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は〜、時差ぼけ著しい管理人@ロサンゼルスです。 福藤選手、今日はすんごく冴えていました! キャンプ初日から今日ですでに4日目ですが、初日からいきなりスタートしたチーム内トーナメント(3つのグループに分かれています)「ロギー・ウ゛ァーションカップ」にて、自ら所属する「チームゴアリング」を見事優勝へと導きました。 そこで、まずは今季のキャンプここまでのあらましをお伝えしましょう。 キャンプ初日の9月14日は、早朝6:30から身体計測・健康診断。 通常はキャンプ初日はこれだけで終了してしまうチームも多い中、今季のキャンプ期間が通常よりも短いことを意識してか、その後いきなり練習〜ロギー・ウ゛ァーションカップ=試合形式と、慌ただしいスケジュールでした。 ちなみに福藤選手はこの日、早朝の身体計測・健康診断を済ませた後、7:45からGKのみの特別練習に参加。その後ビデオセッションをはさんで、8:40からチームゴアリングの全体練習がスタート。そしていきなり9:45から紅白戦1試合めの後半に出場。ここでは、チームゴアリングが、チームベリー(GKはクルティエ、テイラー、バーニエが所属)を6−0で下す快勝。チームゴアリングは、ガロンが前半25分、福藤選手が後半25分に出場しており、ともに無失点。マンスはフィジカルの遅れのため不出場だったそうです。朝7:45から練習開始で、氷上練習は12:30には全て終了というスケジュールは、どうもクロフォード新HCのアイデアらしい。あのお方、朝からテンション高そうですものねえ。 福藤選手にとっても、この朝早いスケジュールはちょっと厳しいらしく、目の下に青クマを作っていてビックリ。若くてもクマってできるのですねえ(笑)。 キャンプ2日目の9月15日も、また福藤選手は7:45からのGK朝練に出席。そのためには、6:30にシャトルで宿泊先ホテルを出発しなければならないそうです。そしてこの日も、朝9:45から試合(vsチームマーフィー)でしたが、チームゴアリングが4−2で勝利。福藤選手は後半15分をプレーして1失点。マンスと交代直後に許したゴールをかなり悔やんでいた様子だったそうです。 キャンプ3日目の9月16日は、福藤選手のチームゴアリングは試合なし。しかし9:45からGK特練でみっちりしごかれていました。ビル・ランフォード新GKコーチ指導の下、昨季までの「しごき魔コーチ」アンディ・ノーウィッキとは異なり、現役生活でのスタンレーカップ獲得GKの教えは、選手たちにも納得しやすい部分が大きいとか。ただシゴキをするだけでなく、理論について選手たちととことん話をするのが、どうもランフォードのスタイルらしいです。 現役時代のランフォードは、それほど「熱血」というイメージはなかったのですが、コーチとしてはかなりの熱血ぶりを早くも見せています。練習内容は、ゴーリーのポイントとなる動きをかいつまんで、みっちりやり、練習後はGKをひとりひとりコーチ部屋に呼び寄せ、ビデオを使って綿密に指導。昨季までのノーウィッキ氏がGK2、3人を集めて一緒にやっていたのと、またここでも違いがあるようです。 それにしてもランフォード、GKにしては、プレーヤースティックを握ってのシュートやパックハンドリングのスキルがうまくってびっくり! 福藤選手については「全体的にスキルはしっかりしている。あとはパックを目でしっかり追うようになれれば・・・今季はAHLでの仕事を争うことになるだろう」とコメントしていました。 ところで、今年キングズのキャンプで開催されているチーム内対抗戦「ロギーカップ」とはなんぞや? について説明したいと思います。まずはキングズの今季キャンプ参加選手総勢65人を3つのグループに分け、総当たり戦を最初の3日間で実施。最後は上位2チームによる決勝で優勝を争います。それぞれのチームには、70年代にキングズで活躍した往年の選手(ブッチ・ゴアリング、ボブ・ベリー、マイク・マーフィー)の名前を冠し、優勝杯の名前は当時の名GKロギー・ヴァーションの名前が付けられています。優勝したチームには、表彰式でヴァーション本人からトロフィーが渡されました。 で、福藤選手のチームゴアリングは、見事総当たり戦を1位通過で、キャンプ4日目9月17日の決勝に進出したわけです。決勝では30分1ピリオド(時計を止めずに流します)を2度戦います。2つのピリオドとも一方のチームが制すれば、そのチームの勝利。1つずつ各チームが勝利すれば、勝負を決するシュートアウト合戦がその後に用意されています。 決勝の相手は、総当たり戦では4−2で下している相手、チームマーフィー。相手チームのGKには、ジェイソン・ラバーベラ、バリー・ブラストがいます。 第1ピリオドは、チームゴアリングからはGKはマチュー・ガロンが、チームマーフィーからはジェイソン・ラバーベラと、共に大将格同士が出てきました。 ガロンはリバウンドからゴール前フリーで打たれる、GKとしては仕方ない感じで1失点した以外は、安定した出来。ロギーカップ3試合でたった1失点と、8人のGKのうち最高の出来を見せていました。 GKが3人いるチームマーフィーは、1ピリ20分を回ったところで、2番手のライアン・マンスにスイッチ。どうも試合前に「1番手はガロンが出るとして、2番手はどちらが出るか?」ということで、マンスと福藤選手との話し合いになったそうです。で、マンスが「俺が先に出たい」と申し出て、マンスが2番手となったそう。 しかしそのマンスですが、味方のペナルティは即PSという大会特別ルールにより、PSにてフロロフ、グリーナンに連続ゴールを許します。 一方のチームマーフィーのGKラバーベラも、それほどいい出来ではなかったのですが、30分を2点に抑えて、第1ピリオドは3−2でチームマーフィーの勝利となりました。 