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世界選手権もろもろ(その2)

世界選手権、毎年悲喜こもごもなのが、順位決定戦であります。
今回は日本が出場していない分、冷静に見届けた感はありますが、地元オーストリアとドイツの降格を事前予想した人は、少なかったんじゃないかと思います。

まずは地元開催で降格決定となってしまったオーストリア。今年のチームは特に故障者が多かったそうで、得点力のなさに苦しんだようです。結局今年の大会では0勝1分5敗とまったくの不振。ホスト国が勝ち星なしに終わったのは、長い世界選手権の歴史でも初の出来事だったそうです。

最終戦vsスロベニア戦は、オーストリアが8点差以上をつけて勝利しないとAプール残留ができないという、かなり厳しい状況でした。もし8点差で勝利できていれば、オーストリアはドイツとポイント、当該試合(2−2で引き分け)、得失差、得点の4項目で全く並ぶために、順位決定のためのゲームウイニングショット戦が行われるところだったとか。しかしあえなくオーストリアはvsスロベニア戦に2−6と敗れ、前代未聞の順位決定GWS戦は未遂に終わりました。

さてもうひとつの降格組ドイツ。大会開催地インスブルックが、1976年五輪で銅メダルという思い出の地だったのですが、オーストリア同様今大会では不振を極め、ディビジョン1へ降格してしまいました。

ドイツといえば、2004年チェコ大会で9位に終わったことで、これまで6年間代表コーチを務めたハンス・ザックがメディアからバッシングされて辞任。今大会は39歳のアメリカ人グレッグ・ポスが後任についた後での、最悪の結果となってしまったのです。問題は新システムへの順応失敗が指摘されています。ポスコーチは、従来のザックコーチの戦略に反して、オフェンス重視のシステムを掲げていたそうですが、それがうまくいかなかったために大会直前に守備的戦略に戻したため、余計に選手たちが混乱したという声も聞かれています。さらにスターム、ウストーフ、コルジグらの主力故障欠場も痛かった。2006年はこのドイツが、ディビジョン1にて日本と同ブロックで戦います。手強い相手であることは確かです。

ただし、今回のIIHF総会で、ドイツはすでに2010年の世界選手権Aプール開催権(コロン、マンハイム)を得ています。そういう意味では、また今後に向けて新たなビジョンで立て直して来ることは必至でしょう。ドイツはベラルーシとの決戦投票で89対18で勝利。当初はスロバキア、スウェーデンも立候補していたが途中棄権したそうです。これでドイツでの開催は1930、1955、1975、1983、1993、2001年以来6回め。1936年には冬季五輪(当時は世界選手権を兼ねる)も開催している。コロンのアリーナはホッケー用としてはヨーロッパ最大の収容人員を誇る(18500人)そうで、今秋完成のマンハイムのSAPアリーナも15000人収容だとか。やはりこうした世界的スケールの設備がないと、世界選手権の開催は難しいのでしょうね。

ちなみに2006年はラトビア、2007年はロシア(モスクワ、セントペテルスブルグ)、2008年はカナダ(ケベックシティ、ハリファックス)、2009年はスイスの開催が既に決定しています。

・・・と、この2国が降格になったということは、そう。「ホッケー選手登録人口わずか888人」のスロベニアが、A残留を決めたのです。

スロベニアにとっては、大会最終戦となるvsオーストリア戦で勝てばA残留。引き分けでは降格というシナリオでした。オーストリアは地元チームでありますから、完全アウェイでの6−2という勝利は、オーストリアが8点リードで勝利しなければならなかったハンデを考慮しても、素晴らしい精神力の賜物と言えるでしょう。
しかもその前のvsデンマーク戦では1−3から逆転勝利。ドイツには1−9と完敗したのですが、ドイツがそのデンマークに負けてくれたことでチャンスが到来し、気持ちをきっちり入れ換えてのvsオーストリア戦勝利はすごいです。やはりディビジョン1で揉まれてきたチームならではの強さなのでしょうか? また旧ユーゴ諸国は、かつては日本と肩を並べていた諸国でもありますが、戦争と民族独立運動による国家分裂により、旧ソ連邦諸国同様にどん底からランキングを上げて来たわけで、そのあたりがこの逞しさの秘密なのでしょうか?


