナダ人一家などが面白がって見に行っているうちはまだよかった。最初5年間はソールドアウトが続き、マーチャンダイズ販売でもリーグ上位をキープしていたダックスは、NHLの賓客的位置付けを誇っていた。しかし一種の秘境的楽しさが失せた後、このかつて優良フランチャイズは、空席だらけの赤字チームに転落しまったのです。

LAタイムスの古参記者、ヘリーン・エリオットは「レーザーショウにチアリーダーという試合でのショウアップ方法は、カナダのチームでも取り入られ始めた。それにアイズナー氏が当初提唱していた『PS戦の導入』に至っては、当時こそ酷評されたが、現在NHLでは導入へと動いているではないか」と指摘しています。結局カナダのホッケー伝統主義者たちの反駁に勝てず、時代の先を行き過ぎてしまったのが、ディズニーの敗因だったのかも知れないと。「ビジネスでなく、純粋にホッケーをより面白いスポーツに進化させたい」という凌雲の志が果たしてアイズナー氏にあるのか? あるいは、PS戦導入を叫ぶ前にアイズナー氏はホッケーを知り尽くしているのか? という部分が、おそらくホッケー伝統主義者たちには引っ掛かっていたんでしょうね。

話はサムエリ氏の買収に戻りますが、個人的にはいい話だと思います。ロックアウトの恩恵でチーム買値が下がったのも、新オーナーにとっては朗報だったし、なによりアナハイムからチーム移転の危険性が当面は消えたわけですから。

それに桁外れではあるものの、大会社が手を引き、ホッケーというスポーツと恋に落ちた個人オーナーがチームを買うという現象。これも時代の輪廻でしょうか。10年間バブルに踊らされた後、徐々にNHLは平静を取り戻しつつあるのかな? と考えさせられるニュースのひとつでした。


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by hockeyworldjapan | 2005-02-28 13:19 | NHL overall

シラケムード濃厚。でも真相は闇の中

恥の上塗りってこのことかな〜と思います。

何かといえば、2月19日の会議決裂後のNHL、NHLPAの親玉同士の応酬であります。罪のなすり付け合い以外の何でもない。どのメディアもかなり呆れたんでしょう。グレツキーの談話を最後に、この会議詳細については続報が出て来てません。

ベットマンNHLコミッショナーは、NYのラジオ局とのインタビューに応じ、2月19日の会議では、NHLPAに「一杯食わされた」と批判。PA側が妥結に至ると見せかけて結局交渉は決裂し、NHL関係者全員に恥をかかせたというのがその趣旨であります。PAの親分グッドナウ氏も当然反撃声明は出してますけど、もはや子供のケンカレベル。なのでここでは触れません。ご興味のある方のみ、元記事をご参照ください。

そして、その会議の参加者のひとりであるグレツキーは、アメリカのメディア(NYポスト:なぜか元記事リンク切れ、NYのラジオ局、フェニックス地元紙)にコメントを残しています(カナダのメディアは後追い記事のみ。グレツキーの場合、NYレンジャーズ行きトレードのニュースも、引退決意の時も同様に、アメリカ報道主導でした)。

「19日の会議にはPAから声がかかったんだ」というグレツキー発言では、ベットマンNHLコミッショナー同様、PAの策略を示唆してると注目されたようですが、それ以外にもこうも語っています。
「会議中、マリオと僕はリーグを代表して交渉する権限は持ってなかった」
「マリオと僕は、自分たちの役割が、妥結に至るための数字を選手側から出させるよう、協力することだと信じていた」
「会議が開始し、僕はトレバー(リンデン)とビンセント(ダンフース)を連れ出し、両陣営の差をどう埋めたらいいのかと彼らの意見を求めた。すると2人は調停、ルーキーキャップ、交渉権保有オファー(Qualifying offer)について決まるまでは、サラリーキャップの数字は議論できないと言ったんだ」
「率直に言って自分は関与したくなかった」

結局彼もわざわざNYに出かけたのに合意に至れず、プライドを著しく損なわれたフラストレーションを吐き出したのに終始しています。気持ちは分かるんですけどね・・・

カナダのメディアはこの一連の報道には、かなりシカトを決め込んでる。反グレツキー派で知られるカナダ全国紙のグローブ&メイル紙のデビッド・ショルツ記者(カナダ=グレツキー礼賛とは限らない。グローブ&メイル紙とグレツキーとの遺恨は結構深い。コヨーテズの赤字問題を暴いたのもこのショルツ記者)が食いついて、続報記事でも書くかな? とほのかに期待していたのですが、それすら出て来ない。

実際カナダではすでに、グレツキー関連では、「これで世界選手権@オーストリアに、グレツキーがカナダ代表GMとして行けるじゃないか」という話題に切り替えてます。みんなもう「付き合いきれない」とでも考えてるのでしょうか?