製氷を挟んで、続く第2ピリオドは、チームゴアリングはそのままマンスが引き続き出場。チームマーフィーはブラストがゴールを守ります。 2ピリ途中から、マンスの後を引き継ぐことが分かっている福藤選手は、2ピリ開始前にリンクに出て、入念にストレッチを実施します。 マンスが最初の10分を無失点に抑えて、福藤選手が出てきました。背番号はちょっと見慣れない33番。「特に愛着のない番号ですから」と福藤選手はさらりと語っていました。自分がこだわる44番は、ちなみに同じチームゴアリングのラウリ・トゥコネンが着けています。 福藤選手、この日は本当に冷静なプレーが光りました。例えばセーブ後パックがこぼれても慌てることなく、その後のカバーが非常に早かったです。しかし順調にセーブを重ねた終盤、外からDFグリーソンが放ったシュートが、誰かに当たって方向が変化。ブロッカーサイド上を抜かれて1点を献上します。 ただ、そうしたアンラッキーなゴールをされても、崩れないのがいいところ。その失点の直後のフロロフのPSを、グラブハンドでしっかり止めていました。 一方、相手GKブラストは、2ピリ開始間際にいきなりファーストショットでオサリヴァンにやられ、その後もコンロイのリバウンドショット、さらにPSでモーミナに決められ、このピリオドだけで3失点。チームゴアリングが3−1と試合をリードします。 リードされたチームマーフィーは、最後はGKブラストを上げて6人攻撃を仕掛けますが、その猛攻も福藤選手はよく凌ぎました。受けたシュートは14本(最初の枠内に流れて来たルースパックを止めたのを含む)で、1失点は上出来だったと思います。 そして、大会特別規定により、勝負を決するシュートアウトが実施されました。 2ピリに出場していた福藤、ブラストの両GKが、そのままゴールを守ります。 このPSに勝利したチームが勝ち。福藤選手にとって大きな見せ場がやってきました。 チームマーフィー1人め:× キングズでも若手シューターナンバーワンのフロロフ。すでに福藤選手はこの日、フロロフのPSを1本止めていましたが、今度はフロロフはあっさりとシュートせず、右側に巻き込んできました。そこを福藤選手はよく我慢してスペースを詰める好守ぶり。フロロフのシュートは枠を外れて行きました。 チームゴアリング1人め:× キングズの「PR部長」クレイグ・コンロイ。早いモーションから鋭いシュートを放つも、ブラストが身体を張ったダイビングを見せてセーブ。 チームマーフィー2人め:× キングズ期待の大型ルーキー、スロベニア出身のアンツィ・コピター。コピターもフロロフよろしく、右サイドから切れて、今度は左サイドを狙ってきましたが、福藤選手はこの動きをよく読んでセーブ。 チームゴアリング2人め:○ スピードとスコアリングが魅力のマイク・キャマレリ。キャマレリが放ったシュートは、大型GKブラストが守るゴールのグラブサイドトップコーナーぎりぎりに突き刺さってゴール。 チームマーフィー3人め:× ノア・クラークのシュートが、福藤選手のスティックサイドわきあたりを狙うも、枠を外す。 チームゴアリング3人め:○ エリック・ベランジェが、右からゴール前を左に横切り、ブラストが体勢を崩すのを我慢して待ってから、クロスバーすれすれにシュートを放つ技ありゴール。 ここまで両チーム3人ずつを終了して、2−0でチームゴアリングがリード。 福藤選手は、次のシューターを止めれば、5人まで行かずしてシュートアウトでの勝利となります。 チームマーフィー4人め:× ショーン・エイブリが、福藤選手の足元を狙ってシュートを放つも、きっちりとこれを福藤選手が前にはじいて、試合終了! 勝ったぞ! とグラブを掲げて喜ぶ福藤選手に、チームメートたちが駆け寄り、労をねぎらっている姿が印象的でした。 試合後、福藤選手は「昨季はシュートアウトでは一度も勝てなかったので、うれしいです」と語っていました。 2ピリのPS、シュートアウトと、フロロフを2回連続で止めたことについては、「マンスに対する1ピリのPSで、フロロフがファイブホールを狙ってきた動きを見ていたので、参考になりました。フロロフがファイブホールに来るのを想定しながらも、それ以外の方法として、おそらく巻いて来るだろうなと予想していたら、本当にそうなったんです」と、頭脳戦でフロロフを制したことを明かしていました。 また、クロフォードコーチは試合後、こんな風に福藤選手についてコメントしていました。 「福藤はルーキートーナメントの頃からずっと好調で、メインキャンプでも実力を発揮している。キングズのGK選手層をかけ登ろうという勢いだ。彼がマンチェスターでの仕事を争うのに実力は十分あると思うし、マンチェスターでいい仕事ができれば彼にとって今季プラスになるだろう。性格もいいしハードにプレーしている。彼のプレーには満足している。彼がこのままいいプレーを続けてマンチェスターでの座を確保し、NHLへの道を切り開いていって欲しいと思う。マンチェスターまでこぎつければ、NHLまではあと1歩だよ」 また、クロフォードコーチに、今季プレシーズンゲーム出場の可能性を問うと、 「今のところ1試合半分の出場を、ブラスト、福藤、バーニエのうち、誰を出場させるかを、向こう2日間で考えたい」 と答えていました。 ただ、9月18日のアナハイムでのプレシーズンゲームでは、すでにラバーベラ、ガロンの出場が決まっている模様。翌19日のステイプルズセンターでの試合では、その半分をクルティエが出場することが予想され、残り半分をこの3人のGKのうち誰か、という決定を下すというのが、クロフォードコーチのコメントの趣旨かと思われます。 それにしても福藤選手、昨年のキャンプは、各練習でも100%を出し切っていて、余裕がなく悲壮感が漂っていたのです。でも今年は違う。練習では冷静で穏やか。でも今日の試合前の練習で集中力を徐々に高め、試合でいいものを出すという方法でいい結果を出している感じで、すごくいいです。 しかしながら、キングズ首脳陣は、福藤選手の好守に気を良くしながらも、当面は1軍契約GKが3人(クルティエ、ガロン、ラバーベラ)いるという状況に頭を悩ませることになりそうで、そっちで手一杯という雰囲気もしっかり伝わってくるのです。 まあ、このあと順調に、1軍契約GKを3人から2人に減らしてくれれば(ラバーベラをどこかのチームがウエーバーで引き取ってくれれば)、福藤選手、うまく今季はマンチェスターで開幕スタートが切れるんじゃないか、という気がしているのですが・・・さてどうなるでしょうか? 今後も注目してくださいね! #