さらに、70年ぶりの2大会連続メダルは叶わなかったアメリカ。
優勝したチェコに準々決勝で敗れはしたものの、シュートアウトにもつれての惜しい負けではありました。まあ、チェコにとっては昨年地元開催での大会で、準々決勝でアメリカに痛い負けを食わされてもいたので、いいリベンジにはなったと思います。

で、話はアメリカvsチェコ戦に戻ります。
シュート数ではチェコが53−27と圧倒的な展開だったものの、アメリカGKディピエトロの活躍で、クロスゲームに持ち込まれていました。試合は負けはしたものの、ディピエトロはその働きを評価されて、各チームから3名選出される優秀選手(アメリカからは他にパリッシュ、クヌーブルが選ばれています)に名前を連ねていました。

実はこの試合前には、このディピエトロか、はたまた昨年銅メダル獲得に貢献したGKコンクリンを先発させるべきか? という小さな論争があったのです。というのも、これより先にアメリカ代表ピーター・ラビオレットコーチは、決勝ラウンドvsウクライナ戦の1−1同点で得たPSという大事な場面で、20歳のザック・パリシー(2003年ニュージャージー1巡目指名選手)を指名するというギャンブルに出ていたのです。結局パリシーはこのチャンスを生かせず。ベテランたちからは当然不満の声が上がり、指名されたパリシーは落ち込む・・・というイヤな空気がチーム内に蔓延していたのでした。まあラビオレットコーチとしては、当然勝利すべきウクライナという相手に対して苦戦していたことについて、ベテランたちへ檄を飛ばす意味でパリシーを指名したのでは? という声もあったのですが、その作戦が思い切り裏目に出たのは言うまでもありません。

しかし、負けはしたもののvsチェコ戦のラビオレットコーチの決断は正しかったと思います。アイランダーズを指揮していた頃から、ラビオレットコーチは、ディピエトロのことをよく知っていたはずでもありますしね。そのディピエトロ、今季はドイチェランドカップでアメリカ代表として出場した以外は、ちゃんとしたチームでのプレーはしてなかったそうな。ロングアイランドのローラーホッケーリーグで、なんとFWとしてプレーしていたというから面白いではありませんか。おそらく得意のパックハンドリングでも磨いてたんでしょうね? 

また日本代表関連にもなりますが、大会期間中のIIHF総会では、2006年世界選手権ディビジョン1の開催地、グループ分けなども発表されていました。

2006年ディビジョン1大会開催地は、グループAがフランス(アミヤン)、グループBがエストニアに決定。日本はグループA(ドイツ、フランス、ハンガリー、イギリス、日本、イスラエル)の大会開催をフランスと争ったのですが、66対27で決戦投票の結果開催権を逃しました。グループB(オーストリア、ポーランド、オランダ、エストニア、リトアニア、クロアチア)はエストニアとポーランドの争いで、56対45でエストニアが勝ち取ったそうです。

日本のいるグループA、なかなか手強い相手ばかりです。イスラエルの実力がちょっと図りかねるのですが、A復帰どころかこのレベルで対等に戦うこと自体、なかなか難しいことである気がします。

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# by hockeyworldjapan | 2005-05-16 14:53 | その他

世界選手権もろもろ(その1)

まずは、チェコの選手のみなさん、世界選手権優勝おめ! 

思い起こせば、フリンカさんが昨夏事故で亡くなった直後の2004年ワールドカップ。準決勝でカナダと対戦した際には、OTではチェコの方が押してましたもんね。それを考えれば、「めざせ世界選手権3連覇!」とか、「世界選手権史上最強チーム」と唄われたカナダ(しかもカナダはロースター24人中、14人が今季ちゃんとしたチームに所属してプレーしてなかった)よりも、チェコ(今季は選手全員がヨーロッパでプレー)の方が勝って然るべきだったのかも知れません。

で、大会優秀選手が発表されてますので、まずはその話題から。

大会MVP:ジョー・ソーントン(大会スコアリングリーダー、6G10A)
ベストDF:ウエイド・レッデン(カナダ)
ベストGK:トーマス・ボクーン(チェコ)
ベストFW:アレクセイ・コバレフ(ロシア)
ベスト6:GKボクーン、DF二クラス・クロンウォール(スウェーデン)、マレク・ジドリツキー(チェコ)、FWソーントン、リック・ナッシュ(カナダ)、ヤロミール・ヤーガー(チェコ)

