何度もこの手の報道には惑わされた私ではありますが、今度こそはどうも本当らしいと感じております。
ただね、傍から見て「合意間近」に思えても、実際そこからの詰めに時間がかかりそうな気がするんですよね。 って、もちろん話題は、NHL労使交渉です。 なにがどうなってるんだ? という方のために、最近の経緯をざっとご説明しましょう。 NHLとNHLPAは、先週4日連続会合(計26時間)を実施しました。 その最中に、カナダ全国紙「グローブ&メイル」が「NHLとNHLPAは、サラリーキャップの基本概念に合意(2005−06年の上限3400〜3600万ドル、下限は2200〜2400万ドル。各チームの収入に応じて上限値、下限値ともに約200万ドルの差異を設ける)」と報じたのです。この記事によると、このサラリーキャップ枠内の2900万ドルをチーム年俸が超えた時点で、100%の贅沢税が課せられるのだとか。つまり、以前から議論されてきた「サラリーキャップ&贅沢税のハイブリッド型」労使協定というひな型に、両陣営が合意したという報道です。 ただし、その翌日、トロントサン紙が「チーム毎のサラリーキャップ額について、双方はいまだ合意に至っていない」と反駁。さあて、いったいどっちの報道が正しいんでしょうか? トロントサン紙のインタビューに対してあるGMは「贅沢税など組み込んでいない」とコメントしており、この2つの報道にはかなりの乖離が見られます。 ここで考えられるのは、両陣営がこのチーム年俸上限&下限の数字を受け入れるための詳細な条件について、揉めてるということじゃないでしょうか? この条件を受け入れるのなら、選手側は2004−05年の個々の選手の契約内容を、来季(2005−06年)に繰り越すことを要求。逆にオーナー側としては、成立しなかった今季分の契約はチャラにしたいというスタンスがあります。 というのも、大市場チーム(例えばトロント:24%ペイカットを考慮しても、19人の選手と4660万ドルで契約中)においては、どう考えても現存勢力のスター選手をキープするには、3600万ドルの枠内には収まらない。しかもこの3600万ドルという数字、ボーナスや福利厚生費など全てを含んだ額であり、そうした諸々の要素(約500万ドル)を差し引いた純粋年俸のみの数字にすると、3100万ドル程度になってしまうといいます。 そうなると、今度はその枠内に収まり切らない選手たちをどうするか? という問題が当然出てきます。考えとしては、チームが選手をバイアウト(前協定では残り契約の3分の2を支払えば、その選手をチームから見切ることができました)して、減額契約を組み直すか、若しくはその選手を放出する。そしてバイアウトにかかった費用は、サラリーキャップ枠から除外して計算できる・・・という新契約適用初年度での特例を認めようなんて話も出ているようです。 でも、実際まだその肝心のバイアウトのルールについても、まだ新協定が成立していないのだから、決まっていないのです。これだけ厳しい上限を設置するのであれば、大市場チームにとって金のかからないバイアウト方式は絶対必要なのです。でも切られる選手側としては、現行契約から大幅ペイカットされ、しかもチームにも残れないなんて事態にもなりかねない。つまり死活問題ですから、ある一線は死守しようとする。・・・というわけで、ここでまた議論は紛糾するんでないかと管理人は予想しています。 さらに、ルーキーサラリーキャップの分野においても、難しい議論になっているという報道もあります。 たとえば、イリヤ・コバルチャクの場合、彼のNHL最初の契約内容は、3年1400万ドルという破格。前労使協定では、ルーキーサラリーキャップは、年俸&契約料で130万ドルという上限が定められていたものの、出来高制ボーナスがキャップに含まれていないために、ルーキーたちの年俸は実質天井知らずだったのです。 しかし、新協定では、年俸は85万ドル、ボーナス含めて120万ドルを上限とする案をオーナー側は求めており、対してPA側は170万ドルの上限を求めているとのこと。 ただしここでオーナー側はひとつのジレンマに直面します。この上限が厳しすぎると、NHLを目指してこれまでヨーロッパからどんどん流入していた若手選手たちが、北米進出に二の足を踏むのではという考えもあるからです。ただでさえ、ロックアウトの影響で人気低下が叫ばれるNHLにおいては、タレント希薄化は重大な問題になりかねない。またロシアリーグなど、ヨーロッパの一部のチームが、金に糸目をつけずに積極的に選手獲得に励んでいる状況も、NHLにとっては脅威。その意味では、オーナー側の匙加減が難しいところといえるでしょう。 そのあたりの細部の問題が早くクリアになってくれれば、早々に新契約締結のうれしいニュースが聞けるかも知れません。 それにしても、先日ESPNに来季オプション行使権を放棄されたことが明るみになったNHL。ESPNは、今季ロックアウトでその価値が下がったとされるNHLに対し、契約額のカットを要求したそうですが、NHLはこれを頑として受け付けなかったそう。それでもホッケーを見たいアメリカのホッケーファンは、カナダの放送局&ローカル局の映像が見られるNHL「センターアイス」購入しとけってことでしょうか? ESPN脱落話は、NHLでは過去にもあった出来事。その時は猛然とアメリカのホッケーファンが蜂起したという記憶がありますが・・・今度ばかりはそんなムーブメントがあるのかどうか、不安を覚える私でもあります。
by hockeyworldjapan
| 2005-06-12 05:34
| CBA
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