by hockeyworldjapan
| 2006-09-18 15:56
| Fuku-chan report
先日のプレシーズンゲーム@東伏見(9/3)にて、王子製紙の新監督・ロナルド・アイバニー氏とショートインタビューを行いました。
以下は、その抜粋です。 HWJ:ここまでのところ、シーズン開幕に向けて王子の準備段階はいかがですか? アイバニー監督:まだまだやることは多い。ここ2週間キャンプを張って練習をつんできたが、選手にとっては新しいシステムを試しているので、少々時間が必要。私のやりたいホッケーに順応してもらうまで、時間がかかりそうだ。 8月14日に氷上練習を開始するというのは、王子にしては珍しく遅いことなのかも知れないが、北米の基準では全然遅くない。8月14日にスタートして、9月23日開幕だから、約7週間も間にある。その間にプレシーズンゲームもたくさんあるし、かなり長いキャンプ期間だと言える。 しかし今週の3試合は私にとっていい評価材料になった。誰がどういう仕事を担当できるか、この3試合でかなり見極めることができたと思う。 HWJ:王子にはどういった経緯でかかわることになったのですか? 契約を交わしてから、ここまではどんな流れでしたか? アイバニー監督:過去27年間はヨーロッパでコーチを務めて来たので、日本に来ることは全く頭にはなかったが、マーク・マホン氏と話をするようになって、王子の監督職が空いていることを知らされた。興味を持った私は王子の関係者と接触し、その後この仕事のオファーを受けたんだ。7月には日本に来ることを決めていた。 王子と契約を交わした後はすぐ、苫小牧に1週間やってきて選手たちが陸トレをやっているのを見た。その際に、陸トレの指導担当者や、王子のフロントやアシスタントコーチたちとも、今季王子をどういう方向に持って行くのか、じっくり話ができたつもりだ。 HWJ:アジアリーグでは今季から新基準が導入されていますが、現在の導入状況についてどう思いますか? この新基準下で日本のホッケーはどう変わるのでしょうか? アイバニー監督:新基準については、心配事にもなりつつある。そもそも新基準というのは、試合をスピードアップしようという概念に基づいているもの。新基準のうちのいくつかは妥当ではあるが、時として取り締まりが行き過ぎるきらいがある。なのでリーグ開幕後1ヶ月くらいは、5オン4、5オン3、4オン3のようなシチュエーションが増えるんではないか。 ウチとしてそれが困るというのは、できるだけ若い選手を積極起用したいという気持ちがあるから。しかしPK、PPの状況が多くなると、経験のない若い選手に出番を与えることは難しくなり、彼らがベンチを温める時間が増えてしまう。 なので、私としてはできるだけ日本では、他の諸国よりもレフェリーが早くこの新基準に慣れてくれれば、と望んでいる。さもないと、PP、PKの状況が増えすぎて、若手の育成に費やす時間が減ってしまう。 私の戦略は、チームの主力数名だけに頼るものではない。ベンチにいる全員の選手をうまく起用し、チーム全員で試合をつくっていきたい。選手たちには自分たちの力を見せるようにプレー機会を与え、自信を付けさせたいんだ。ハードにプレーする選手であれば、プレー時間はちゃんと与えるつもりだ。 HWJ:日本のホッケーチームを実際に指導してみて、改めて感じる日本選手たちのレベルとは? アイバニー監督:私は過去にイタリア代表のアシスタントコーチを務めてきたし、日本代表のプレーは長年の経験でよく知っている。日本の選手のスピードやスキルレベルについては熟知しているつもりだ。日本の選手はスケーティングに優れているし、スピードがあって、パックハンドリングもうまい。日本のホッケーが次なるレベルに到達するには、まずは決定力と、それにフィニッシュに至るまでのホッケーセンスも必要だ。ただ実際に、王子を含め、クレインズ、西武など、日本には多くのスキルの高い選手がいる。改めて観てみて、そのレベルに目を見張っている。 HWJ:これまでのご自身のホッケーキャリアについて、教えていただけますか? アイバニー監督:私はトロント育ちでジュニアまでトロントでプレー。その後アメリカの大学で奨学金を得たんだが(オハイオ州立ケント大学)、長い話を短くすると、その後自動車事故に遭い、現役選手としてのキャリアを絶たれてしまったんだ。今は人工股関節なんだ。ずいぶん昔の話だけどね。そういうことがあって、24歳で母校のケント州立大学でコーチへの道を歩き始めた。 つまり1974年からずっとコーチをしていることになるね。1978年にヨーロッパに渡り、イタリア、オーストリア、スイス、ドイツのチーム、それからイタリア代表チームにも関わるなど、長くヨーロッパでコーチができたのはラッキーだった。おかげでイタリア語にドイツ語が話せる。日本にいるうちに、日本語も話せるようになりたいね。 #
by hockeyworldjapan
| 2006-09-10 18:08
| アジアリーグ
昨日は、東伏見でのプレシーズンゲーム初日取材に出かけてきました。
