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そろそろ白い煙希望!

ちょっと話題は古いですが、皆様。「コンクラーベ」の結末をご覧になりました?

意外に日本でも、各マスコミが大きな取り上げ方をしてましたっけね。その弊害か「コンクラーベって根比べね」っつー、「コーディネートはこーでねーと」みたいな忌み嫌われる駄洒落まで発生。ローマ法王の力って、こんなに大きかったのね〜と実感したのでした。

新法王選出決定後に例の白い煙が立ち上り、システィーナ礼拝堂の鐘が一斉に鳴り渡った時の、バチカン市国の人々の嬉しそうな顔また顔ったら。私、別にカトリック教徒でも、信心深い仏教徒でもありませんが、ついその出来事に胸を熱くした次第であります。

さあ、NHLもこれにあやかって、白い煙を上げるのじゃあぁああ! と、ひとり気勢をアップしてはみたものの、事態はまだ妥結には至っておらず。でもちょっとだけ、進捗があったので、いろいろとお伝えすることにします。(超長文になりますんで、どうぞ覚悟して読んでください)

4月19日、4月4日以来のNHLとNHLPAとの会合がNYで実施されました。ここでは6時間の会談が持たれたのですが、大きな進展はありませんでした。情報筋によると、ジェレミー・ジェイコブズ(ボストンオーナー)が「NHLPAのコンセプトはNHL側の求めるリンクシステムではない」と発言したのがきっかけとなり、両陣営が激しい論争を繰り広げたのだとか。その論争に、大切な6時間半のミーティングタイムの大半が費やされてしまったらしい。う〜ん、もったいない。(4月4日の会合内容はこちらをご覧下さい

しかしその翌日の4月20日には、また新たな展開がありました。NHLはNYにて代表者会議を実施。4時間に渡るミーティングでは、新労使協定が合意に至らない限り、2005−06年シーズンは開幕しない。つまり代理選手導入は当面棚上げと、決定されたのです。

そして会議終了後、各チーム幹部からはポジティブなコメントが漏れていました。ダラス社長ジム・ライツは「会議の雰囲気は、選手たちと合意に至るために近づいているという感じだった」と楽観論トーク。またカロライナGMジム・ラザフォードに至っては「PAの現在の提案なら、あとは数字の上でさえ合意できればうまくいく」とまで語っていました。ま、実際はその数字の詰めが難しいところなんですけどねえ。

で、NHLが代理選手導入に尻込みした理由なのですが、まずは多くのチームからの反対があったことが一番だった模様。代理選手導入については、実は3月28日にテキサス州にて、数チームの幹部たちが議論する場が持たれていたそうです。この会合を呼びかけたのはダラス・スターズで、スターズはウエスタンカンファレンス7チーム(サンノゼ、コロンバス、セントルイス、ロサンゼルス、シカゴ、ミネソタ、ダラス。代理選手導入反対姿勢を先に表明していたグレ様率いるフェニックスは、この中には入ってませんでした。招かれなかったのか、はたまた招待されたが出席しなかったのか?)の幹部をテキサスに招き、代理選手導入をブッシュしたのだとか。TSNボブ・マッケンジーさん情報だと、サンノゼ、ダラス、ロサンゼルスの幹部が代理選手導入を支持しており、さらにエドモントンのオーナーも「必要ならば」と代理選手導入を認める構えだったようです。そうした活動はあったにせよ、大半のチームは代理選手を導入しても、十分な観客動員やスポンサーは得られないと考えていましたから、依然として導入反対意見が主流だったのです。またいったん代理選手導入となると状況が法廷に持ち込まれる可能性も出て、問題解決にはさらに長期間を要することになってしまう。そんな背景も、反対派に加担したようです。