ちなみに2月19日の一連の報道混乱については、THNが謝罪記事を載せています。謝罪する姿勢は買いたいのだけど、これを読んでも真相は闇の中ということに変わりはない。

3月1日にNHLはオーナー代表会議、PAもトロントで選手に対する説明会が開催予定。その翌日には代理人たちに対して、PA側からの状況説明が実施されるとか。19日の結末に納得が行かないであろう選手たちも、月曜夜にトロントで夕食会を実施し、翌日のPA会議に備えるんだそうです。19日会議の謎がこの期間に追及されることは間違いなさそう。それまで真相は闇の中というわけです。とはいえ、何らかの箝口令も敷かれることでしょうから、全貌が暴かれることはなさそうですが。

そんなことしてるうちに、ゲイロード、ナッシュビルアリーナの名称権から撤退というニュースが入ってきました。20年800万ドルの名称権契約を保有していたゲイロードエンターテイメント社でしたが、アリーナ名称権から撤退するとともに、プレデターズの保有株式も同時に手放すんだとか。プレデターズは、向こう5年間違約金をゲイロード社から受け取ることで妥結しているようですが、今後新スポンサーを探すことは困難の極みという市場状況だそうです。

アメリカでは、「ミラクルオンアイス25周年」で今頃盛り上がっていたはずなのですが・・・非常に皮肉な顛末としか言いようがありません。
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by hockeyworldjapan | 2005-02-24 08:18 | CBA

大市場vs小市場

大市場vs小市場。永遠なる課題でありますなあ。

グレ様&マリオも参加した2月19日のNHL労使交渉会議。この2人が、その会議に至るまでに水面下で糸を引いていたという噂は、どうやら事実らしい。

2人の所有するチームは、共にアメリカの小市場チーム。例えば、マリオの所有するピッツバーグ・ペンギンズの社長ケン・ソーヤーは「(NHL提案の)4250万ドルというサラリーキャップを持ってしても、最初の数年ウチは苦しい財政となるだろう。長期的には改善されるとは思うが」とコメントしている。ただ、オーナーのマリオ自身は「ベットマンコミッショナーを信頼している」という姿勢を表向きには打ち出していた。一方、グレツキーが一部所有するフェニックス・コヨーテズは、シーズンチケット保有数たった2000という報道もあるほど、郊外の新アリーナに移転して以来観客動員で不振を極めるチームである。低め天井のサラリーキャップを欲する一方で、このままホッケーの存在が希薄化すると真面目にチーム存続だけでなく、アリーナを中心に開発した都市計画全体まで共倒れだ。そんな深刻な事情をコヨーテズは抱えている。

そんな事情も手伝ってか、グレ様はマリオとともに、同類の小市場チームを妥結に取り込むロビー活動に勤しんでいたと言われている。つまり2つのチームのオーナーが会議に参加した背景は、多くのメディアが書きこぞったような「この2人のオーラで奇跡を起こせ!」というハリウッド的趣旨のものだけはなかったのだ。(グレツキーは、公には自分のそうした役回りについて語りたがらなかったそうだが)

その一方で、2月19日の会合実施をNHLベットマンコミッショナーにせっついたのは、NYレンジャーズ、デトロイト、フィラデルフィア、トロントといった、一連の大市場チームのオーナー陣だった。これらのチームは、シーズンを開催すれば儲かるのだから、開幕したいというのは至極当然である。小市場と大市場の統一見解の下、妥結に向けて動き出したNHLだったが、そこで猛反発したのが、フロリダ、ナッシュビル、エドモントンといった小市場強硬派。実際にナッシュビルのオーナー、クレイグ・リオポルド氏は、NHLの最終提案で収入と選手年俸のリンクが除外されたことに激しく反発していた。実際にNHLは19日会合ではサラリーキャップの最低額提示を取り下げていたし、それがこうした小市場強硬派からの反発に対応したものであることは容易に察することができる。つまり、グレ様&マリオのロビー活動むなしく、こういうチームを説得しきれなかったわけである。

オーナー側も選手側も、二極化がこれだけ進んでいる今、ひとつのシステムでは誰も満足しない。私としては、これ以上この二極化を助長するシステムだけは次期CBAには盛り込んで欲しくないと思ってはいた。金持ちチームのゴリ押しによって前回CBAが妥結した背景もあって、今回は数の上でも優勢な小市場チーム寄りの考えを持っていた私ではあるが、小市場チームの要求を聞き続けているだけで、リーグ全体の経営は果たして改善するのか? という疑問も正直ある。

そういうチームを救うには、収入分配策、支出抑制策は確かに必要だ。ただそうした待遇を全てモラトリアム的に与えていいものだろうか? 誤解しないで欲しい。ほぼ恒久的に援助すべき部分があるのは事実である。たとえば市場のサイズはどう転んでも小市場チームにとっては克服できない障害である(その根底には、その市場にチームを与えたのは誰か? という問題がある。ただチーム営業権を与えた限り、その張本人、つまりNHLが責任をとるべきである。またそのチームを、オーナー会議で承認した他チームも同罪)。なので、市場サイズに見合った収入分配はあくまで必要だという私の考えは変わらない。

ただしそんな背景はあるとしても、頑張れば改善できる部分(たとえばシーズンチケット販売数)での努力を怠っているチームに対しては、ある程度の猶予期間を与えるのはいいが永久に援助をすべきなのだろうか? と思う。各フランチャイズには異なる歴史があり、各地区のファンの成熟度も当然違う。ただ、チーム設立から数年が経過しても一向に経営が改善しないチームに対しては、鞭打つ制度も必要である。

例えばNHLは19日提案でチーム年俸最低額を取り下げた。おそらくこれは、収入と選手年俸のリンクを取り下げたことへの対応措置ではあると思うが、個人的にこの最低額取り下げには猛反発したい。いくら経営状態が悪いからといって、チーム年俸が他チームの数分の1で、いつまでたっても1軍半のようなロースターなんて、ファンがそっぽ向いて至極当然だからだ。こういう制度には、もし実施するにしても期限付にしないと、そのチームはこの制度に甘え続ける。そしてそのロースターはよぼどのビジネス才覚のあるGMに恵まれない位限り、永遠に1軍半のままである。