個人芸ということになると、やはりカナダの2人(ソーントン&ナッシュ)は触れずにはいられません。この2人は共に今季はスイスリーグ・ダボスでプレーしており、世界選手権でもラインメートとして大活躍していました。
ダボスのメンバーとして、12月31日にスペングラーカップで優勝、スイスリーグ優勝を飾っており、世界選手権で優勝すれば今季3冠。ソーントンに至っては、2004年ワールドカップも合わせると4冠がかかっていただけに、今大会で銀に終わったのは無念ではあったでしょうね。

MVPこそソーントンがかっさらっていきましたが、大会前半で目立っていたのはむしろナッシュの方。その活躍ぶりは、ひとえにナッシュのゴールのお陰で、カナダは勝てた試合もあったといっていいほど。しかし今大会中のナッシュには、ちょっとしたトラブルもありました。

ナッシュは、決勝ラウンドvsスウェーデン戦(5−4でスウェーデンの勝利)で、レフェリーをスティックで引っかけ、ラインズマンを押しのけるという所作が問われ、その処遇が注目されていました。というのは、この試合を放映していたスウェーデンのTV局がその試合部分のビデオをIIHFに提出し、ナッシュの処分を求めていたからです。

IIHFでは、大会チェアマンを務める富田正一IIHF副会長も含め、このプレーを協議。結局このプレーは「故意ではない」と判断されて、ナッシュはお咎めなし。そして晴れて出場したvsウクライナ戦では、このナッシュの大会9ゴールめが決勝弾となり、カナダが2−1で辛勝・・・というシナリオになりました。

が、不思議なことに、カナダ人の記者たちからは「あのフッキングは明らかに故意。NHLなら3〜5試合出場停止」と、冷静な意見が聞こえていたのです。とある記事は、OHL時代にナッシュがレフェリーとの接触で5試合出場停止になった件に触れ、ナッシュが「あの接触は故意ではなかった。この判定はビョーキだ!」と猛反駁していたことまで説明。ま、出場停止になっていたら、カナダのメディアからの反響はその程度で済まなかったのかも知れませんが、興味深いカナダ人記者たちのリアクションではありました。

話題はチェコに戻ります。

そういえば、大会とは直接関係ないのですが、チェコ関連で気になったのが、パトリック・エリアシュがA型肝炎を発症したというニュースでした。

エリアシュは今季当初、チェコリーグでプレーしていたのですが、その後かつてのチームメートであるピーター・シコラと共に、ロシアリーグのチームに移籍。ロシアに移ってからどうも発症したらしいのです。

この記事によると、A型肝炎は通常水や食べ物などを通して経口感染する。まだ衛生管理ができていない国での感染が多く、エリアシュはロシアでプレー中に食べ物から感染したと見られている、とのこと。特効薬があるわけでないので、休息と食事が治療方法となるそうです。

エリアシュが症状に気づいたのは3月上旬。最初は高熱が1週間ほど続いたので、風邪かと思っていたそうです。しかし症状が収まらないので、代理人が工面した専用機でチェコに戻り、3月11日プラハの病院に入院し4月7日まで病院暮らし。つい最近アメリカに戻って来たんだそうです。全快するにはあと3〜6ヶ月はかかるとのデビルズのチームドクターの診断が出ており、来季トレーニングキャンプに間に合わないかも。発症後は30パウンドも痩せてしまったそうで、治癒後の体力回復も気になるところであります。

2004年11月3日ラトビア・リガでの試合で急逝したセルゲイ・ジョルトク同様、ロックアウトさえなければ、エリアシュもNHLで病気することなく元気でプレーを続けていたのかも・・・と考えると、複雑な心境になります。そういう意味でも「もうイイ加減ロックアウトやめて」と呟きたくなる私ではあります。

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# by hockeyworldjapan | 2005-05-16 13:15 | その他

交渉再開も進展なし? そんな時タイ・ドミは・・・

で、NHL労使交渉はどうなった? と聞かれそうなので、いちおう概要だけ説明しておきましょう。

5月5日、6日の両日、NHL&NHLPAはトロントにて4月19日以来の会合を実施しました。2日間で計8時間のミーティングを、例によって開催場所は極秘で実施したものの、会合終了後にNHL、NHLPAともに「進展なし」との声明を発表しています。は〜。

とはいえ、もうのんびりしている余裕もなく、ってことで、両陣営は会合のペースをアップさせることを以前から宣言しておりました。よって、両巨頭が世界選手権に向かう前の5月10日@NY、さらに5月18、19日にも会合予定が組まれているんだそうです。