その試合前に、メディア向けに日ア連レフェリー委員長福田弥夫氏から、今季からIIHFで導入されるルール改正と新基準についての説明会がありました。 福田氏によると、IIHFのルール改正は4年に1回。五輪が終了した直後の年次総会で新ルールが承認されるというサイクルだそう。そちらで承認されたルール改正の主な内容は以下の通りでした。 アイシング:ゴールクリーズをパックが通過してもアイシング。GKがクリーズを出てパックを追ったらノーアイシング。クリーズ外にいる場合、ただちにクリーズ内に戻ればアイシングの対象に。 フェイスオフの場所:エンドゾーン内で試合が途切れた場合は、すべてエンドゾーン内のフェイスオフサークルから再開。仮想線上でのフェイスオフという概念はなくなる。しかしニュートラルゾーンに関しては、フェイスオフスポット以外での仮想線上でのフェイスオフ再開は今後も適用される。 オウンゴール:ディレイドペナルティ中に、パックキャリアがパックをミスハンドリングし、味方のゴールにパックが収まった場合、過去にはノーゴールとされていたが、今後はゴールが宣告される。ただし、ペナルティを犯した側の選手が影響を及ぼした場合は例外とする。 危険なペナルティ:ハイチェック、ローチェック、後ろからのチェック、ニーイング、スピアリングなどの危険行為に関しては、レフェリーが即座にマッチペナルティを宣告できる裁量を与える。 それに加えて、NHLで昨季から既に導入されていた妨害行為に対する新基準について、DVDを用いた説明が実施されました。 昨季のNHLでの経緯を追ってらっしゃる方はすでにご存知だと思いますが、その新基準とは? と一口で説明すると「過去にルール上に記載されていた妨害行為に対し、新基準をもって厳しく取り締まる」ということ。すなわち既にルールブックで禁止されていたのにもかかわらず、グレーゾーンの許容範囲が多過ぎて、試合が「クラッチ&グラブ(いわゆる掴み合いですね)」になってしまった。これにトラップなどの戦略も相まって、1試合あたりのスコアリングが地を這ってしまったNHL。これでは試合が面白くない、という観点から「妨害行為を徹底取り締まりする」という決断を昨季下したわけです。これによって、昨季のNHLでは1試合あたりの得点が6.17までアップ(導入前の2003−04年は5.14)したという実績があります。 さて、この新基準の日本導入に備え、日ア連はまずNHL審判部長スティーヴン・ウォルコムとコンタクトをとり、日本語吹替の映像をウェブ上で無料配信できるよう了解をとりつけました。実際にはIIHF製作のDVDもあったそうですが、今年7月の会議で配布されたばかりだったため、日本語吹替版作成などの準備に間に合わなかったそう。よってこの説明会では、NHL製作のDVDの日本語吹替版が使用されました。 そこで、今季から厳しくなる基準の代表数例が紹介されました。例えば・・・ *パックキャリアに対して、例えばスティックを使って相手の身体を目がけてチェックしていくプレーは即ペナルティになる。 *またパックキャリアがパックをダンプインし、パックを手放したにも関わらず、その後しばらくしてからクリーンなチェックを放った場合、これはタイミングが遅いチェックとみなされペナルティとされる。 *自陣でサイズのあるDFがよく使っていた手段だが、コーナーで相手選手に覆いかぶさるようにボード際に押さえつけるプレー(ピンと呼ばれてます)もペナルティの対象。またゴール前では、相手選手を掴んだり、倒すような行為は即ペナルティ。 *攻撃側にもペナルティが課せられる可能性あり。パックキャリアが前方にいる相手DFに対し、例えば片手でパックハンドリングしながら、空いてるもう一方の手で相手DFをつかんで引きつけ、テコの原理で自分が勢いをつけて前に出るという行為は、今後ペナルティとして宣告される。 ・・・などなど、昨季までは上記のそうした「技」でいい味を出していた選手もいたとは思いますが、そうした「技」は今後全て反則行為とみなされる。選手によっては、かなり重大なアイデンティティクライシスを迎えているかも知れません。 この新基準の導入の経緯ですが、まずは昨年11月、IIHFルネ・ファーゼル会長から各国連盟にその旨の通達がまずあったそうです。そして12月のU20大会に、早くもその新基準を採用。バンクーバーで開催されたこのU20大会を、日ア連から福田氏と、現役レフェリーの高橋氏が視察。新基準の概要メモを作成し、日本の主要レフェリーに配布したそうです。そこで、2006−07年シーズンからのアジアリーグでの導入を通達しました。 また2006年の世界選手権でもこの新基準が採用されることに備え、2月の長野カップを新基準下で開催。すでに日本代表組は、この長野カップ、世界選手権といずれも新基準下でプレー経験があるわけです。またちょうどこの頃、日ア連のHPにはすでにNHLによる新基準DVDがアップされていました。 さらに春の関東大学選手権でも新基準を採用し、観客への説明用として2枚紙の説明文書を作成、配布していました。 そして7月に、レフェリーに対し、地域別新基準の説明会を実施。また実業団各チームへの説明なども個々にレフェリーが赴いて行われているようです。 日本国外のアジアリーグに目を向けてみると、中国ではカナダのレフェリー委員長を招いて、長春で新基準下でのプレシーズンゲームを実施。来週には韓国でスイスからレフェリーのスーパーバイザーを招き、同様にプレシーズンゲームを開催するそうです。レフェリーの評価キャンプも実施予定で、ここで「ランク1」を獲得しないと、アジアリーグではレフェリーを務めることはできないのだとか。ここでは日本人レフェリーはもちろん、韓国、中国のレフェリーも評価されるのだそうです。 で、昨日のプレシーズンゲーム。新基準の下、実際の試合はどうだったのか? 結論から言いますと、選手は試合の最初から最後まで戸惑いっぱなしでした。 試合の最後にはお約束と言う感じで、やや基準が甘くなったきらいはありましたが、選手たちがしきりに首を捻るようなシーンが目につきました。 