私はどちらかというと、NHLベットマンコミッショナーに対しては、批判的ではあったと思う。ただ彼が実施した過去の政策には、いい内容もなかったわけではない。例えば、カナダのチームに対する援助策がそれだ。カナダドルの価値が極度に落ち込み、スター選手が続々とアメリカのチームに流れてしまう窮状を、ベットマンコミッショナーは「シーズンチケット販売で一定数を達成すれば、NHLから助成金を与える」という制度を打ち出した。もちろん昨今の選手年俸の恐ろしい高騰により、この助成金の価値(せいぜい300万ドル)はないがしろにされてしまった感はあるし、「ベットマンコミッショナーのカナダのチームに対するゴマスリ」と揶揄されたこともあった。だが、それでもこの制度は、フランチャイズに関わる人間やファンの意識を新たにしたと思っている。

選手とオーナー間だけでなく、オーナーだけをとっても様々な類のエゴが渦巻いている。これを統一するのは容易な作業ではない。だが、少しばかりの創造力でクリアできる問題もあるとも思うのだが。

NHLは、3月1日にオーナーを招集して会議を実施予定だそうです。その会議でどうオーナーが団結、もしくは分裂するかが見物ではあります。(PA側も同様ですが)

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by hockeyworldjapan | 2005-02-22 08:27 | CBA

一転、二転、三転・・・結局再開なし(見込み)

真面目にメディアの報道を追ってる人は、かなり翻弄された週末ではなかったでしょうか? かのTSNコメンテイター、ボブ・マッケンジー氏すら「ここ数日の展開は、全く奇妙で読めない」とお嘆きになっているので、管理人レベルの人間がオタオタするのは当たり前・・・という気もします。

メディアが拾った「4500万ドルのサラリーキャップで妥結」という報道(THNがそもそもの発端)は、どうもPAもしくは代理人からの情報だったらしく、それ以外にも「非常に信頼できる筋からの情報で、妥結は間違いないとのこと」などというやけに楽観的な二次、三次報道まで出た。つまりPA側の認識が甘かったということなんでしょう。これで期待を高めたあげく、いまとなっては谷底に落とされた気分のファンも多いのではないでしょうか?(え、管理人? ここ数週間でこの手の展開はもう慣れっこ。痛点麻痺状態かも)

で、過去数日間の展開をざっとおさらいしてみます。

2月16日:NHLベットマンコミッショナーがNYのホテル@ウエスティンタイムススクエアにて、「今季全面中止」会見実施。
2月17日:NHLPA会長リンデン、マイク・ガートナー(元NHL選手、現在PAシニアディレクター)が、ベットマンコミッショナーと密会。ウエイン・グレツキー、マリオ・ルミューが電話会談。グレツキー曰く「交渉再開についてなどマリオと突っ込んだ話はしていない」らしいが、この2人が再開に向けてプレッシャーをかけたという説もあり。同日深夜、NHL側がPA側に対しNYでの会合を呼びかけ。
2月18日:PA側がNHLの呼びかけに応じる。
2月19日:NHL、NHLPA両陣営が会談実施。いつもの会合メンバーに加え、グレツキー、ルミューの2人も参加。NYで数回の休憩含め6時間半を費やしたが、決裂。会合では両陣営から新たな提案はなく、NHLの前回最終提示が詳細に渡って説明されたが、その内容にPAは「詳細を見たら、思ってた内容よりも悪いってことに気づいた(byヴィニー・ダンフース)」と、眉をひそめたらしい。次回会合の予定はなしで、両陣営とも「中止決定を覆すことはできない」と諦めコメント。

・・・というわけで、今季全面中止決定はそのままイキってことです。
これでこの決定が取り消しにでもなっていたら、ベットマンコミッショナーのメンツ丸潰れになるところでしたしね。さすがにリーグとしてもそうはさせなかったという部分があったかも知れません。

とはいえ、コミッショナーの公式「シーズン中止会見」まで実施したあげく、また交渉蒸し返しに至っただけでも、十分舞台裏でのすったもんだが想像できます。ここではその経緯について、説明することとしましょう。


背景その1:
「せっかく650万ドルまで差を詰めたんだから」という気持ちが、双方から持ち上がってきた。あるいは数チームのオーナーたちが、一部の選手や代理人と直接交渉を始めたために、NHL側がたまりかねて会談を予定したという噂も。
2月19日交渉前には「PA側としてはキャップ4500万ドルあたりの妥結を望んでいる模様」という報道があり、ベットマンコミッショナーも「4500万ドルなら妥結する用意があったのでは」、との憶測があった。しかし両陣営からはいずれもそうした妥協案は提示されなかった模様。

会談前には、「キャップ4600万ドルの提案(4200万ドル以上100%贅沢税、もしくは4000万ドル以上は40%という説も)で妥結寸前」という噂も。しかし結局PA側からそうした提案はなされなかったことを考えると、これはPA側の分裂を意味するのか、もしくは妥結に至らしめようとするメディアの誘導報道だったのか、などと深読みしてしまう。