その一方で4月28日、NHLPAはケベック州、ブリティッシュコロンビア州において、労働組合としての正式承認を申請しました。PAが正式に労働組合として認められれば、この2州のモントリオール・カナディアンズ、バンクーバー・カナックスでの代理選手導入は不可能となる。つまりNHLによる代理選手導入を、未然に防ぐための防止策を打ったということです。

で、そろそろ、今日の主題にいってみましょうか。

そんな遅々として進まぬ交渉に業を煮やしたのが、タイ・ドミ。トロントの記者が世界選手権取材に出払ってるせいか、なぜかNYタイムス紙に「あいつらで新協定締結できなきゃ、新顔が必要だ」とコメント。これが通信社の記事にも載って、大々的に報道されてしまいました。

「あいつら」とはもちろん、ベットマン&グッドナウの両巨頭。最近ベットマンコミッショナーときたら、今後の見通しについて「後は数字上の交渉のみ」と楽観視してるそうな。そんな話を耳にしたらドミでなくても「そんな余裕でええんかい?」と問いつめたくなるのが、ファン心理ってものではないでしょうか?

ドミといえば、1月にトロントで、リーフスオーナーのラリー・タネンボム氏、マリオ・ルミュー、テッド・サスキン(NHLPAナンバー2)、ビル・デイリー(NHLナンバー2)、トレバー・リンデン(PA会長)を含めての極秘ミーティング@タネンボム氏自宅の糸を引くなど、いわゆるクーデター的動きを見せたことが、まだ記憶に新しいところです。

で、このNYタイムス紙の記事には、その極秘ミーティング時にドミが「敬意と信頼(respect and trust)」についてのポジティブメッセージが書かれた紙切れ入りのフォーチュンクッキーを持ち寄った・・・などという記述があるではありませんか!(爆)

フォーチュンクッキーとはなんぞや? という方のために、念のためご説明します。アメリカのチャイニーズレストランで、食事の最後にサービスとして出て来るお菓子のことです。餃子を二つ折りしたような形で、それをパコッと割ると中からメッセージが印刷された紙切れがでてくる。たいていは、人生における格言とか、近未来を占うようなひと言とか、ラッキーナンバーとかが書いてあるのです。お味は日本の「温泉せんべい」をもう少しリッチにした感じ・・・と言えば分かっていただけるでしょうか?

ったく、手の込んだことしますね〜、ドミったら。もしかしてお手製? 会合に居合わせたマリオをはじめとする重鎮たちは、このドミのフォーチュンクッキー作戦に、いったいどんな反応を示したんでしょうか? ひょっとしたらドミ、今の奥さんも同じ手で口説いたんだろか? などなど、いろいろとつい勘ぐってしまう。

まあ、そんな話をNYタイムスに漏らすあたり、当のドミはひとり悦に入ってたことは用意に想像がつくのですが。お得意の遠い目をしながら、ね。

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# by hockeyworldjapan | 2005-05-07 12:54 | CBA

世界選手権@オーストリア

始まりましたね〜、世界選手権@オーストリア。

っつっても、もう予選ラウンドは終了してます。
ちなみにここまでの経過はこんな感じ。カナダ、チェコ、スウェーデン、スロバキアが各組1位になってます。旧ソ連邦から独立したカザフ、ウクライナ、ラトビア、ベラルーシが健闘中。逆に、地元オーストリアに、ドイツ、デンマークがちょっと元気がない。さらに、ディビジョン1からの昇格組であるスロベニアは苦しい戦いが続いています。

で、この予選ラウンドを通じて、小ネタを拾いましたので、こちらでお知らせすることにします。
(除:カナダ代表。情報が多すぎてここには収まらないので、カナダについては改めてまた後日。取り急ぎカナダファンのお方は、スーレーvsターコの練習中乱闘シーンでもご覧あそばせ。しっかし、キャプションがないとこれがターコだって誰も分かんないんだけど)

まずは、スロベニアから。
かなり旗色悪そうな出足ですが、まず驚いたのがスロベニア国内のホッケー登録選手数がたったの888人(!)という事実。(注:ちなみに日本は3万人弱と言われています)しかも、成人男子に至ってはたったの103人。なんと少数精鋭な人たちなのでしょうか。まるで「ミステリーアラスカ」の世界を彷彿とさせますわ。