両チームのマイナーペナルティの数は西武17、バックス19と、かなり多め。 ペナルティを宣告されるたびに、その内容を選手がレフェリーと確認する姿が目立ちました。しかも試合開始直後からペナルティのオンパレードで、どちらのチームもリズムが掴めない。選手は十分気をつけている様子ではありましたが、それでもペナルティをコールされて当惑。さらに2ピリあたりから昔のクセが顔を出し始める。頭では理解していても、条件反射でついスティックが出てしまうペナルティが頻出する・・・という感じの流れでした。 そんな中「新基準、こんな選手がイケそう、こんな選手がやばい」という予想が、少しずつですが見えてきました。(昨季のNHLを観ていれば大体予想は付くのですが、ここはアジアリーグ限定ということで) その1:スピードがあっても、スキルがない選手は厳しい。 守備側の選手は、ペナルティをコールされやすい身体に向けてのプレーをよりもむしろ、パックに集中してくる。それだけにパックキャリアがパックハンドリングのスキルが低い選手だと、以前よりもパックを途中で奪われる可能性が増える。 その2:パス、シュートの技術がない選手は厳しい。 ゴール前のPKの守りなど。低い位置に守備側の選手が固まり、相手の身体を抑える代わりに、パスライン、シュートラインを読んだ動きをしてくる。攻撃側はパスやシュートの技術がよくないと、パックが通らない。なので、PP/PKの状況が激増しても、高得点の展開になるとは限らない。 その3:巧みなシュート、パスのできるポイントマンが有利に。 DゾーンでのFWがあまりアグレッシブに守りに来ないので、ポイントの位置での選手の動きが以前より余裕がでる。 昨日のバックス3点目のPPゴール(村井→有沢、有沢のワンタイマーが西武G片山のショートサイド、ブロッカー上を抜く)はまさにそんな感じでした。 またこれ以外では、DF選手が後ろからスピードを付けてドライブし、パックを運んでいくプレーも、相手にとっては止めるのが厄介で、有効なプレーに見えました。 もちろん上記の3点ですが、新基準になって試合がこなれていくうちに、状況は変わっていくかも知れませんので、悪しからずです。 それにしても、ヨーロッパのトップリーグではすでに昨季から導入済というこの新基準。スイスでは会場のビデオスクリーンに、新基準についてのビデオを流し、ファンへの説明としていたそうです。しかし「日本では、そうした施設があるのは、ビッグハットくらいなのが残念」と、福田氏は語ります。 そうしたインフラ上の制約はあるにせよ、今回のメディア向けのような新基準説明を、アリーナでファンの皆さんにも行えないものでしょうか? ビデオスクリーンを使えないのなら、例えばピリオド間に学生プレーヤーにお手伝いしてもらって、DVDで説明される状況をリンク上で再現するというくらいの努力は払ってもいいんではないかと思っております。 あと、NHLよろしく、レフェリーが試合中ワイヤレスマイクを身につけるのはどうでしょう? もちろん試合再開後に場内アナウンスは行われるのですが、リアルタイムでジャッジの内容が分かるというのは明解かつ便利です。例えばレフェリーのジャッジのジェスチャーと、ペナルティの種類がこれで観ている側としても一致するし、新しいファンの方はこれでレフェリーのジャッジを少しずつ覚えて行くことができるというメリットもあるんではと。 いずれにしても、慣れるまでは選手も観る側も混乱しそうですね・・・ #
by hockeyworldjapan
| 2006-09-01 12:45
| アジアリーグ
久々のNHLノートブック、更新です。
とはいえ、その内容はアジアリーグ関連のニュースなのであしからず・・・という感じなのですが。NHL関連ニュースは、気が向いた時にNHL備忘録でアップしていますので、そちらを覗いていただきたく・・・よろしくお願いいたします。 さて、ホッケーシーズンも徐々に近づき、ということで、昨日は東大和での西武(あくまでも仮称です。昨季までのコクドであります)の練習取材に出かけてまいりました。西武といえば、本拠地は東伏見なのですが、その東伏見が8月下旬はアイスショーのため塞がってしまってるのだとか。27日までアイスショーが開催され、その後3日間は氷の設営をチェンジ(フィギュアとアイスホッケーでは氷の厚さが違うため。フィギュアが7cmに対してホッケーは3.5cm)せねばならず、30日までその作業が実施されるそうです。そして、ぶっつけ本番で31日からプレシーズンゲームが開催されるという状況であります。 よって、8月12日に1ヶ月間の軽井沢キャンプを打ち上げた後、西武の氷上練習はずーっと東大和で行われてきました。その状況に岩崎監督は「いちおう東伏見がホームリンクなんですけどね」と苦笑いを見せます。 さて、ここ数年西武の選手たちは、「ホッケー選手も社内の仕事にもっと関わるべき」との社内方針から、オフには各事務所に割り振られ、実際に営業などの仕事をかなりこなした時期もあり、オフのトレーニングは選手の自主性に任されていたようです。 しかし今季は会社統合などの裏事情もあり、選手に対する社内研修は実施されたものの、早い時期からチーム単位での、トレーナーの指示の下でのトレーニングをスタートできたそうです。 岩崎監督は、この夏の成果をこう語ります。 「おかげで、軽井沢キャンプが始まる頃には、身体がすでに出来上がっている選手が多かったです。軽井沢に行く前はウエイトとランニング中心で、軽井沢に行ってからは軽井沢の地形を利用した陸トレに移行したりと・・・バランスよくできたんじゃないでしょうか。 軽井沢のリンクの裏手のスノーボード用のスロープをダッシュしたり、芝生の上で膝などのケガを気にせずにトレーニングできたり。ロングランをやるにしても、東京だと熱過ぎて熱中症になってしまうし、空気もあまりよくないですからね。