実際、PA側の分裂を匂わす動きはここ数日間でも報じられている。PAグッドナウ代表に対し「なんで4500万ドル程度の最終提示をしなかったのか?」との圧力が選手側から出たという噂だ。PA側がサラリーキャップを受け入れたのも、ローニック、イギンラ、エシュ、プロンガーといった面々が「サラリーキャップを受け入れる」とオーナー側に直訴し、グッドナウ代表に圧力をかけたのではとの報道がなされたが、これをエシュ、プロンガーは否定している。

背景その2:NHL、ESPNに最後通牒突きつけられる
NHL今季全面中止の発表を受け、来季ESPNはNHLを全く放映しない可能性も示唆している。すでに今季は40試合まで放映試合数を縮少していたところにこのロックアウト。ESPNとNHLとの契約は今季1年限りで、来季はESPNのオプションとなっている。ESPNとしては、今季NHLが抜けた分はカレッジバスケで十分補えたという考えがあるらしく、その最終決定期限は4月15日。これまでに労使交渉が妥結していないと、ESPNが真面目にNHLを見放す可能性も高まる。最近NHL放送に関してやる気のなさが見え隠れしているESPNではあるが、NHLとともに過去80年代から持ちつ持たれつの成長と遂げて来たのは確かでもある(1度放映権が他チャンネルに移ったこともありましたが)。ペイチャンネルとはいえ、普及率と知名度が高いESPNから放棄されたら一大事・・・という状況もあって、慌てて交渉の席に付いたのでは? という説もあり。

・・・という状況であります。


で、察するにグレ様&マリオは、会談中「壁の花」状態だったような・・・。

そうかと思うと「まだ近いうちに妥結の可能性はある」とおっしゃる事情通もいたりする。こうした駆け込み交渉に有益な内容が見いだせるのか? という疑問は当然ある。去り逝くシーズンに無理矢理蘇生術を施して生き返らせる必要はもうない。ただし、焼けぼっくいに火がついてるうちに、交渉を進めておけという意見は、分からないでもない。

いずれにしても、管理人の内面の平静は、しばらく訪れそうにもありません。

シカゴ・トリビューンの記事を読む
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by hockeyworldjapan | 2005-02-20 19:23 | CBA

今季全面中止発表、そして交渉はまた逆戻り?

結局交渉は決裂、NHLは今季全面中止を発表しました。

HWJ掲示板でお伝えした通り、この前日2月15日の会合では、双方がさらなる歩み寄りの姿勢を見せてはいたのです。NHL最終提案の「4250万ドル(福利厚生費を含めると4470万ドル)のサラリーキャップ」という内容に対し、NHLPAが「4900万ドルのサラリーキャップ」と逆提示。両陣営の差は、この前日の1200万ドルから650万ドルへと縮まっていました。

それゆえに、にわかに妥結への期待が高まってはいたのですがが、15日深夜になってもこの650万ドルの溝は埋まらず。ついにNHLは各30チームに対し「今季全面中止」の書簡を送付し、16日のNHLベットマンコミッショナーの「今季全面中止」記者会見に至ったわけです。

多くのホッケーファンを落胆させたであろうこのニュースですが、さらにそのショックに追い打ちをかけるようなのが今後の展望です。

NHLベットマンコミッショナーは、今後も交渉は継続していく姿勢を見せてはいるものの、交渉が決裂した今後のスタンスとして「これまでの交渉内容とはまったく異なる経済モデルを想定する。リーグ収入と選手年俸はリンクさせる」「これまでの議論で提示した内容は取り下げる」と、いったんは軟化した姿勢を再び強硬化するニュアンスを匂わせています。つまり、650万ドルと縮まったはずの両陣営の差ですが、それはあくまで今季開催という条件下の話で、来季開催に向けての交渉は新たに仕切り直しをするというわけです。

なので、今後の交渉再開、そして再開後に両陣営が妥結に至るタイミングについては、再び見通しがつかなくなったと言っていいでしょう。

なお、2月15日にPAが提示した最終提案内容は以下の通りです。

*契約期間:6年間
*サラリーキャップ:4900万ドル、しかし協定期間6年のうち2回その10%増(5390万ドル)までオーバー、逆に2回2500万ドルの最低限度まで、選手年俸を控えることができる。
*NHL選手最低年俸:30万ドルとする
*贅沢税:
4000〜4300万ドル:25%
4300〜4600万ドル:50%
4600〜4900万ドル:75%
4900〜5390万ドル:150%
*リーグ収入と選手年俸のリンク:2006−07年以降のキャップ額、贅沢税の指標、税率は、2005−06年の数字を最低ラインとして維持し、収入アップの際にはその上昇率を持って補正する。
*シーズン開幕となった場合:2005年プレーオフ収入の55%を選手側に拠出する

これで、交渉内容がまた振り出しってことになったら、かなり長引くことも予想されます。で、長引いたら今度は交渉内容だけでなく、法的介入とか代理選手とか、さらにややこしい問題が出てきます。

TSNのニュースクリップで、トロントサン紙のスティーブ・シモンズ記者が言っていたのですが、「今季終了後にNHL選手のうち65%が契約切れになる」とのこと。つまり、現在はNHL選手でPAの会員であったとしても、NHLが来季代理選手を導入しようとすれば、そうした契約切れの選手を引き寄せることは理論的に可能である。そして最終的に、PAの結束を崩す決定打になり得るというわけです。

その気になる代理選手導入について、TSNのインタビュー内でベットマンコミッショナーは「今後のことは向こう2週間をかけて、オーナー会議を実施して今後のあらゆるオプションについて議論していく。代理選手のことはまだ考えていない。PAとの合意に注力したい」と、語ってはいたのですけどね。本音の部分はどうなのか、知りたくはあります。

で、NHLネタで地味に続けていたこのブログですが、そっちの将来も危ぶまれるような・・・これまではNHL労使交渉の延命措置により長らえてはいたのですが、これからどうなってしまうのか? 