世界選手権出場はこれが3回め(過去に2002年、2003年と出場)。ヘッドコーチはフィンランド人のカリ・サボライネンが務めています。そのスロベニア代表で、いま最も注目されているのが、アンゼ・コピターという17歳のFW選手です。
コピターは、過去にディビジョン2のU18大会、ディビジョン1のU20でベストプレーヤー、ベストFWに選ばれた経験の持ち主で、2003−04年は弱冠16歳でスロベニアトップリーグでプレー。日本でいえば、アジアリーグで高校1年生が混じってプレーするようなものです。

今季はスウェーデンのジュニアリーグでプレーし、スコアリングでリーグトップの成績を残したとか。そのおかげで英語もマスターしており、CSBランクも10位に浮上。すでに、大物代理人として知られるドン・ミーアンが後ろ盾についてるそうで、「スロベニアのシドニー・クロズビー」との異名さえ聞こえてきています。このコピターは1987年生まれなのですが、デンマークには1986年生まれトリオというのが存在する。下位リーグに回った諸国でも、こうして新しい選手たちが着々と育っているという事実は見逃せません。逆に、日本でそういう若手が出て来ない理由を、真剣に考えなければいけない時期に来たか? とも思えます。

一方、NHLなら気になるのが、「スイスのゴーリー、なんでアービシャーが出てないの?」という疑問。2月の五輪予選でも、マーティン・ガーバーが1番手として選ばれ、アービシャーはメンバー入りすら果たせませんでした。

ちなみに、今回の世界選手権では、アービシャーはいちおうスイス代表3人のゴーリーには名前を連ねています。しかし、予選ラウンド3試合ここまででまだ出番はなし。そのあたりについては、スイス人記者さんがこんな記事を書いてました。要約するとこんな感じです。

「今季は故郷フライブルグでプレーが予想されたアービシャーだが、フライブルグ関係者によると『アービシャーは我々が出せるよりずっと高い金額を要求した』とのことで物別れに。しかしワンマンで知られるフライブルグGMが、アービシャーのようなスター選手は欲しがらなかったという説も根強い。ちなみにアービシャーの代理人によると、アービシャーが要求したのは年俸12万フランで、これはスイスリーグの平均値だったそう。

フライブルグでのプレーを断念したアービシャー陣営は、第2候補としてローザンヌと接触。ローザンヌはアービシャーの故郷からわずか車で1時間と好条件にあったが、すでにこのチームはマルタン・サンルイ獲得を決めていており、結局アービシャーが行き着いたのはルガノだった。億万長者のジオ・マンテガッツァ氏所有のこのチームには、すでにロニー・ルーガーという1番手ゴーリーがいたが、ルガノはアービシャーを他チームに取られたくないがために、アービシャーと契約。シーズンを通じてアービシャーを2番手として飼い殺し状態としたのだ。

もちろん、この状況はアービシャー本人にとっては非常に不本意。2004年年末のスペングラーカップでは、そんなアービシャーの境遇を知ってか、スパルタプラハがワンポイントで契約を申し込んで来た。しかしそれまで十分な試合出場もままならなかったアービシャーは、スペングラーカップ第1戦で途中交代の屈辱を味わってしまう。
そんな彼には、2月の五輪予選でもスイス代表からお呼びがかからずしまいだった。

そして、さらなる困難がアービシャーに降り掛かる。スイス代表の五輪予選中ブレイクに合わせて、アービシャーはなんと、ルガノのファームチームでプレーする惨めさを味わっていたのだ。その試合は、チームが国内2部リーグ転落を防ぐのに大事な試合だった。その試合の対戦相手チームは、クレージーなオーナーで有名らしく、このオーナー直々に選手たちへ『アービシャーの守るゴールになだれ込め』と命令したんだとか。

ただそのあざとい戦術には、なんとかケガなく切り抜けたアービシャー。そしてルガノ1軍でプレーオフで出場のチャンスが巡って来た。アービシャーはいいプレーをしていたのにもかかわらず、ルガノはファーストラウンドで1勝3敗と追い込まれた。そして大切な第5戦にアービシャーは出してもらえず、結局ルガノはプレーオフ敗退。レギュラーシーズン1位のチームが、スイスリーグプレーオフのファーストラウンドで敗退したのはこれがスイスホッケー史上初の不名誉な記録となってしまった・・・」

う〜ん、こんなことがあると、来季NHLが開幕した後でもトラウマ化してしまわないかと不安。特にゴーリーというポジションは、ある程度まで行った選手であれば後は精神性というか、自信でプレーするような部分がありますし。

NHLロックアウトが、思わぬ形で選手に影響を与えたほんの一例でありました。

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# by hockeyworldjapan | 2005-05-06 15:57 | その他