昨年は5日間しか軽井沢でやれませんでしたが、今年は1ヶ月みっちりできたし、シーズンに向けていい準備ができました。 スケジュールは三勤一休だったんです。こっちの方が、5日やって2日休むより集中できる。週末休みとかだと、週の半ばでちょっとペースが落ちたりする可能性があるんですよ。そんなスケジュールだったので、選手にとってはオフの時期が短かったという印象があったかも。でも軽井沢キャンプは1ヶ月だけなので、そこは家族に理解してもらうしかないですね(笑)」 最近は北米並みに、氷上練習に移行する時期が遅くなってきていた日本のホッケー界であるが、今夏の西武は氷上練習を6月末からスタート。その大きな理由が、今季からアジアリーグでも正規導入されるルール変更であります。妨害行為を以前よりかなり厳しく取り締まるこのルール変更導入後は、試合がスピードアップすることが予想されている。そのあたりを見越して、陸トレでは足腰の強化に重きを置き、戦略面などの徹底も含めて氷上練習を早めに始動したのだそうです。 そうなると、いったい西武はルール変更対策として、どういう練習をやってきたのか? そのあたりが当然気になるところですよね? 若林クリスコーチは、こんな風に説明してくれました。 「まずは、テンポの早い練習が主体です。トランジションを意識したスピードアップした試合展開に対応することと、それから1対1の守り方を集中的にやっています。 1対1の練習では、その感覚を掴むため、リンゲット(1963年カナダ・オンタリオ州ノースベイ生まれのスポーツ。アイスホッケーに似ているが、パックの代わりにゴム製の輪を使い、スティックはブレード部分がなくシャフトのみで、輪を引っ掛けてドリブル、パスを行う。カナダでは女子を中心に競技人口約5万人。カナダ以外にも、フィンランド、スウェーデン、ドイツなどで楽しまれている)を3回くらい実施しました。これによって、攻めの選手は自由にハンドリングできるんですが、守りの選手はスティックで怠惰には守れないので、身体を動かしてボディコンタクトをする必要が出て来るんです。そういう形で、コーナーの1対1の練習をやってみたんです。 ルール変更導入後の昨季のNHLを観た感想ですが、以前よりフィジカルなプレーが目立っていたと思うんです。でもアジアリーグでは、ああはならないんじゃないか? という気がしてるんですよ。NHLの場合、選手の身体が大きくて、リンクが狭いからそうなったんじゃないか? と思って。実際、(国際規格のリンクを使用する)トリノ五輪では、それほどフィジカルな試合展開ではなかったですしね。 ルール変更を選手に理解してもらうのには、まずはNHL製作のDVDを、軽井沢キャンプの時に日本語に訳しながら確認するセッションを行いました。それからトリノ五輪の試合で作ったビデオクリップも少し紹介したり・・・。軽井沢キャンプの最終日にはレフェリーに来てもらい、紅白戦で笛を吹いてもらったんです」 しかし、その紅白戦では、かなり選手たちの戸惑いが目立ったそうです。特に自陣の守りや、ブレイクアウトでのシチュエーションでは、昨季までであれば相手がペナルティをコールされるべき行為で、逆に味方がペナルティを課されるシーンもあったとか。そうした判定の理解の難しさも含め、ルール変更についての不安を、岩崎監督はこう漏らしていました。 「厳しくなるのはいいんですけど、レフェリーによって基準にばらつきがあったりすると困るでしょうね。それに反則が多くなって、今年春の大学選手権のように試合がつまらなくなってしまう可能性もある。1対1のシチュエーションで、相手を抜いていくプレーが増えれば、面白いとは思うんですけどね」 チームスタッフの不安は尽きないところではありますが、昨季のNHLでのルール変更導入では、試合がスピードアップし面白くなったという意見が多勢を占めておりました。それでは、アジアリーグでのルール変更導入は、どういった効果をもたらしてくれるのでしょうか? 若林コーチは、こう続けます。 「やはりスピードのある選手は有利でしょうね。しかしこれまでの癖で、1対1でチャレンジできるのに仕掛けていかない選手は、その癖を直さないといけませんね。 守りに関してはスピードのない選手は苦戦するでしょうが、それがどこまで厳しいかはまだ未知数です。ニュートラルゾーンで抜かれるのはかなりきついとは思いますが、Dゾーンである程度守れれば問題ないですから。変更後のルールであれば、1対1の状況なら守備側は誰でも負けてしまうような内容。なので、重要なのは、1対1の状況で負けた後にどうするか、なんです。 NHLを観てると、自陣ではFW2人も上の方の守りは捨てて、かなり低い位置で守っているんです。アジアリーグでも、おそらくそういう守りが主流になるのでは? という気がしますね」 そういう意味でも、8月31日から4日間のプレシーズンゲームは、各チームにとっても、レフェリーたちにとっても、いい意味での試金石となりそうです。 さて、昨日の西武の氷上練習には、日本代表GKコーチに今季から就任したアンドリュー・アレン氏が、飛び入り参加していました。 アレン氏は、昨季までAHL、ECHLで現役ゴーリーとして活躍しており、現在はオタワ大学でもコーチとして教えているというお方。マーク・マホン日本代表コーチのコネクションで、今後は主に女子代表を指導していくそうです。 この夏は、日本のホッケー処を訪ねて全国を訪問中で、西武の練習参加はこれが2日目で最終日。打ち上げの意味もあって、この日の練習の最後は、アレン氏のGK向けドリルを実施したのですが、これが大盛り上がり。2オン0のシチュエーションでのゴール合戦(GKは菊地&片山組に、福藤&松本組と分かれてました)となり、リンクには選手たちの元気な声が響きまくっておりました。 あ、余談ですが、駒大苫小牧高校のOBが多いのも、日本のアイスホッケー界の特徴。 この前々日のオフ日だった日曜日には、OBのひとり神野選手が甲子園に応援に駆けつけ、死闘15回の様子を見届けて来たそうです。 そんなこんなで、今季もアジアリーグホッケーをよろしくお願いいたします。 #