不安は尽きませんが、なんとか姑息に生き延びようとは思っておりますので、今後ともよろしくお付き合い下さい。

NHL今季全面中止に関する原文を読む
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by hockeyworldjapan | 2005-02-17 09:20 | CBA

交渉はOTに突入。妥結の可能性浮上?

先週末が交渉期限とされたNHL労使交渉。しかし、ここに来てまた新たな展開が出て来たようなので、状況を解説したいと思います。

NHLPAはついにサラリーキャップを容認。NHLもそれまでこだわりを見せていた「リーグ収入と選手年俸の割合(53〜55%)」を提案から取り下げたのです。まあ、その内容を精査すると、それほど両者が軟化したというわけでもないのですが、「サラリーキャップ」という大きな概念的な壁をやっとクリアし、やっと金額的な部分の交渉に移行することができるのでは・・・という見方が強まっています。(ま、そこからが大変ではありますが)

現地2月14日、NHLとNHLPAは、ニューヨーク州ナイアガラフォールズにてデイリー&サスキンのナンバー2同士での秘密会合を実施。この会合は実に翌日15日未明までもつれこんだようです。

その長丁場もあってか、NHLはいったん14日深夜に「16日にベットマンコミッショナーの記者会見実施」を発表。メディアはまずこのニュースに食いつき「これで今季全面中止が確実に」と報道しました。(特に現地2月15日付の新聞報道は締め切りの都合上、ニュースの内容がここまでになっています)

しかし、会合終了後の15日未明、今度はNHLPAが「NHL側がリーグ収入と選手年俸の割合を盛り込むことを提案から取り下げた。そしてPA側からは、贅沢税、サラリーキャップ5200万ドル双方を盛り込んだ提案を提示した」との声明を発表。一転、妥結への期待が浮上してきたわけです。(NHLPAの声明文を読む)

TSNによると、PA側の提案内容は以下の通りです。(TSNの記事を読む)

*チーム年俸上限(ハードキャップ)を5200万ドルとする。ただし6年の新協定期間のうち3回まで、この10%増の額(つまり5720万ドル)まで費やすことができる。

*贅沢税を以下のチーム年俸に対して課す。
4000万ドル〜4400万ドル:25%
4400万ドル〜4800万ドル:50%
4800万ドル〜5200万ドル:75%
5200万ドル〜5720万ドル:150%

・・・というわけで、この案をNHLが受け入れるわけもなく、即拒否されたようです。24%一律ペイカットの後のキャップ額(10%超過の場合5720万ドル)って、現在7526万ドル使ってるチームまで当てはまる(爆)。ちなみに昨季年俸でいくと(2003年11月THN情報で申し訳ないのですが)、7526万ドル以上使ってるチームって、デトロイト(7783万ドル)、NYレンジャーズ(7701万ドル)の2チームのみ。この2チームだって、ちょっと買い控えしたら、このレベルはすぐクリアできるでしょう・・・ってことで、もう笑うしかない内容です。ま、この数字をPAが提示してきた背景には当然裏がありますので、それは後ほど説明することとしましょう。

ちなみに5720万ドル使ったチームが払う贅沢税を計算してみたところ、1380万ドルとなる。そのチームは、年俸分と合わせて計7100万ドル費やせばいいわけだから、下手すりゃ昨季年俸より安上がりってことで、そりゃその贅沢税だって払ってでも使うでしょう。収入分配策としても、そんなチームが3つ出現しても、計4140万ドルだから、低年俸チーム(たとえば10チーム)で割ったとしてもせいぜい400万ドルにしかなりません。

またこの日の会合では、NHL側から贅沢税を盛り込んだ提示がなされた模様です。
その内容は以下の通りです。

*チーム年俸上限(ハードキャップ)を4000万ドルに設置。

*3400〜4000万ドルに50%の贅沢税を設置。


・・・と両陣営まだ大きな開きはありますが、PAが形なりにもサラリーキャップという概念を公式に受け入れ、またNHL側も収入と選手年俸の割合導入を提案から落としたことで、歩み寄りの姿勢はある。一応進展があったことは認めます。な〜んで昨年夏の時点でこういう方向に話に持って行けなかったのかな〜とは思いますが、何にも起こらないよりはマシと考えるべきでしょう。

ただね、NHLはあんなに「Linkage」「Linkage」(リーグ収入と選手年俸割合リンクのことです。53〜55%という例の数字)と口が酸っぱくなるくらい叫んでたのに、あっさり引き下がった。一方、PAはなんでこの期に及んで一転、サラリーキャップを認める立場に切り替えたのか。そのあたりの裏事情をここで説明したいと思います。

それは以前にもちょっと説明したのですが、もしこのまま今季全面中止ということになれば、今後法廷で争われるの可能性もある背景にあるのです。で、その司法介入に至った場合、「両陣営のうち、交渉に応じる姿勢を見せていないのはどちらか?」というのが、裁定材料になると言われています。