オイラーズ、WHLチーム獲得を熱望中

今季からファームチームのAHLロードランナーズを、お膝元のエドモントンに移したオイラーズ。そのロードランナーズは、今季プレーオフ進出はならなかったものの、ホッケーに飢えたエドモントンの人々の心をとらえて、観客動員はAHL3位と好調でした。おかげで親会社のオイラーズは、今季運営費(約1200万ドル)のうち、少なくとも100万ドルはロードランナーズからの利益で補えるという嬉しい報告もあったようです。

ただし来季、予定通りNHLが開幕した場合、ファームのロードランナーズが今季同様の観客を集められるとは予想しがたい。しかもオイラーズの場合、以前からエドモントンで欲しがっていたのは、AHLチームではなく、実はWHLチームだと言われています。

実際オイラーズは、これまでWHLのフランチャイズ権を獲得しようと積極的に活動を続けて来ました。一時は、2004−05年シーズンから加盟できるWHLフランチャイズを求めて、「チームを売却してくれたオーナーには500万ドル」なんてオファーを提示したことも。また過去に2回トライシティ・アメリカンズの買収を仕掛けていました。しかし当時、アメリカンズはブリティッシュコロンビア州バンクーバー近郊に、オーナーたち(グレン・セイザー、ブライアン・バークら)がチーム移転させる計画があったようで、オイラーズは今年3月にもそのオファーを蹴られたばかりでありました。

しかしオイラーズのWHLフランチャイズ獲得計画が遅々として進まない中で、周りは着実に動いてました。トライシティのオーナーグループは、なんとバンクーバーの東のチリワックにWHLエクスパンション権(2006-07年からWHL加入予定)をゲット。そしてアメリカンズを別のオーナーグループ(この中にはオリー・コルジグの名前も含まれているそう)に売却してしまったのです。

オイラーズとしては、来季もAHLロードランナーズをエドモントンでプレーさせることで、すでにスケジューリングをAHLに依頼しており、WHLチーム招致は急を要するものではないのかも知れませんが、オイラーズ幹部にとってトライシティでの顛末は心穏やかなものではないでしょう。

そこで、オイラーズが次に望みをかけるのは、WHLのエクスパンション。4月18日に実施されたWHL代表者電話会議の際にも、エドモントンでのWHLエクスパンション案が議論されたそうです。WHLは長い間、エクスパンションには反対の姿勢を示してきました。というのは、主にカナダ西部を基盤とするWHLですが、これまでですでに20チームというチーム数の多さを誇り、その一方でタレント不足が叫ばれても来たのです。そして今回チリワックの新チーム創設で、WHL全チーム数は21に。6月のWHL代表者会議では、エドモントンも含めて今後のエクスパンションの可能性も議論されるかもしれないとは言われていますが、エクスパンション権承認には代表者の3分の2の同意が必要だそう。他チームの同意を得るには、事前の根回しもしなければならないでしょうし、前途はまだ多難にも思えます。

オイラーズがAHLよりもWHLにこだわる理由はこんな感じです。

1)まずAHLロードランナーズの場合、来季NHLが開幕してしまったら訪れるファンは急減することが容易に予想される。1軍の試合が見られるのに、わざわざ2軍の試合まで見たいと思うファンは少ない。チケット価格もバカにならない。もちろん、トップチームが1軍のお膝元にあれば、スカウティング面や、ファームから昇格した選手たちの移動面でも、利便性、費用削減などの利点はある。

2)WHLの場合、AHLほど遠距離移動は少ないことから、航空運賃、ホテル代などが節約できる。選手年俸(AHLロードランナーズは総額200万ドル)も大幅に縮小できるなど、費用面で有利。

3)地元出身の選手たちを獲得したり、またレッドディアやカルガリーなど、アルバータ州の近隣都市とのライバル関係も相まって、ファンの根強い応援も期待できる。

・・・と考えると、オイラーズにとってWHLチーム経営はいいことづくめみたいですねえ。あ、その一方で、以前にもお伝えした通り、NHLカロライナ親会社が保有するOHLプリモス(デトロイト近郊です)は、現在売却の噂がありますから、やみくもにNHLチームがメジャージュニアチームを経営すれば儲かるというものでもなさそうですが・・・

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追記:Yellerさん@カルガリー在住のご指摘で、一部チーム表記を訂正させていただきました。Yellerさん、ありがとうございます。
# by hockeyworldjapan | 2005-04-25 08:13 | NHL overall