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AHL再編中

NHLにとって、3Aリーグに相当するAHLで再編が進んでいます。

傾向としては、こんな感じです。
(1)「1対1」化:NHL1チームにつき、そのトップファームとしてAHL1チームという方向性
(2)「より近く」:西海岸のチームが、東海岸の端っこのトップファームを経営・・・というパターンから脱却するチームが続出中

(1)については、経費縮小という名目から、他NHLチームとファームを共有するパターンが近年は多くもありました。しかし、そうするとなかなかファームから選手が成長してこないというジレンマが経営陣としては当然あったわけです。特にNHLでは、ヘッドコーチによって採る戦略も様々。よって単独でファームチームを直接経営、あるいは提携を結ぶことにより、若手選手たちはファーム時代から1軍での戦略を徹底されることになるのです。そして、いざ1軍昇格の運びになれば、そうした若手が戦略理解に苦しむことはない。ファーム上がりの選手は、すんなり1軍のプレーに溶け込めるというわけです。

(2)については、ひとつのチームのファンになって、その地元の新聞記事などをじっくり追いかけている方なら、その有用性はもうお分かりでしょう。1軍で故障者が続発した場合に、ファームから選手が供給されるわけですが、そのファームチームが遠隔地にあったりすると、昇格した選手が試合に間に合わないなんてケースはざらなのです。また、そのファームでの若手の成長をGMらがスカウティングするのに、遠隔地だと当然旅費もかさみます。近場にあれば、車でちょっとドライブすれば、すぐにファームの試合を見られる・・・なんて便利な環境になるわけです。

そんな事情もあって、リーグ開設70周年という記念すべき来季(2005−06年)のAHLでは、以下の4チームの新加入が決定。これでチーム数はNHLと同じ30チームとなる予定です。

*アイオワ・スターズ:来季からNHLダラスのトップファームに。元NHLハートフォード、ピッツバーグのオーナーでもあったハワード・ボールドウインが共同オーナーを務める。スターズとは5年契約。ボールドウインはケンタッキー州ルイビルにチームを所有していたが、そのチームは運営を休止に。これをアイオワ州デモインに移転させることで、スターズのファームとして生まれ変わることに成功した。スターズ社長ジム・ライツと、ボールドウイン氏が古くからの知人であったことも、この提携実現を後押しした模様。本拠地は、現在建設中のウエルズファーゴアリーナ。今季スターズは、トップファームとしてAHLハミルトンとAHLヒューストンを併用している。

*ピオリア・リバーマン:昨季小原大輔選手(現コクド)が所属したことでも知られるECHLチームだが、来季から同ミズーリ州に位置するNHLセントルイスのトップファームとしてAHLに加入する。今季までブルースのファームはAHLウスター(米マサチューセッツ州)であったが、このフランチャイズ営業権をリバーマンが買い取り、チームをピオリアに移転させた形で、実質的ECHLからAHLへの昇格を成功させた。リバーマンは、廃止となった3AリーグIHLにも加盟経験があり、過去にブルースのトップファームとしての経験を5シーズン有する。

*トロント・マーリーズ:来季からNHLトロントのトップファームに。カナダ・ニューファンドランド州セントジョンズから移転し、それに合わせてチーム名称も改めた。
改名のためにメイプルリーフスは、2004年10月にファン投票によるコンテストを実施。6000件の応募の中、このマーリーズという名前はトップ3に入る人気名称だった。
この「マーリーズ」という名称は、1904年にイングランドのマールボロ公爵にちなんで名付けられたのを、1927年当時のリーフスオーナーだったコン・スマイスが買い取り、リーフスのファームチームとしたという歴史あり。しかしこの先代マーリーズは、80年代に人気が下火となったため、1989年にリーフスが手放し、チームはその後ハミルトンに移転。さらに91−92年にはゲルフ・ストーム(現在OHL加盟)へと名前を変え、現在に至っている。本拠地はトロント市内のリコーコロシアム。

*オマハ・ナイツ:来季からカルガリーのトップファームに。以前カルガリーのファームであったニューブランズウイック州セントジョンのフランチャイズ(2003年4月営業停止)を、米ネブラスカ州オマハに移転させ、フレームスにとって待望の単独トップファームが復活した。ここ2シーズン、フレームスは、米マサチューセッツ州ローウェル・ロックモンスターズ(AHL)を、カロライナと共有していた。
オマハのシビックオーディトリアムは改装済でダウンタウンに位置。オマハには過去30年間プロホッケーチームが存在していなかったが、1930年代後半から存在していたマイナーリーグチームが、このオマハ・ナイツだった。このチームのオーナーグループである「Ak-Sar-Ben財団(注:Ak-Sar-Benとは、Nebraskaを逆に綴ったものだそう)」が、新チームに対し、フレームスと共同出資する。
前身チームは、1970年代初頭には、カルガリー・フレームスの前身チームであるNHLアトランタ・フレームスのファームチームだったことも。またゴーディ・ハウ、スコッティ・ボウマンが所属したことでも知られる。
新チーム立ち上げにより、チーム名は改称される可能性あり。

・・・というわけで、どこも「より近く」の傾向を重んじているわけです。特にファームチームがNHLチームと同都市に位置するのは、これでフィラデルフィア、エドモントンについで3つめ。もちろん近いに越したことはないのですが、NHLが存在する都市にAHLチームを設けて、果たしてちゃんと観客は確保できるのか? という運営的問題も、忘れてはなりません。

実際、2003−04年にAHLトロント・ロードランナーズ(エドモントンのトップファーム、今季からエドモントンに移転)が、リコーコロシアムを本拠地とした際には、ファームにしては割高感があったチケット価格も災いし、トロントのホッケーファンがそっぽを向いて、チーム経営が悪化したという事情がありました。その結果、ロードランナーズは、今季1軍と同じエドモントンへの移転を強いられたわけです。
ただしマーリーズは、あくまでメイプルリーフスのファームチーム。として地元トロントのファンを惹き付けるだけの魅力は十分あるとチーム関係者は睨んでいるようで、シーズンチケットは発売初日で1300席を受け付けたとの話も報道されています。

と、決定している話はここまでですが、さらに現AHL加盟チーム間での、NHL提携チーム・シャッフル大会が実施されようとしています。

まずは、今季を以てAHLハーシーとの提携を終了したNHLコロラド。AHLハーシー(東海岸のペンシルバニア州に位置しています)の立地条件の悪さもあってか、今季アバランチからハーシーに送られていた選手数は12名以下で、現在に至ってはたった4名という少なさだとか。アバランチは、今後は同地区のCHLチーム(コロラド・イーグルズ:デンバー近郊ラブランドに位置)との提携が噂されています。

さらにコロラドが見捨てたAHLハーシーを、NHLワシントンが来季トップファームチームとするのでは、との憶測もあります。ハーシーは戦前よりマイナーリーグのホームチームとして長年栄えて来た、いわばマイナーチーム中の古豪であります。しかしキャピタルズには、向こう1年AHLポートランド(米・メイン州。ハーシーよりはワシントンから遠いです)との契約が残っている模様。通常契約下のファームとの契約破棄となれば高い違約金が必要となるのだそうですが、来季はアナハイムがこのポートランドとの契約を結ぶのではとの噂もあるそうで(現在アナハイムはAHLシンシナティ・マイティダックスがトップファームです)。

この慌ただしいAHLを含めたマイナーリーグ再編成。毎年恒例行事ではありますが、今季は特に新加入チームの存在もあって、例年以上にややこしくなりそうです。


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by hockeyworldjapan | 2005-03-30 11:40 | NHL overall


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