そういう意味では、この時期にいずれかの陣営が持論にこだわりを見せれば見せるほど、いざ法廷での争いとなった場合にマイナス材料となる。よってこだわる意志はありませんとアピールする必要がここではあったらしいのです。同様な動きとして、NHLが連邦調停人を加えて交渉を実施したという報道もありましたが、これもひとつのアピールとしての動きだったのでは、とも指摘されています。

さらにPA提示の5200万ドルという額については、PAとしてもまさかこの数字で妥結できるなんて思ってもいないでしょう。おそらく4600万ドルあたりを妥結ラインとして考え、交渉術として5200万ドルという高めの数字をまずはオファーしたのだと思われます。

で、管理人個人の勝手な今後の予測ですが(あくまで成り行き予想です。希望は入ってません)、この両提案の中庸をとって妥結するんではないかと。つまりハードキャップ4600万ドルあたり。じゃあいつ妥結するの? という部分については、今後を見守るしかありませんというしかない。また妥結内容の善し悪しについては、実際妥結後にまた新たに議論したいと思っております。

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by hockeyworldjapan | 2005-02-16 10:02 | CBA

期限の週末も終わり・・・

やっぱりそろそろ幕引きですかね?

現地日曜の2月13日、NHL労使交渉は、ワシントンでアメリカ連邦調停人を交え、5時間に渡る会合を実施しました。しかし連邦調停人の介入もむなしく、こちらも進展はなしと終わったそうです(関連記事を英文で読む)

2月10日の会合が物別れに終わった後、かなりの要職にある連邦調停人の要請に基づき、この日は会合を実施したNHLとNHLPAだったそうですが、これには両サイドの巨頭(ベットマンNHLコミッショナー、グッドナウPA代表)は参加しておらず、そういう意味ではややテンションの低い会合だったのでは、と推測されています。

その一方で、NHLはその前日の土曜日の2月12日、30チームのオーナー、GMらに向けて以下のような書簡を送信しています(関連記事を英語で読む)

1)今後はメディアに対し、ロックアウト関連のコメントをしてもよい(注:それまではコメントを出した関係者に、最高25万ドルという巨額罰金が課せられていた)

2)今後は選手と接触してもよい(注:これまでは故障者、マイナーリーグでプレーすることを合意した選手を除き、一切の接触が禁じられていた)

これによってNHLは、GMと選手側がある意味での連帯を築き、それによってPAの立場を孤立化させようという目論んでるのではと考えられています。

で、現状を改めて説明すると、こんな感じです。

オーナー側は形勢有利ってことで、強硬な姿勢を緩めません。1994−95年には、その前のシーズンに優勝したNYレンジャーズや、同じく人気チームのデトロイトなどが、NHLのアメリカでの人気獲得に貢献していたこともあって、労使交渉では大きな発言力を持っていたのです。そうしたチームが「早くシーズンを開幕させろ」とプレッシャーをかけたことで、結局はオーナー側にとって納得のいかない提案内容で妥結させてしまったという前例がある。それゆえに今回の交渉では「前回の二の轍踏むな」という強い意志が、オーナー側に見られるという意見もあります。

逆に、弱みを握られてるのは、やはり選手側でしょうか。最近ではローニック発言にもあるように、条件付きならサラリーキャップに応じてもよい(といってもリーグ提案の実質4000万ドル(さらに今後は減少に転じる可能性大)の天井値でなく、4700万ドルでリーグ収入とは無関係に設置、あるいは贅沢税との混合型など)という風潮もかなり有力になりつつあるとは言われています。

早ければ現地時間2月14日(日本時間2月15日早朝)にでも、NHL今季全面中止が発表されるということですが・・・NHL本部のあるニューヨークでは、2月14日にも今季幕引きの段取りについて議論が交わされ、その後ベットマンコミッショナーが全面中止を発表すると噂されているようです(トロントサンの記事を読む)

シーズン全面中止となれば、北米4大スポーツでは初、スタンレーカップ優勝チームが不在なのは1919年以来(この年はスペイン風邪の大流行で決勝が途中でキャンセル)となります。

前回は、期限ギリギリになってPAの親玉グッドナウ氏が「再度提案」を提示し、妥結に至ったのですが・・・巷の声は「10年前とは違って、両陣営の考えに開きがありすぎ」。というわけで、妥結という奇跡が起こる可能性は、天文学的に少ないと言ってよさそうです。

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by hockeyworldjapan | 2005-02-14 22:58 | CBA

交渉期限は今週末!

・・・って、宣言する意味があるのかどうか。

お騒がせ中でありますNHL労使交渉ですが、いよいよ今季幕引きのための交渉期限が「今週末」とNHL側から明言されました。仮にそれまでに妥結できたら、レギュラーシーズン28試合で開幕する。決裂となれば、翌2月14日にも今季全面中止宣言がなされるのでは、と見られています。

で、その期限までに交渉が妥結する確率ですが、相変わらずかなり厳しいといっていいでしょう。2月9日、10日の両日にも交渉が実施されましたが、その内容はある意味逆戻りでした。

2月9日の会合では、NHL側が噂通り新提案を提示しました。しかしその内容というのは、新提案でもなんでもない。12月9日のPA側提案(24%一律ペイカット、贅沢税、収入分配)をとりあえず実施し、その結果NHL側が提示する4つの条件のいずれかひとつにでもあてはまった場合は、2月2日のNHL提案に即移行するという内容でした。