by hockeyworldjapan
| 2006-08-22 14:13
| アジアリーグ
NHL備忘録の方にすでにアップしておきましたが、こちらにも一応載っけときます。
イースタン オタワ(1位)ータンパベイ(8位) ゴーリーはどっちもどっち。プレーオフでの故障からの復帰を目指してたハシェクだが、マレーコーチは練習時間をエムリー、モリソンの2人に譲るようにハシェクに命令。ファーストラウンドでの出場はおそらくないものと考えられる。エムリー、モリソンともにサイズがあるが、経験不足に加えプレーにやや癖あり。相手シューターは最初は攻めあぐむかも知れないが、シリーズが長引くにつれて攻略法はじきに分かってくるはず。ライトニングは終盤の結果で、一応グレアムが1番手の模様。しかし今季はシーズンを通してグレアム、バークと、好調な方をトートレラコーチは起用しており、1人がコケたら2人めにあっさり切り替えてくることが予想される。 FW、DFに関しては、セネターズが終盤欠場者が戦列復帰し、ほぼフルメンバーで戦えることから圧倒的有利とされる。トップライン、セカンドラインの強烈さは言うまでもなく、ヴァーメットを中心とするサードラインも相手をきっちり抑えられるし、4つめのフィッシャー、シェイファーあたりにも得点力があるのが恐ろしいところ。ライトニングは優勝時の2004年のようなチームケミストリーは、残念ながら今季全く感じられない。見ていて面白いホッケーが売りだったはずなのに、閉塞感漂う戦いに終始した。リチャーズ、サンルイが終盤調子をアップさせてきたものの、総合力で圧倒的にセネターズが上回ると評価し、4勝2敗でオタワの勝利と予想。 カロライナ(2位)ーモントリオール(7位) カナディアンズは、中盤の追い上げにゴーリーはクリストバル・ユエを起用、しかし終盤はデヴィッド・アービシャーがゴールを守る機会が増えており、どちらのゴーリーを1番手に据えるのか? という問題が新たに発生。オフェンス面では、今季コイヴと組むクリス・ヒギンズがブレイク。高いスキルを持つコヴァレフに、マイケル・ライダーも好調だった。 一方のハリケーンズは、2002年のプレーオフに、相手の守りを突き破るような働きで活躍したエリック・コールがいまだ故障者リストに入っているのが痛い。とはいえプレーオフを睨んでじっくり戦力強化し、センターだけでもストール、ブリンダモア、ウエイト、マット・カレンとかなり豪華版。しかし終盤Gマーティン・ガーバーの調子を含め、チーム全体の調子がいまいちだったのが気がかり。選手層を比べればハリケーンズの方が有利であり、今季はホームでの成績がリーグトップという強さがあるのだが、カロライナでの第1戦にカナディアンズが勝利したことから、4勝3敗でモントリオールの勝利を予想。 ニュージャージー(3位)ーNYレンジャーズ(6位) 終盤11連勝でレギュラーシーズンをフィニッシュしたデビルズ。この期間のマルタン・ブロデューアの安定感は極めつけだった。さらに今季はルール改正の恩恵を受け、小粒FWブライアン・ジオンタが大ブレイク。ジオンタ、ゴメス、パリジーで組むこの小さいけどスピーディなラインをどう攻略するかが、ブロデューア攻略とともに相手チームにとっては最大のポイントとなる。ジオンタ、ゴメスと切り離したエリアシュと組むランゲンブルナー、ブリリンのセカンドライン以降が、プレーオフで長らえるためには発奮が必要となってくる。 レンジャーズは、デビルズと逆に終盤はかなりの息切れ状態。五輪金メダル獲得に輝いたヘンリク・ランドクイストも臀部故障に見舞われ、プレーオフは病み上がりスタートと不安を抱える。トレード期限前に獲得したオゾリンチは、ヘルシースクラッチになるなど活躍していないし、カスパライティスも故障持ちで、トップラインは風邪引き。ただし、短期決戦となると目の色を変えるのはヤーガー、ストラカ、ロジヴァル、マリクを中心とするチェコ人選手たち。長野五輪や世界選手権で見せるあの恐ろしい集中力は、誰にも予想できないサプライズをもたらす力を持っている。さらにチームカナダ出身トム・レニーは、緻密なホッケーでデビルズのトップライン封じを講じてくる一方で、ヤーガーのラインを逆にデビルズのマッデン、パンドルフォらのチェッキングラインがびっちり抑えてくることも予想できる。第1戦ではヤーガーが故障、大差でのデビルズの勝利となったが、近隣チーム同士の火花バチバチという背景もあって、意外にシリーズは長引くかも? 4勝3敗でニュージャージーの勝利と予想。 バッファロー(4位)ーフィラデルフィア(5位) なぜか例年プレーオフになると点が取れなくなる傾向があるフライヤーズ。近年プレーオフのここ一番に決定的ゴールを決めてくれたキース・プリモも今季は戦列離脱で、フォースバーグの太もも付け根故障がぶり返さないことを祈るのみ。もちろん、ジェフ・カーター、マイク・リチャーズ、RJアンバーガーといった若い選手たちが、Xファクター的存在として今季は台頭しているが、基本はサイズのあるFW、DFによるやや大味な展開。FWは小粒だがスピーディー、しかもバランスが取れた戦力を有するセイバーズに、フライヤーズの重量級DFが振り回されるのは容易に予想できる。例年プレーオフでは、急にレフェリーがペナルティをとらなくなる傾向があるが、今季新ルールの下、レギュラーシーズン同様にホイッスルが吹かれるのであれば、難なくセイバーズが乗り切るのでは? プレーオフでの1番手ゴーリーは、セイバーズはライアン・ミラー、フライヤーズはロバート・エシュということになっているが、状況次第でそれぞれの控え(ビロン、ニートゥマキ)との入れ替えの可能性は十分。