いずれにしても、2005−06年シーズンを無事開幕するには、労使交渉妥結しかないというのが、オーナー側の意向として明確化したわけで、今後は両陣営の密な対話が必要となってきます。NHLは今後少なくとも週2回の労使交渉会議を持つ意向を示しているそう。ただ9月までに決着が付かない場合、またベットマンコミッショナーは代理選手の話を持ち出す用意もあるんだとか。ベットマンコミッショナーは以前に「2005−06年シーズンは、代理選手を導入してでも、開幕させる」と啖呵切っちゃったわけですしねえ。引っ込み付かないってこともあるでしょう。

とゆーことで、代理選手導入の件では、いちおう「NO」ってことで統一見解を打ち出したオーナー陣&NHLではありますが、PA側とやり合う前にまずはオーナー同士で話をつける必要がある。それが兼ねてから話題になってます、収入分配策であります。NHLのCBA案には、この収入分配案が依然として明確に提示されておらず、それがメディアからの標的にもなっているのです(そのあたりの事情については、こちらをご覧いただければ幸いです)。

で、NHLは収入分配案として何をしたいのか? それはズバリ、収入の多いいわば「金持ちチーム」からより多くの収入分配のためのプール金出資を要求し、収入の少ないチーム(よく槍玉に挙がってるのがカロライナとかですね)に分配する・・・という策であります。

そのあたりの根回しとして、ベットマンコミッショナーは4月15日、トロント・メイプルリーフスに対し、収入分配案について妥協するように申し入れたという報道がありました。リーフスは、フィラデルフィア、コロラド、デトロイトなどと並び、NHLでは収入や利益が最も多いチームと報じられています。

そもそもこの会談は、リーフスが代理選手に対して反対の立場を表明していたことへの調整という目的もあったそうです。収入分配策については、まずはメディアの影響力が強い地区でもあるトロントを口説いておけば、その後他チームも同様なスタンスに流れるのでは? という裏事情があるようです。しかしその会議の内容については誰もが口をつぐんでおり秘密裏に事が運ばれてる。その議論の経過が気になりますねえ。

リーフスと言うと、最近何かといろんな矛先が向けられており、チーム幹部は様々な意味で穏やかではないと思います。3月1日のNHL会合では、リーフスのチーム会長ラリー・タネンボム氏が。他のオーナーから非難を浴びたとの報道もありました。タネンボム氏は、「早急に選手との合意を」という内容の事前準備した声明をこの会議で他のオーナー参加者の前で読み上げたそうです。それだけを聞くと、「別にそれのどこが悪いの?」と思うのですが、「そりゃ、試合開催すればするだけ儲かるリーフスは、早く妥結したいだろうよ」という考えと、「みんなPAより先にギブアップするまいと頑張ってるのに、お前らは団結を破るつもりか?」という他オーナーたちの不満が高まり、その不満は巨大な非難の嵐と化してタネンボム氏を襲撃したのだそうです。驚くべきことは、その非難の声の中には、小市場オーナーたちはもちろん、他の大市場オーナーたちも混じっていたというんです。

その裏側では、大市場の他チームが表向きにはベットマン支持を唱える中、リーフスだけは以前からNHLの決定に対して批判的態度を匂わせていたという部分がありました。現にタネンボム氏は、シーズンが正式に全面中止となる前に、マリオ・ルミュー、タイ・ドミ、NHLビル・デイリー、NHLPA会長リンデンらと密かに会談を企画し、選手とオーナー間の橋渡しを試みたのだとか。そのあたりの行為がスタンドプレー(もちろんリーフス首脳はこれをスタンドプレーではなく、イニシアティブと考えてるはず)とみなされ、同胞オーナー連中から批判の的となったという事情もあるようです。

リーフスって、実際どれほど儲かってるんでしょうかね? 毎年フォーブス誌レポートでは「利益を出しているチーム」としてトップグループに名を連ねており、試合を開催すれば必ず儲かるという仕組みを持っているチームという書かれ方を、カナダのメディアからもされてます。