NHL側の提示する4つの条件とは以下の通りです。

1)リーグ全体の選手総年俸支出が、リーグ収入の55%を超える
2)高額年俸チームのトップ3の平均額が、低額年俸トップ3の平均額を33%以上上回る。
3)高額年俸トップ3のいずれかが、4200万ドルを超える
4)平均チーム総年俸が3650万ドルを超える

PA側は、上記の条件のうち少なくとも1つは即座に該当すると主張し、この提案に意味なしとして、ばっさり拒否しています。

NHLベットマンコミッショナーは、2月9日に提案後、会見を通じ「今回の提案で我々は非常に寛容な提示をしたつもり。これが最大限の譲歩」とコメントしています。「PA側の提案を試行する機会を与えてやったのだから、我々ってな〜んて太っ腹」といいたげです。

う〜ん、確かにその論理は正しいし、ある意味完璧である。これが秘密裏に行われてる交渉だったら、やり込められた側はもう降参してるかも知れない。それで「ベットマンすごい! さっすがやり手弁護士」ってことになるんだけど。

でもこの提案は、PA側へのあてこすりと挑発に満ちている。だからPA側が折れるわけがない。それにファンに対して「NHL側はやることやりました。今季が潰れたら後はPAのせい」と今季全面中止となった場合の責任の所在をPAに押し付けるという要素も、多分にあるとは思います。

しかし問題は、メディアも、そして敏感なファンも、その辺のベットマン氏のトリックの胡散臭さを敏感に嗅ぎ取ってるってこと。そんな小細工は、ただでさえシラケ気味のホッケーファンを余計に呆れされる。

いっそのこと「申し訳ないが今季はもう全面中止にする。だが一刻も早く交渉妥結し、来季予定通りの開幕を死守するために今後も交渉を続ける」とコメントした方が潔いばかりか、よっぽど誠意がある。リーグ収入と選手年俸の割合を一定化するって理論だって、もっとうまくアピールできるはずではないか・・・私はそう思います。

現地2月10日の会談も3時間で物別れ。交渉にはアメリカ人仲裁者が加わったそうですがこれも効き目なし。PA側は「NHL側は真面目に交渉する気がない(PAナンバー2のテッド・サスキン)」と言い捨てるほど、交渉の雰囲気はかなり悪化している模様です。

まあ、そう言いつつも、私だって一縷の望みはまだ捨ててはおりませんが・・・(しつこい?)
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by hockeyworldjapan | 2005-02-11 19:30 | CBA

NHL労使交渉。で、今の争点は何?

・・・と言われそうなので、一応書いておきます。

もちろん「サラリーキャップ」の導入の有無もひとつの焦点であることは変わりないのですが、選手の中には「NHL提案の通りとはいかないが、キャップという概念は受け入れてもいいのでは?」「キャップ&贅沢税の双方をシステムとして取り入れたらどうか?」という人たちも出て来てはいるのです。ただしそういう選手たちが、全体の何%に相当するのか、またその選手たちであっても「キャップ容認派」と一括にしてしまうのは、実際に難しいというのが現状ではあります。

で、PA側として、NHL提案の中で一番の問題になっているのが、「リーグ総収入の53〜55%を、選手年俸総支出とする」という部分。理論だけをとってみれば、このNHLの主張は至極正当のように思われますし、各チームのキャップ額を算出するためにこうした技法を取るのは、基本中の基本ではあります。

ただし、これをNHLの現状と照らし合わせてみると、PAにとってはこのシステムの即座導入は非常に痛いタイミングなのです。というのも、NHLでは(1)アメリカでのTV放映権収入の大幅ダウン、(2)ロックアウトの余波によるその他の収入の激減、などの背景により、近々リーグ総収入が大幅ダウンする可能性が大であるからです。

ひとつの例をここで挙げておきます。

現在のNHL提案で妥結したとして、来季2005−06年はフルシーズンが戦われたとします。しかし、先に挙げた(1)、(2)の理由で、リーグ総収入は30%ダウンしたとしましょう。

2005−06年でのチーム別サラリーキャップ額は、3200万ドル〜4200万ドル(福利厚生費を除いた純粋な年俸額では、約3000万ドル〜4000万ドル)。しかしその翌シーズンのキャップ額は、リーグ総収入の30%ダウンを加味した額、つまり30%ダウンの2100万ドル〜2800万ドルとなるのです

もちろんリーグ総収入が実際に30%もダウンするのかどうか・・・という議論も必要だとは思われるのですが、キャップ上限2800万ドルというのはPAにとってはかなり低い数字であることは間違いありません。というわけで、PA側がこの「リーグ総収入の53〜55%を、選手年俸総支出とする」というコンセプトに猛反駁しているのは、そういう背景があるからなのです。

さらにPA側としては「選手たちはロックアウトされた方。ロックアウトによる収入減の責任はオーナー側にある」という議論もあるでしょうが、それは正直お互い様だと思う。逆にPA側としては、待てば待つほどリーグ総収入減の可能性が増えて行くわけだし、NHL側としてはPA側にプレッシャーをかける上でいい材料になっているような気がします。

いずれにしても、(1)このまま交渉しない日々が続き、タイムリミットを迎える →(2)今季全面中止宣言がなされる →(3)どうせ来季は9月までキャンプもないし・・・ってんで緊迫感が薄れる → (4)交渉がさらに膠着状態になる →(5)ファン置いてきぼり化がさらに進行する・・・といったシナリオを、私は一番恐れています。(「ホッケー食べて、飲んでる」カナダでもファン離れが進行してます)