4勝2敗でバッファローの勝利を予想。 ウエスタン デトロイト(1位)ーエドモントン(8位) 今季プレジデンツトロフィー獲得に、終盤は21試合中20試合で1ポイント以上を挙げたという横綱相撲ぶりのレッドウイングズ。一方、プレーオフがかかっていた終盤も、のらりくらりという感があったオイラーズ。成績だけで比べるとあっさり「レッドウイングズの4勝0敗」と言いたくなるところだが、実際にはもつれるシリーズを予想したい。 レッドウイングズに死角はあるのか? というと、そう簡単にあら探しはできるものではない。ただ、今季はロードでは好調だったもののホームではなぜかいまいち、主力ダツックが病み上がり、過去の歴史においてプレーオフではトラップしてくるチームに苦戦する、などの材料が挙げられる。 そのあたりを睨み、オイラーズはすでにトラップの練習などでシリーズ準備をしているという報道あり。バランスのとれたレッドウイングズのラインに、ペカやプロンガーなど守りの職人たちをどう対応させてくるのかも、コーチ陣の腕の見せ所である。フェイスオフでの強さを活かし、レッドウイングズにできるだけパックを支配させず、スピードある走りと戦略的守りで上回ることができれば、オイラーズにもチャンスの芽が出てくる。レガシー、ロロソンの2人のゴーリーは、実力、経験から言ってほぼ互角。もつれる材料は十分にあると見て、4勝3敗でデトロイトの勝利を予想。 ダラス(2位)ーコロラド(7位) スターズの今季好調の要因としては、ルール改正によるマイク・モダノの復活、フィンランド選手たちによる選手層底上げ、DF選手の充実、シュートアウトでの強さなどがあったように思う。ただシーズンを通して、ディビジョントップの一人旅を続けてきたチームだけに、戦いぶりにあまり危機感が感じられない。ビル・ゲリンの不振ぶりも目につく。一方のアバランチは、ウエスタン7位とはいえ、これはノースウエストという厳しいディビジョン内での戦いがかなり影響していたようにも思える。今季開幕後は戦力ダウンが囁かれたものの、実際にチーム得点のみで見れば、ウエスタンでは2位とかなりの強力ぶり。ましてや、相手のスターズに対しては、2004年もファーストラウンドで撃破している相手でもあり、苦手意識はない。GKターコの攻め方も選手たちはよく分かっているのでは? レギュラーシーズン終盤もよくなかったセオドアが、このシリーズでどれほどやれるのか全く読めないのだけど、スターズの選手はあまりセオドアの攻め方を実はまだ分かっていないのでは? という気もする。ということで、4勝3敗でコロラドの勝利を予想。 カルガリー(3位)ーアナハイム(6位) 東のバッファローvsフィラデルフィア同様、レフェリーの判定基準によって流れが左右されそうなシリーズ。フレームズはダリル・サターコーチの下、得意のタイトチェッキングな守りでダックスのスコアラーをびっちり抑えたいところ。特に今季はオフェンス面でやや苦しんでいるだけに、失点を最小限に抑えて、守りで逃げ切るという展開が勝ちパターンとなっている。 一方のダックスだが、シーズン前半からセラニ、マクドナルドというところが新ルールの恩恵で活躍。さらに中盤から若手のルパル、ゲツラフ、ペリーあたりが戦力押し上げに成功し、一気にプレーオフ圏外から好位置の6位シードまで追い上げた。そのあたりの勢いは買いたいところ。 キッパーvsジギーのゴーリー対決も見物だが、今季に関していえば圧倒的にキッパーが優位にあることは間違いない。攻撃力と勢いではダックスに軍配を上げたいところなのだが、ゴーリーとコーチングではフレームズに分があり。予想するには非常に悩むところだが、第1戦でジギーがいきなり「下半身の故障」にて欠場。ブリズガロフの方が実はいいんではないの? という声もあるだろうが、ジギーが完調ではないのは痛いということで、4勝3敗でカルガリーの勝利を予想。 ナッシュビル(4位)ーサンノゼ(5位) 今季のナッシュビルのチーム戦力は、新ルールに即した素晴らしい内容だった。それゆえに、やはりヴォクーンの戦列離脱は痛すぎる。代わって控えのメイソンがよく頑張っていたのだが、正直言って私は彼のプレーを1試合ちゃんと通しでみたことがないので、正当な評価が下せず申し訳ない(笑)。ただ相手チームにとっても多いに未知なる部分が多いため、最初の3試合くらいは相手チームが攻めあぐむという利点はあるかと。しかしヴォクーンのように「ゴーリーの違いで勝利した」という結果をもたらせるかどうか? というと疑問が残る。終盤にはサリヴァン、ジドリツキーと、プレデターズのオフェンスを支える主力が次々と故障していたのも不安材料。この2人が100%でプレーできるのなら彼らにも十分チャンスはあると思われるのだが。 一方のシャークスは、ソーントン(アートロス)、チーチュー(リシャール)がタイトルを大逆転で獲得。サイズ、パワー、テクニックのあるこの2人は、他チームがどうあがいても止められない凄さを持つ。ホームアドバンテージを持つプレデターズはこのトップラインに、誰をマッチアップさせてくるかが大きなポイント(DFはウイットあたりが予想されている)だが、FWは全体的に小粒、DFも素材はいいがまだ若いというのは、対シャークス(というかソーントン&チーチュー)にとって不利に働く。不安があったシャークスGKも、終盤はトスカラが安定していた。ということで、第1戦は落としたものの、4勝2敗でサンノゼの勝利を予想。 ま〜、ファーストラウンドは予想的中した試しがないのですが。今年は比較的ギャンブルせずにオーソドックスに攻めてみました。さあどうなるか。 #
by hockeyworldjapan
| 2006-04-24 08:29
| NHL overall
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