ただしそうした諸報道については、リーフス社長リチャード・ペリー氏は否定しています。その理由として、エアカナダセンター(公共建造物でなくリーフスの資産です)建設費として3億6000万ドルをリーフスは自己負担しており、これに年間2700万ドル+利子(7.59%)、さらには固定資産税760万ドルを支払っているんだとか。これに対して、アメリカのアリーナは公共建造物であるケースが多く、固定資産税やアリーナ建設費負担がない場合が多いのです。仮にチーム所有のアリーナだった場合においても、カナダのホッケーチームに課せられる税金は一般的に高率と言われています。ただ逆に言えば、チーム所有のアリーナであれば、広告・売店・駐車場などの収入は丸儲けですし、アリーナ賃貸料も支払う必要がありません。そのあたりは、しっかり収入にカウントされていながらも、税金や返済分についてはカウントしてないじゃないか、というのが、ペリー氏の言い分ではないかと思います。

さらにリーフスには、筆頭株主が個人や1企業ではなく、教師組合という特異性もあったりする。ビリオネアオーナーの匙加減ひとつで決められないという事情もあるでしょうし、その気持ちは分からんでもないですが・・・あ、カナダドルvs米ドル為替レートはもはや言い訳にはならんでしょうね。かつてはカナダドル安という理由のもとに、カナダのチームが弱者として扱われる時代がしばらく続き、NHLは一定数のシーズンチケット販売数を満たしたカナダ小市場チームには、リーグから補助金を出す制度を実施しておりましたが、このところの米ドル安傾向で状況は変化したのです。

それに、たとえリーフスにNHLの盟主的チームという自負があったとしても(実際カナダ国内のリーフス人気は依然絶大ではありますし)、オーナー会議、特にCBA問題においてはあくまで30チームのうちのひとつに過ぎない。そのあたりの限界は、リーフス幹部の発言などを注目していると、彼らも十分承知している模様。オーナー間の投票となった場合でも、持てる影響力は30分の1しかないのです。さらに追い打ちをかけるように、今回のCBA交渉には、ミネソタ、ナッシュビル、カロライナ、カルガリーといった小市場チームのオーナーたちが、NHLの諮問機関的に動いているという背景がある。94−95年には、デトロイト、レンジャーズといったリッチなオーナーたちが実権を握っていたことを考えると、今回はまるで立場が逆転しているのです。

ちなみにフィラデルフィア地元紙のインタビューでは、フライヤーズのエド・スナイダーオーナーは、他の金持ちチームが合意すれば、リーグの方針には従うつもり、とコメントしているそうです。

ちなみにレンジャーズをこの「金持ちチーム」に今回含めなかったのは私の意図的な狙いがあります。

NHLレンジャーズと、NBAニックス、マジソンスクエアガーデンを抱える親会社ケーブルビジョン。MSG会長ジェイムズ・ドラン氏がこれまでチームオーナーとして活躍してきたのですが、両チームの不振に、傘下に収めるケーブルTV局MSGネットワーク、フォックスNYが、ヤンキーズ、メッツの放映権を失い、苦境に立たされているんだそう・・・てな事情を、NYポストが報じていました。おまけに、レンジャーズ(チーム年俸7600万ドル)、ニックス(1億300万ドル)は、いずれも高年俸ながら不振を続けている。さらにいまだ社内で影響力の強い父との確執も噂されるというドラン氏は、いつ社内クーデターに遭ってもおかしくない状況らしく、現在会社幹部のメンバーも激しく入れ替わっているんだとか。レンジャーズがチーム幹部として、グレツキーにラブコールするんでは? などという噂もあったのも、そのあたりのお家騒動が起因していると思われます。

ひとことで、「金持ちチーム」と片付けがちですが、それぞれいろんな悩みがあるようで。それだけに、足並みを揃えることが難しいってことも十分解ってるつもりです。ま、いざとなったら「コンクラーベ」の当初の精神に則り、NHLオーナー陣をしょぼいホテル(○リオットとか、○エスティンとかはこの際無用です)に缶詰にして、パンと水だけ与えての「根比べ」をさせる・・・というパターンもあるはずです。

バチカン市民のような笑顔が、NHLファンに戻ってくるのを、心待ちにしている私なのでありました。

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by hockeyworldjapan | 2005-04-23 13:49 | CBA


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