この際はっきり言いましょう。
別に今季開幕しなくたっていいんです。
でも、これだけは言いたい。交渉だけは続けろと。

PA側がロックアウトの余波を気にするなら、NHL側は最初の2年は暫定的にキャップ額を据え置くとかの措置も提示してやれば? とも思う。それと引き換えにNHL側は他の条件で強く出られることでしょうから。そういうのが「交渉」ってもんじゃないかと思うのですが。

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by hockeyworldjapan | 2005-02-09 14:27 | CBA

続・五輪&NHL

2010年のバンクーバー冬季五輪のカナダの放映権は、CTV、TSN、ロジャーズスポーツネットの民放混成チームが、国営放送のCBCを破って獲得したそうです。(これでCBCでは、さらなるレイオフが進むと予想)。

NHL労使交渉がここ数日全く新しい動きがないので、さすがのTSNもネタ切れしたのか、いきなり「2010年のチームカナダはどんな選手たち?」と気の早い話をしてました。ま、放映権獲得内輪盛り上げ企画で無理矢理突っ走ったという感じでしょうか?

そのあたりの内輪盛り上げの話はこれくらいにして、先日こんな話題がありました。

2月1日、IOC会長ジャック・ロゲ氏が、2010年五輪開催地のバンクーバーを訪問しました。その際に「五輪アスリートは、最低年俸600万ドルを求めてストライキなんかしない」と発言。場内500名以上の聴衆から大きな喝采を浴びたそうです。

ただし、後になって自分の発言に関するカナダ国内での反響の多さに驚愕したらしく、そこではかなりの弁解モードでした。自らもヨットで3回五輪出場で、ラガーマンというロゲ氏。ソルトレーク五輪では自ら選手村で寝起きするという「庶民派」を打ち出した彼らしい発言ではあったわけですが、例によってNHLロックアウトによりニュースに飢えてるカナダのメディアにとっては、実にツッコミ甲斐がある取材対象だったわけです。ベルギー出身の方なので、さすがにカナダでのNHL関連報道の凄まじさは予想できなかったか・・・という好例でした。

そしてかねてから「ベットマン嫌い」とお伝えしてきたIIHFルネ・ファーゼル会長も、このIOCロゲ会長とともにバンクーバー入り。到着当初は「NHL選手の2006年トリノ五輪参戦? ギリギリまで門戸を開くよ」と穏当な発言を残してたのです。しかしその翌日、NHL選手にチクリと刺したロゲ会長と同期化したのか、ファーゼル会長は猛然と掌返しに出ました。

「来季NHLシーズンが成立し、NHL選手参戦のために五輪ブレイクが設定されなくても、NHL選手がトリノ五輪に出場する手段はある」

この発言の状況説明をしたいと思います。
現在労使交渉が難航している状況を睨み、NHLベットマンコミッショナーは「たとえ労使交渉が妥結しても、来季レギュラーシーズン中に五輪ブレイクを設ける可能性は薄い」とコメント。ここには「NHLはトリノ五輪について配慮する用意はない」という意図が汲み取れます。

それまで「NHLにスリスリ」する姿勢を打ち出していたファーゼル会長なのですが、「さすがにそこまで舐められちゃあかなわん!」と、ロゲ会長(整形外科医@ベルギーです。歯科医@スイスのファーゼルさんにとっては、ベットマンコミッショナーより付き合いやすい相手に違いない)の後ろ盾に背中を押されたこともあってか、上記の掌返し発言に出たようです。まさに売り言葉に買い言葉とはこのこと。まあ、気持ちは分かります。

さらにファーゼル会長は「各国連盟は、選手たちにNHL契約を思いとどまらせ、五輪に出場させる案を持っている」とベットマンコミッショナーに対して宣戦布告とも受け止められる発言も。そして「NHL選手が参加しなくたって五輪は大丈夫」的な発言も残しています。そして2004−05年シーズンが全面中止になれば「(2005年)ウイーンでの世界選手権はとっても面白くなるだろうよ」と挑戦的。高額契約選手たちの保険が問題となりかねないが? と聞かれると「トップクラスの高額年俸選手を除き、現在ヨーロッパでプレーしている選手たちはみんな保険でカバーされているから、世界選手権でも同様に問題ない」と余裕をぶちかましていたそうです。

ただ、こうしたファーゼル会長の発言を尻目に、おそらくベットマンコミッショナーの腹の内は「トリノはどうでもいい。バンクーバーさえ参戦できれば」というとこではないかと察するのです。実際、1998年長野五輪の際もNHLとしては、「(2002年)ソルトレークの予行演習のつもりで」というノリでしたしね・・・仮にトリノに参戦するとなったとしても、また長野の時と同様に選手たちからは「時差ぼけうんぬん」でスケジューリングに苦情が出るのは目に見えてもいます。

そのトリノ五輪、各国は2005年10月までに選手リスト提出が求められ、2005年1月にさらにその詳細リスト提出が必要となります。ただし直前でのメンバー変更はアリらしい。ということで、かなり直前までバタバタすることが予想されます。

そして本日(2月10日)から、スイス・クロテンで日本代表がそのトリノの出場権を賭けて戦います。いい結果を期待したいものです。
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by hockeyworldjapan | 2005-02-09 13:36 | NHL overall